ERP製品カタログ【第9回】NEC
SaaS提供で独走狙う「EXPLANNER」の一日の長とは
中堅・中小企業向けERPとしてオフコン時代を含めて長い歴史を持つ「EXPLANNER」に注目が集まっている。その理由はSaaS版への先進的な取り組みだ。EXPLANNERの強みを担当者に聞いた。
中堅・中小企業での導入のしやすさを追求した「EXPLANNER」
NECが中堅・中小企業向けに提供するERPパッケージ製品が「EXPLANNER」(エクスプランナー)だ。同製品の起源は、1970年代に同社がオフコン上の業務アプリケーションとして提供していた「APLIKA」(アプリカ)にまでさかのぼる。APLIKAは後にPC用の業務パッケージ製品、EXPLANNERへと進化し、さらに2006年からは現在のERPパッケージ製品の形で提供されるようになった。
EXPLANNERは、幾つかの異なるパッケージによって製品シリーズ全体を構成する。その中核を担うのが、会計・人事・給与といった各企業に共通の基幹業務をカバーする「EXPLANNER/Ai」だ。これに加えて、販売管理や生産管理といった、各企業や業種により形態が異なる業務に最適化したパッケージも個別に提供している。例えば、製造業向けの生産管理や販売管理の機能を提供する「EXPLANNER/J」や、流通業向けの在庫管理の機能を提供する「EXPLANNER/Lg」、あるいは建設業向けパッケージ「EXPLANNER/C」など、計8種類の製品パッケージをそろえる。
これまで主に製造業と流通業の中堅・中小企業を中心に数多くの導入実績を積み重ねてきた同製品だが、こうしたさまざまな業種別パッケージをそろえることにより、幅広い業種・業態に対応できるようになっている。また、導入対象企業の規模に関しても、幅広い範囲に対応している。NEC 製造・装置業ソリューション事業本部 EXPLANNER部 新ビジネスグループ マネジャーの及川典子氏は、次のように説明する。
「EXPLANNERを導入する企業の規模で最も多いのは、年商100億~500億円規模の中堅・中小企業。しかし実際には、下は50億円程度から上は1000億円まで、幅広い規模の企業への導入実績がある」
これだけ導入企業の規模に幅があると、おのずと同製品の導入コストにも幅が出てくるが、より多くの中堅・中小企業に手が届きやすいよう、価格面での配慮がなされているという。
「これはあくまでも大まかな目安だが、会計・人事・給与の共通業務部分を導入するだけであれば、最小構成時で1000万円程度の価格から提供している。この価格には、ソフトウェアのライセンス費はもちろんのこと、ハードウェアやSIのコストも含んでいる」
また、導入のしやすさという点でも、EXPLANNERにはさまざまな工夫が凝らされているという。例えば、中堅・中小企業の業務にフィットしやすい業務モデルをあらかじめ用意しているのも、その表れだ。大規模向けERP製品の中には、極力多くの業務パターンに対応できるよう、膨大な数のパラメータが用意されているものもある。しかし、それらを駆使してカスタマイズを施すには、多くの手間とコストを要する。大手企業ならいざ知らず、一般的な中堅・中小企業においてはこれでは導入のハードルが高くなり過ぎる。そこでEXPLANNERでは、多くの中堅・中小企業で必要になると考えられる機能をあらかじめコンパクトな形でモデル化し、極力手間とコストを省いて導入できるようにしている。
カスタマイズを容易にするフレームワーク
その一方で、カスタマイズの幅や柔軟性も確保している。特に、販売管理や生産管理といった業務は、会計・人事・給与などの共通業務とは異なり、他社との競争に勝ち抜くための独自ノウハウが強く反映される部分だ。従って、ERPパッケージを導入する際にも、ある程度のカスタマイズを施すことがほとんど。EXPLANNERでは開発作業を効率化できるよう、カスタマイズのベースとなる各種の業務テンプレートをあらかじめ用意している。また、独自の開発フレームワークを用意しているのも大きな特徴だ。このフレームワーク上で開発を行うことにより、カスタマイズ作業の効率化が可能になるほか、独自機能を一から開発できるようにもなっている。
また、この開発フレームワークに基づくアーキテクチャには、別の面でも大きなメリットがあると及川氏は言う。
「EXPLANNERの開発フレームワークは、パッケージのバージョンアップに際して、カスタマイズ部分も合わせてスムーズにバージョンアップすることを主な目的として利用されている。一般的に、ERPパッケージのカスタマイズは、バージョンアップ時に問題を引き起こすことが多い。しかしEXPLANNERでは、フレームワークに沿ってカスタマイズや機能追加を行っておくことで、そうした問題を未然に防ぐことができる」
SaaS型ERPを他社に先駆けて提供
EXPLANNERの大きな特徴の1つに、SaaS(Software as a Service)によるサービス提供を他社ベンダーに先駆けていち早く開始している点がある。2009年にサービス提供を発表し、翌2010年から会計・人事・給与の共通業務に生産管理と販売管理の機能も加えた「EXPLANNER for SaaS」の提供を開始した。既に十数社の企業がこのサービスを利用しているほか、稼働予定の案件も現在数多く控えているという。
SaaSの業務アプリケーションというと、中小企業にターゲットを絞ったサービスという印象が強いかもしれないが、EXPLANNER for SaaSの導入企業の中には大手グループ企業も含まれているという。
