Google Appsの企業利用を考える【第6回】
作り込んだ既存ワークフローの移行を支援するGoogle Apps拡張製品
Google Appsには単体機能としてワークフローは実装されていない。しかし、特に国内では作り込んだワークフローをグループウェア上で構築している企業は多いだろう。代表的なワークフロー拡張製品を紹介する。
ワークフロー拡張製品が求められる背景
前回「クラウド移行の不安を解決するGoogle Apps拡張セキュリティ製品」で紹介したセキュリティ製品と並び、Google Appsの拡張製品として日本企業で需要が多いのが、ワークフロー製品だ。
「Google Appsにはワークフローが無い」と認識されることが多い。確かにメールやカレンダーのような独立したメニューとしては、Google Appsの中にワークフローは存在しない。しかし、第1回「Google Apps for Businessのコストと機能、そして気になるセキュリティ」で紹介したGoogle Apps Scriptを駆使することで、同等の機能は実現できるとGoogleは提案している。
動画で紹介されているようなサンプルであれば、確かにワークフローを作成することは可能だ。恐らくこれがグローバルスタンダードなワークフローの考え方なのだと思うが、日本では十分ではないと考える企業が多いだろう。稟議や承認の流れをあらかじめ複雑に決めている日本企業は多く、申請内容によってその流れが分岐したり、1つ前の人に確認のために差し戻したりする場合もある。また、人事異動によって役職が増減したり、組織が組み替えられたりと変更も多い。一方で、稟議とは異なる回覧や意見集約のような「書類を回す」ワークフローは、既定の経路というよりは案件によって回覧する人を入れ替えたり、部署全員回覧のように複数人で同時に回覧するような使い方も行われている。こういったきめ細かい所作をGoogle Apps Scriptで実装するのは、なかなか骨の折れる作業だろう。
せっかく Googleドキュメントで共同編集可能な文書を気軽に作成できても、ワークフローで必要な人たちにピンポイントに届けて確認・追記してもらう仕組みを用意できなければ、せっかくの協働作業環境を生かしづらいというのが実情ではないだろうか。Google Appsの導入に当たって、このような悩みに直面している方々に代表的なワークフロー拡張製品を紹介する。
作り込んだNotesの置き換えに焦点を当てた「Gluegent Apps ワークフロー」
日本企業ではまだまだ多くの「IBM Lotus Notes/Domino」が稼働している。その中で、サポート切れの旧バージョンを使い続けているユーザーが多いという事実は、多くのユーザー・ITベンダーが耳にしたことがあるだろう。実際筆者のところにも同様の相談はよく寄せられる。こうしたNotes遺産を持つ企業は、古いNotesを塩漬けにして使うか、大手システムインテグレーターやITコンサルティング会社が提供する高価な移行ソリューションを利用するくらいしか遺産を生かす手段がなかった。
こうした企業にフォーカスし、スムーズなGoogle Appsへの移行を支援するワークフロー製品がサイオステクノロジーの「Gluegent Apps ワークフロー」だ。Gluegent Apps ワークフローは、一般的なワークフローというよりもBPM(Business Process Management)の領域に近い多機能を盛り込むが、コーディングを伴うような複雑な設定やプラットフォーム化は指向せず、あくまでマウス操作で設定できるような分かりやすさを目指している。稟議書の申請、承認、差し戻し、却下など、進行状況は画面上で一覧できる。
申請フォームレイアウトを自在に作成できる「Cloudstep Workflow」
システナの「Cloudstep Workflow」は、メールソフトに近い操作性を実現したGoogle Apps連携ワークフローだ。申請フォームレイアウトを自由に作成できるだけでなく、複数のテンプレートが用意されているため、ワークフローシステムを利用したことのない企業でも素早く導入できることが特徴だ。Amazon EC2上で稼働し、Google Appsでログインすると認証なしでそのままワークフローを利用できる。承認者が未承認の場合に処理を促すメールがGmailに自動的に送信される機能が搭載されている。さらに携帯電話やスマートフォンでの承認・却下処理が可能なため、外出先からでもフローを進めることができる。
iPadにも対応する「rakumoワークフロー」
日本技芸の「rakumoワークフロー」は、紙文書やメールで稟議や回覧を行っている企業や、国産のオンプレミス型ワークフロー製品を利用している企業がGoogle Appsへ移行することに焦点を当てた製品だ。あえて機能を絞り込んだマニュアル不要の使いやすさを前面に出しているが、条件による経路分岐や申請書内での四則演算などの機能は削ぎ落とさず、Google App EngineのHRD(High Replication Datastore)オプションに対応して実装している。また、iPadからの申請の利便性を上げるためにGoogleドキュメントとの連携を強めている。例えば、iPad 2で撮影した領収書の写真をツールでGoogleドキュメントにアップロードし、rakumoワークフローで領収書の写真を添付ファイルにして経費申請を行うといった使い方が可能だ。
ワークフロー拡張製品はどのような基準で選ぶべきか
Google Appsのワークフロー拡張製品はこれら3製品だけでなく、今後も新しい製品が出てくるだろう。しかし、ワークフローの進化の方向性としては、複雑な業務フローやある意味芸術的な申請フォーマットをITに写し取るための機能進化ではなく、よりソーシャルに機能する形になっていくべきだと筆者は考えている。本稿執筆に当たって話を聞いたサイオステクノロジーでも、「2012年以降、企業SNSが爆発的に普及するのではないか」と推察している。
複雑でIT化が困難なワークフローが、果たしてビジネスに大きなベネフィットをもたらすだろうか。Googleの主張が全て正しいとは言わないが、日本企業が好むような複雑で高機能なワークフローは、Googleが考えるグローバルスタンダードとしては捉えられていないのが現状だ。従ってGoogle Appsのユーザー企業におけるワークフローは、定型化できるフローはシンプルなワークフロー、非定型なコミュニケーションに近いフローはGoogle+のようなコラボレーションツールを利用するといったように、用途によって使うツールが分かれていくと筆者は考えている。
サイオステクノロジーがNotesからGoogle Appsへの移行を請け負った企業の事例では、Notes上に実装されているフローの約60%が不要なフローだという。これはNotesに限った話ではない。ワークフローのシステム化を考える際には必要以上に多くのフローや申請を盛り込まないよう、必要なフローや申請書を見極めた上で、製品選定を行っていただきたい。
飛鋪武史(ひしきたけし)
日本技芸 取締役 ビジネスサービス事業部長
青山学院大学理工学部卒業後、富士総合研究所(現みずほ情報総研)、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、ガートナージャパンを経て、日本技芸に入社。製造業、通信業、金融業、官公庁などさまざまな業界で多数のITグランドデザイン、ITコスト削減、プロジェクトマネジメント、情報分析・可視化・指標化などのコンサルティングを手掛けるとともに、ワークプレースやコラボレーションに関する数々の調査プロジェクトの経験を持つ。それまでの経験を生かし、人がITを使いこなし、真の生産性向上を図るためのインタラクティブデザインにフォーカスした「rakumo」シリーズの事業責任者を務める。
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Google Appsの企業利用を考える
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