13万5000ドルを8年間不正受給する事件も
ジョブズ氏も関与? データ管理の不備が招いた2011年の5大事件
13万5000ドルの公金を不正に受給、犯歴なしの人物を重罪犯と誤認――。2011年に発生したこうした事件の元凶は「データ管理の不備」だ。
2011年に世界で起きたデータ管理関連の事件の中で最も注目を集めた幾つかを、米TechTargetがリポートにまとめた。身元照会の間違い、行政機関から扶助金をせしめた裕福な夫婦、さらには米Appleの故スティーブ・ジョブズ氏が関わった出来事などがある。専門家によると、どの事件も一般に認められているデータ管理のベストプラクティスに従うことで防げたという。
TechTargetが選ぶ、2011年に発生したデータ管理関連の事件トップ5を順不同で紹介する。
事件1:裕福な夫妻に社会保証金を支給
米ワシントン州シアトルのとある夫婦は、目の前に海が広がる120万ドルの豪邸で暮らし、この8年間、モスクワやドミニカ共和国、メキシコ、フランス、イスラエル、トルコと、異国情緒あふれる旅を楽しんできた。
このデビッド・シルバースタインとリュドミラ・シモノヴァ夫妻は現在、米連邦検事局によって詐欺罪で訴追されている。旅行ざんまいだった期間に、連邦住宅局の支援プログラムや障害者扶助プログラムから13万5000ドルを不正に受給していたのだ。
連邦検事局によると、カイロプラクターとして成功を収めていたシルバースタイン夫妻は、妻のシモノヴァ氏が自分と子ども2人の3人暮らしで、シルバースタイン氏は彼女が暮らす家の大家であると申請し、8年以上にわたって政府から住居支援給付金として毎月1727ドルを受け取っていたという。また、シモノヴァ氏は貧困家庭一時扶助(Temporary Assistance for Needy Families)プログラムの扶助金も受給していた。政府は現在、不正受給した公金の返済と数万ドルに上る罰金の支払いを求めている。
データ管理の専門家は、顧客の名前や住所などの属性データに重複がないかどうかを調べることで異常を発見できる簡単な重複排除ソフトウェアや照合ソフトウェアを使っていれば、もっと早い段階でこの不正受給は発見できていた可能性があると指摘する。
マスターデータ管理(MDM)やデータ統合、データ品質ソフトウェアを提供する米DataFluxのトニー・フィッシャー社長は、「これは国民感情を逆なでする類いの事件だ」と話す。「顧客データが重複して存在するケースは多く、それらのデータを統合しないと顧客の実像を把握することはできない」
事件2:身元照会で犯歴なしの人物が重罪犯に
2011年12月、米ボストン在住のある女性は身元照会の誤りによって、のどから手が出るほど望んでいた仕事に就くことができなかった。この女性は薬剤師の仕事の内定を受けていたが、身元調査の結果、身に覚えのない14件の犯歴が見つかったのだ。
専門家によると、不適切なデータ管理手法が原因で、身元調査会社が同姓同名で18歳年下の元犯罪者とこの女性が同一人物だと判断したのだという。この事件は現在も調査中だ。
この件も、氏名や住所だけでなく、年齢、性別、出生地などの属性もチェックする重複排除ソフトウェアを使用していれば防ぐことができたケースだとフィッシャー氏は話す。
「一部の属性が一致する2組の記録があったということだ。この件は、2つの事物が同一かどうかを判断する場合に、基本的な属性以外の情報も確認すべきである理由を示す好例だ」(フィッシャー氏)
事件3:入力ミスで94億ドルが水増しされたインドの輸出額
2011年、経済関係者はインドの輸出額が7カ月間で150億ドルに急増したことを知り、非常に驚いた。だが幾つかの調査を経て、インド政府はデータ入力ミスで輸出額が94億ドル近く過剰に報告されていたことを認めた。
フィッシャー氏は、「データ入力の間違いは珍しいことではないが、あらゆる問題や懸念につながる可能性がることをこの件はよく示している。データ入力ミスを防ぐには、慎重にデータを入力するように指導するだけでなく、参照データ管理を導入すると有効だ」と語る。
「参照データ管理の基本は、特定のエンティティに対する有効な値を定義することだ。この定義は一元的に管理し、全ての定義を会社のポリシー策定委員会のような組織が規定する。この定義を使って入力時にデータを検証する仕組みだ」とフィッシャー氏は説明する。
事件4:高過ぎる固定資産税を通知
米マサチューセッツ州ブロックトンの住人約2万人は、2011年の末に送られてきた第3四半期の固定資産税の納税通知書を見て顔色を変えた。実際の10倍の所有面積を基に納税額が決定されていたのだ。同市の話では、納税通知書の作成を委託していた米Kelly & Ryan Associatesが不手際を起こし、小数点の位置を間違えた結果だという。同市ではこの事件の前にも、高過ぎる水道料金をめぐる2年間にわたるトラブルがあった。当時は水道料金が10万ドルに達することもあり、憤慨した住民が抗議活動を展開した。
事件5:プライバシーについての懸念が渦巻く中、Appleが認めた「過ち」
2011年、iPhoneやiPadにおけるユーザーの位置情報の扱いについて懸念が渦巻く中で、今は亡き米Appleのスティーブ・ジョブズCEO(当時)はデータ管理上の幾つかの“ミス”を認めた。
2011年4月初めに2人の研究者が、過去12カ月間にユーザーが訪れた場所の情報を記録した、暗号化されていないファイルがAppleの端末に存在することを突き止めた。この発見を発端に、同社がユーザーの行動を追跡しているのではないかという懸念が広がり、幾つかの調査が実施されることになった。
同社はユーザーの行動を追跡しているという疑惑を否定。プログラミングの誤りと判断の間違い(ファイルが暗号化されず、ユーザーが位置情報サービスを無効にしている場合でもデータが収集されるなど)がこの問題を引き起こしたと説明した。最終的に同社は、この問題を修正するパッチを提供している。
米調査会社Enterprise Strategy Groupの上級主席アナリストであるジョン・オルトシク氏は、ユーザーのデータは慎重に収集する必要があることを示す教訓として、この話を胸に刻むべきだと話す。
「データを収集する場合は、収集するデータの内容と使用目的について、説明し過ぎて問題になるぐらいの気持ちで臨むべきだ。黙ってデータを収集すれば、ユーザーの怒りを買うことになる」とオルトシク氏は忠告する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー