クラウドをめぐる提携の裏にあるもの
OracleとMicrosoftの歴史的提携は「晴れ時々曇り」
MicrosoftのクラウドプラットフォームであるWindows Azure上で、Oracle Databaseをサポートすると両社が発表。そうなるとSQL Azureはどうなるのか。SQL Azureの今後を懸念する声が多く挙がっている。
米Microsoftと米Oracleの業務提携のニュースに触れて、「この両社の提携は、Oracleがデータベース業界の覇者だった時代をもう一度、ということだろうな」と感想を漏らしたアナリストがいた。その一方で、SQL ServerパートナーとDBA(データベース管理者)の間では、「この動きは、既存のSQL Serverや、そのクラウドバージョンであるSQL Azureに対しても脅威にはならない」という声も複数聞かれる。
MicrosoftとOracleの両社は2013年6月24日(米国時間)に、MicrosoftのクラウドプラットフォームであるWindows Azure上でOracle Database、Java、WebLogicおよびLinuxをサポートすると発表した。もっともOracleのCEO、ラリー・エリソン氏は、この発表直前の2013年6月20日(米国時間)に、米国カリフォルニア州レッドウッドショアにあるOracleで開かれた第4四半期の決算報告の場で、近日中に提携を正式発表するとほのめかしていた。
米調査会社Constellation Researchの主任アナリスト兼副社長であるホルガー・ミュラー氏は、「Oracleはこの提携によって、Oracle Databaseの運用を望むユーザーに対して、サービスを提供する側としての基本的な立場を保つことができるだろう」と話す。「双方に得るものがある妙策だと思う」(同氏)。
さらにミュラー氏は、「この提携はWindows Azureの顧客にとっても、展開できる選択肢が増えることを意味する。OracleがMicrosoftのクラウドプラットフォーム上で動作するとなれば、SQL Azure上で動作するアプリケーションは同じ環境でどれほどのパフォーマンスが出せるのかが気になる」とも付け加えた。
提携の発表は、Microsoftのスティーヴ・バルマーCEOとOracleのマーク・ハード社長の連名の形で行われ、両社の顧客により多くの選択肢を提供するための施策であると説明した。
クラウド上で運用できるアプリケーションの選択肢が増えることは両社にとって利点がある、という見方に同意しているSQL Serverの専門家が2人いる。そのうちの1人はエルベ・ロゲロ氏だ。ロゲロ氏はクラウド専門のコンサルティング会社、米Blue Syntax Consultingの創業者であり、システムインテグレーターである米AAJ Technologiesではエンタープライズ向けクラウドのアーキテクトを務めている。同氏はこの提携によって、クラウド上でのシステム構築に必要な工数が軽減されると期待できるため「それこそが大事な点だ」と述べた。
「Windows Azureが選ばれることが増えるだろうし、クラウドの導入をより真剣に検討する企業も増えるだろう」と同氏は言う。
一方、米コンサルティング会社Denny Cherry and Associates Consultingのオーナー兼主任コンサルタントのデニー・チェリー氏は、「プラットフォームに大規模な投資を行うことなくクラウドに移行したいOracleユーザーにはうってつけの状況になった」と話す。
SQL Azureの行く手は曇り空?
それでは、SQL Azure(Windows Azure SQLデータベース)はどうなるのだろう。Microsoftのクラウドで利用できるデータベースに関しては、懸念を示す声やコメントはこれまでも多く挙がっていた。特に、SQL AzureにはSQL Serverの機能が全てそろっているわけではない。Oracle Databaseをクラウド上に展開できるようになると、SQL Azureはさらなる危機に直面するのだろうか。
前出Constellation Researchのミュラー氏は、Oracleの実装はSQL Azureにとっての危機であり、少なくともある程度の影響は避けられないと考えている。MicrosoftはSQL Serverの拡張性を現状以上に引き上げることに限界を感じたのではないかとミュラー氏は話す。一方、Microsoftの幹部が、今回のOracleとの提携は顧客に提供する選択肢を増やすことに重点を置いたと述べたことに対して、ミュラー氏は「Microsoftが拡張性、パフォーマンス、総所有コスト(TCO)の上昇などの課題に本気で取り組んだ結果だろう」と考えている。
しかし、Oracle DatabaseをSQL Azureと比較するのは、りんごとオレンジはどちらがよりおいしいかを考えるようなもので、それぞれの役割は異なっていて重なる部分はほとんどないとする向きもある。前出のチェリー氏は「Oracle Databaseは仮想マシン上に完全な形でインストールされる製品だが、SQL AzureはPaaS(Platform as a Service)だ」と話す。前出のロゲロ氏も「SQL Azureはあくまでクラウドデータベースであり、パッケージ製品に含まれる機能の一部が実装されていない分、保守時の困難も少ない」と、チェリー氏の見解を支持する。
「SQL ServerやOracle級のハイレベルなパフォーマンスは期待できないが、もともとそんなパフォーマンスを期待するべきサービスではない」とロゲロ氏は言う。「それでも私は、これもクラウド上に構築されるアプリケーションのまさに未来形だと思っている。自分の担当業務にサーバの管理は含まれないというような顧客には、SQL Azureが向いているのではないか」(同氏)
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