MDMの不手際が及ぼす被害
現代のデータ管理に求められる水準とは
古き良き時代ならデータ管理に無頓着でいられた。しかし技術が進歩し競争が激化する市場にあって、顧客の期待は制御不能になっている。
わたしはマスターデータ管理(MDM)の不手際による被害者だ。
例えば、われわれにビジネスインテリジェンス(BI)ソフトを提供している企業が、最近もっと大きなソフト企業に買収された。この大手企業(仮にXYZ社と呼んでおく)は何年も前からわれわれに売り込みをかけては失敗していた。買収から数日たって、XYZの営業からの電話攻勢が始まった。アポイントを取り付けて電話会議やインターネット会議を開き、XYZが買収したソフトでいかに素晴らしいことができるかをわたしに説明しようというのだ。なぜか、わたしが既に顧客だということをXYZは知らなかった。既にそのソフトを持っている相手にそれを売りつけようとしてXYZが時間を浪費しているだけでも十分問題だ。その企業のデータ管理のまずさのためにわたしに影響が及んだとなれば、一層悪い。
もう1つ例を挙げると、わたしは仕事で月に何度か各地の拠点へ出張しなければならない。結果として、幾つかの航空会社とホテルチェーンの得意客になっている。以前はあるレンタカー会社の得意客でもあったが、この企業がわたしのデータを管理できていなかったため使うのをやめた。
この企業はインターネットで受け付けた予約情報とコールセンターで受け付けた予約情報を別々に管理しているらしかった。わたしは人との接触をできるだけ避けるため、予約はインターネットでしている。一度ならず、飛行機が遅れたのでレンタカーを確保しておいてもらおうとコールセンターに電話したことがあった。悲しいことに、コールセンターからはわたしの予約情報にアクセスできず、レンタカーの確認はできなかった。毎回車は確保できたものの(期待していたクライスラー300MIではなく12人乗りのワゴン車をあてがわれたことも一度あったが)、わたしはもっと上を期待していた。代わりの企業はいくらでもあるので、現在はどのように予約しようと同じように扱ってくれる企業で車を借りている。
古き良き時代ならデータ管理に無頓着でいられた。しかし技術が進歩し競争が激化する市場にあって、顧客の期待は制御不能になっている。数年前であれば、インターネットはまだ新しいからレンタカー会社がデータを統合できていなくても仕方ないと思えただろう。しかしもっと高い水準を設定する企業もある中で、わたしの期待度も変わった。求める水準が高いほど、わたしの寛容度は低くなる。MDMに期待される水準をよそが定めてしまった場合、それに後れを取るわけにはいかないのだ。
自分たちにできることは幾つかある。
第1に、誰かがマスターデータを持っていなければならない。この持ち主は、質の高いデータ管理に心を砕く必要がある。優れた顧客データ管理を求めるなら、顧客のことを熟慮できる人物がデータの品質管理に当たるべきだ。企業の成功がベンダーや従業員情報の管理に懸かっている場合も同じことが言える。一般的に、IT系ではなく業務系の人物がこの持ち主になってくれる方がわたしは好きだ。顧客サービスや営業、マーケティング畑の人材の方が、データベース管理者よりもはるかに顧客データの品質に情熱を傾けられるはずだ。
第2に、MDMは経営上の決定の中で検討する必要がある。企業を買収する場合は、共通するデータの設計、統合、クレンジング、利用方法を買収計画の中で定めなければならない。コールセンターや電子商取引アプリケーションの次の段階を考えるとき、プラットフォームとチャネル全体に行き渡っているデータをどう標準化して統合するかを考える必要がある。
MDMの質の向上は、「やるに越したことはない」から「やらなくてはいけない」事項に変わったのだ。
本稿筆者のニール・ニコライゼン氏は米HeadwatersのCIO兼副社長。
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