クラッシュしやすいのはIntel? AMD?
Microsoft調査資料に見る、CPUオーバークロックのクラッシュ率
i486あたりからホビーとして定着してきたCPUのオーバークロック。この影響を徹底調査した米Microsoftの資料が話題になっている。CPUベンダーAとベンダーBでは、クラッシュ率に大きな差があるという。
ホビイストと呼ばれる自作PCユーザーたちは、長年、PC全体にダメージを与えることなくプロセッサを定格以上のCPUサイクルで動かし、可能な限り高い処理能力を実現してきた。米AMDなどは、オーバークロックの腕前を競う大会を開催しており、2009年の大会ではあるチームが7GHzを記録している。
米Intelもこの流れに同調して、動作クロックの制限を外し、オーバークロッカーが限界に挑戦できるプロセッサ(型番に「K」が付く製品)をリリースしている。例えば、Core i7-2600Kはデフォルトでは3.4GHzだが、適切に調整すれば容易に4GHz以上になる。
訳注:CPUの動作クロックは、ベースクロックとそのベースクロックに対する倍率で決まる。2.93GHz駆動のCPUであれば、ベースクロックが133MHz、倍率は22倍ということになる。そして、現在のCPUの多くには「倍率の上限」が設定されている。ここで取り上げる「Kモデル」は、倍率を変更できるCPUである(参考:ミスター“K”はオーバークロッカー!──「Core i7-875K」「Core i5-655K」でインテルの遊び心を知る)。
さて、米Microsoftはそんな並み居るオーバークロッカーの士気をくじく存在になるのだろうか? 2011年4月に発行され、最近になって注目を集めているMicrosoftの資料によると、Windowsはオーバークロックを設定した自作PCには向いていないようだ。
このMicrosoftの資料では、TACT(累積CPU時間、またはアップタイムとも)が長くなればなるほど、CPUの障害による最初のクラッシュを起こしやすくなることが報告されている。また、一度クラッシュすると、CPUの障害のためにクラッシュする確率が高くなるという。
例えば、PCを5日間連続で実行した場合、クラッシュする確率は330台に1台だが、連続稼働時間が30日間になると190台に1台の割合でクラッシュする。また、一度クラッシュすると、再びそのPCがクラッシュする確率は100倍になる。
ホワイトボックスPC(ショップブランドPC)や自作PCを使っている場合、この確率はさらに高くなる。Microsoftの調査では、メーカーPCの場合、30日間の連続使用後にクラッシュする確率は120台に1台だが、ホワイトボックスPCの場合は93台に1台だった。
当然予想できることだが、CPUをオーバークロックした場合もクラッシュする確率が劇的に高くなる。これは、オーバークロッカーにとっては仕方がないことで、オーバークロックに伴うリスクとして受け入れている。米Microsoft ResearchはIntelとAMDの両方のチップをテストしているが、メーカー名ではなく「ベンダーA」と「ベンダーB」と表記し、どの結果がどちらに対するものかを明示していない
メーカー名を明示しないというMicrosoftの判断は恐らく妥当だ。そうでなければ、ベンダーBはこの結果を使って競合相手を吊し上げていたかもしれない。
オーバークロックありで5日間の連続使用後にチップに障害が発生する確率は、ベンダーAのチップではオーバークロックなしの場合の19倍になるが、ベンダーBは4.5倍だ。オーバークロックなしで5日間使用した場合、CPU関連の障害が発生する確率はベンダーAが21台に1台であるのに対し、ベンダーBは86台に1台だった。
従ってベンダーAは、オーバークロックなしでもベンダーBに比べて4倍障害発生率が高い。オーバークロックありの場合のクラッシュ発生率はほぼ互角で、ベンダーAは400台に1台の割合、ベンダーBは390台に1台だった。
この調査報告書では細かいところまで検討されているが、老舗のシステムビルダーなら知っている幾つかのポイントが抜けている。まず、自作ユーザーは、全てのパーツに互換性があるわけではないことを知っている。どのマザーボードメーカーも、マザーボードごとに承認したメモリの一覧を公開しているのはそのためだ。米Dellや台湾Acerなどシステムビルダーはこの問題に対応しており、相性が最も良いパーツを把握している。
この資料で触れられていない問題は他にもある。例えば、CPUの熱をCPUの冷却装置に伝えるサーマルグリスは、いずれは乾燥してセメントのように固くなり、使用できなくなる。オーバークロックをしている場合、この傾向は特に強い。また、システムのファンや通気孔に埃がたまっていないかどうかを確認する必要もある。Microsoftのこの調査では、システムの保守については考慮されていない。
オーバークロッカー向けの情報を提供しているWebサイト「Tom's Hardware」のワールドワイドの編集長を務めるクリス・アンジェリーニ氏は、Microsoftの調査結果に驚いてはいない。同氏は「ベンダーが散々テストや検証を行った上で決めた既定値を超える設定にすれば、ハードウェアの故障率が高くなることは当然予想される」と話す。
ただし、「もちろん、指摘されている悪い影響をいくらか緩和することはできる。サーマルコンパウンド、ヒートシンク、ファンの性能がよくなれば、オーバークロックしたハードウェアの温度を適切なレベルまで下げることができ、全体的に安定性が向上する」(アンジェリーニ氏)ということだ。
なおアンジェリーニ氏自身は現在、メインのワークステーションはオーバークロックしていないという。少しばかり余分にゲームで盛り上がるよりも、日中の仕事の方が大切だからというのがその理由だ。「私は生真面目ではなく、作業をまめに保存するたちではないので、1回のクラッシュでも一大事になる」ということだ。
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