「グループ経営のガバナンス強化のために、企業グループ全体でERPシステムを統一しようとする動きが数多く出てきている。しかし、親会社で導入している大規模ERPパッケージをそのままグループ全社に展開するのは、コストが掛かり過ぎる。そこで、子会社のERPをEXPLANNER for SaaSで統一し、親会社のERPパッケージと連携させる構成を取るグループ企業が増えてきている」
ちなみに、EXPLANNER for SaaSの後を追うようにして、他ベンダーでもSaaS型ERPの提供を始めるところが出てきているが、及川氏はSaaSソリューションにおいてNECの一日の長を強調する。
「単に業務アプリケーションの機能を単体で提供するだけであれば、ASP(Application Service Provider)と何ら変わらない。NECではEXPLANNERのERP機能だけでなく、メールや帳票、その他の周辺ツール類も同じ基盤上で互いに連携させた形で提供している」
それが、同社が提供する「中堅・中小企業向けSaaS型ソリューション」だ。中堅・中小企業向けのアプリケーション、ミドルウェア、プラットフォーム、さらには運用サービスまでをも一手にSaaSとして提供するというものだ。また、このサービスの導入・運用に当たっては、全国のパートナー企業と連携して、きめ細かい支援サービスを顧客企業に提供するという。
パッケージ、SaaSの混在利用も可能
さらには、EXPLANNER for SaaSのグローバル対応も順次強化しているという。近年では製造業を中心に、中堅・中小規模でも海外に拠点を構える企業が増えてきている。その際、海外拠点で利用する業務アプリケーションは、導入コストや運用管理の手間を考えてSaaSを検討する企業が多いという。そうしたニーズに応えるために、EXPLANNER for SaaSでは生産管理機能をグローバル対応しており、既に多くの製造業の海外拠点で利用されている。これに加えて今後は、会計・人事・給与や販売管理の部分も、グローバル対応を強化していく予定だという。
また、パッケージ型とSaaS型の混在利用も、EXPLANNERならでは利用法だと及川氏は言う。
「例えば、共通業務の会計・人事・給与はSaaSでカバーし、その一方で販売管理はパッケージを購入した上でカスタマイズを施したとする。その上で、販売管理のパッケージをSaaSと同じNECのデータセンター上にホスティングして、SaaSの共通業務とパッケージの販売管理の機能を互いに連携させることができる。一般的なSaaSの場合、オンプレミスのシステムとの連携が難しいことが多いが、EXPLANNERであればこのような柔軟な構成を取ることができるし、実際にこうした運用の事例もある」
NEC自身のIFRS対応ノウハウを製品にも適宜反映
なおNECでは、EXPLANNERをIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)へ順次対応させていくことも正式に発表している。IFRS対応には、日本会計基準をIFRSへと近づけていく「コンバージェンス」と、IFRSに完全に受け入れる「アドプション」の2つの対応指針があるが、同社ではEXPLANNER/Aiを双方に対応できるよう、機能強化を進めている。
コンバージェンスに関しては、既にセグメント開示とXBRL化への対応を済ませ、過年度訴求修正など他の項目についても随時対応を行っていくという。また、企業のIFRS対応において最も手間が掛かるといわれている固定資産管理に関しては、2010年10月に新たに「EXPLANNER/Fa」という固定資産管理パッケージ製品を、製品ラインアップに加えることで対応を強化している。また、アドプションへの対応に関しても、日本会計基準とIFRS、それぞれの基準に基づく総勘定元帳を個別に管理できる「多重帳簿管理」の機能を既にEXPLANNER/Aiに実装している。
EXPLANNERはこれまで説明してきたように、中堅・中小規模の企業における利用を前提に最適化された製品である。そのためIFRSへの対応に際しても、IFRSでの連結決算開示を求められるグループ親会社向けというよりは、むしろ親会社に決算報告を上げるグループ子会社で必要となる機能の強化にフォーカスしている。ただし、ディーバの「DivaSystem」やビジネストラストの「連結大王」など、サードパーティー製の連結会計ソフトウェアとの連携インタフェースを備えており、これらとの連携ソリューションにより連結決算開示にも対応可能となっている。
また、EXPLANNERのIFRS対応における最大の強みの1つは、開発元のNEC自身が日本有数のグループ企業であり、従って自らIFRS対応に積極的に取り組んでいる点にあると及川氏は説明する。
「NEC社内にはIFRS対応のためのプロジェクトチームが設けられているが、そこでは自社のIFRS対応と、顧客に提供するIFRSソリューションの双方を一緒に検討している。従って、自社のIFRS対応のために検討した内容や収集した情報を、そのまま顧客にフィードバックできる。これは中小のパッケージベンダーにはない、大手メーカーならではの強みだ」
また、これらのノウハウや情報は、社外セミナーを通じて広く一般ユーザーにも公開している。同社では今後も、IFRSに関する最新の情報を随時セミナーを通じて発信していくという。
「IFRSの動向を時系列で追いながら、継続的に最新情報を発信していくことはユーザーのメリットになるし、長い目で見ればNECのビジネスにも貢献すると考えている。現時点ではまだ、大手企業がやっと具体的な対応作業に乗り出してきた段階だが、EXPLANNERが対象とする中堅企業に関しては、2012年からいよいよ本格的なIFRS対応がスタートすると考えている」
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