Open Compute Project 活動を拡大
Facebookと仲間たちが公開する次世代コンピューティングの“設計図”
米Facebookが主導するOpen Compute Projectが新たにネットワーク分野への取り組みを開始した。このスイッチプロジェクトの中身について、Facebookの技術者2人に聞いた。
米Facebookが主導する「Open Compute Project」(以下、OCP)の範囲が拡大し、ネットワークが取り組みの対象に加わった。2013年5月中旬に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で開催された初の会議「OCP Engineering Summit」で、オープンソースのトップオブラック(ToR)スイッチの仕様を策定する計画が始動した。
OCPは、Facebookが運用しているような大規模データセンター向けのオープンソースのサーバ、ストレージ、ラック、その他の周辺機器の設計仕様を提供している。現在、任意のスイッチOSを利用できるOCP仕様の任意のオープンソーススイッチを、このデータセンターで運用できるようにすることで、ネットワークのブラックボックスの世界を打ち破ろうとしている。
OCPのこのスイッチプロジェクトについて、Facebookでハードウェア設計およびサプライチェーンオペレーション担当の副社長を務めるフランク・フランコブスキー氏と、技術オペレーションディレクターのナジャム・アーマド氏に話を聞いた。アーマド氏はこのプロジェクトの技術責任者で、初のOCP Engineering Summitのスイッチプロジェクトに関するセッションを主宰した。
OCPのオープンソーススイッチのビジョンは、SDN(Software-Defined Networking)分野にも関連している。
――まず、OCPがオープンソーススイッチを設計する理由は何か?
フランク・フランコブスキー(以下、フランコブスキー氏) ハードウェア分野に対するオープンソースの原理を応用することによってクールな技術貢献や派生的成果が多く見られるようになった。われわれが構築を進めている大規模データセンターも、オープンソースのソフトウェアとハードウェアが大きな基盤となることが分かってきた。
しかし、いまだにわれわれは、非常にクローズドでプロプライエタリなスイッチドネットワークにより、これらの相互接続やインターネットへの接続を行っている。すなわち、新プロジェクトの狙いの1つは、オープンソースの原理をサーバやストレージの分野に適用して最初の数年間に両分野で見られたのと同じような、急速なスイッチ技術の進歩を実現することにある。
また、スイッチハードウェアとスイッチソフトウェアを独立して扱えるようにすることも、このプロジェクトの重要なポイントだ。これは、顧客がハードウェアの展開方法を柔軟に選べるようにすることを目的としている。
われわれの見解では、スイッチはサーバと同じように、OS非搭載でラックに組み込めるものでなければならない。プリブート環境を備え、任意のOSで起動できることが必要だ。さらに、その上で動くコードも変更できなければならない。
Facebookの技術オペレーションディレクターのナジャム・アーマドをはじめ、このプロジェクトに携わる多くの面々は、物理スイッチレイヤーで発生することを、極めて詳細にコントロール、洞察できるようにしようと意欲を燃やしている。現在、スイッチはブラックボックスアプライアンスとして販売されているため、エンドユーザーには、物理レイヤーで実際に何が起こっているかは分からない。
オープンソースの原理を適用し、顧客がハードウェアとその上で動くソフトウェアモジュールを完全にコントロールできるようにすることで、われわれは、「ネットワークの設計、構築、監視、最適化を厳密に管理できるようにする」という顧客への約束を実現できるだろう。
――ソフトウェアコミュニティーにどのような貢献を求めるか?
ナジャム・アーマド(以下、アーマド氏) われわれはまだ細部を詰めているところだ。ボストンで行われたOCP Engineering Summitでは、有益なワーキングセッションができた。これからプロジェクトチャーターを作成し、特に、プロジェクトの枠組みを明確にする。
最低でも、われわれは仕様パッケージの一部として、低レベルのドライバ/ブートローダ的なソフトウェア基盤を要件に盛り込む。スイッチが自力で起動し、基本的に、さまざまな場所にあるOSを探したり、URLやその種のものを発見したりできるようにするというアイデアだ。スイッチにOSを搭載するのではなく、スイッチが任意のOSで起動できるようにする。これは本質的に、ハードウェアとソフトウェアを分離するということだ。
そのためには、今述べた低レベルのソフトウェアが必要になる。比較のためにサーバやPCについて見ると、ハードウェアチェックを行うBIOSがある。さらに、BIOSがブートローダかOSを探し、それによって起動が行われる。プロジェクトはまだ初期段階だが、こうした仕組みを目指すことについてはコンセンサスが取れていると思う。ソフトウェアとしては、OpenDaylightやCumulusの製品、従来のOEMの製品、オープンソース製品が実行できるようになり、OpenStackタイプの環境も利用可能になるはずだ。
――手を組みたいODM(Original Design Manufacturer)やOEMは具体的にあるか?
フランコブスキー氏 従来のこうしたプロジェクトで一般的にみられるように、このスイッチプロジェクトは、サプライヤーや顧客の働き掛けに応えて、われわれのグループが関与に乗り出すことで発足した。しかも、今回のプロジェクトでは、米Cisco Systemsや米Broadcomなど、従来のサプライヤーの多くがわれわれに接触してきている。彼らは、ナジャムが2013年5月に開いた最初のミーティング(OCP Engineering Summit)にも出席している。
プロジェクトの進め方をめぐって誰もがこぞって提案し始めている。プロジェクトをどのように展開していくかは、コミュニティーの投票によって決まることになる。われわれは最終的に多くの素晴らしい技術貢献ができるだろうが、投票は一貫してサプライヤー本位ではなく、消費者本位で行うものだと私は考えている。
われわれが、このプロジェクトで目覚ましい成果を上げることができるだろうと楽観しているのはそのためだ。われわれは、OCPで顧客本位を徹底させることに注力してきた。ベンダー主導のコンソーシアムの多くは、取り組みが停滞しがちだ。各コンソーシアムはそれぞれプロジェクトに商業的な利害があり、消費者の利益のためではなく、特定企業が有利になるように投票する傾向があるからだ。
アーマド氏 既にベンダーから幾つか提案を受けている。
――それらの提案は公開されているか?
アーマド氏 そのうちWebサイトに掲載されるだろう。
――ブラックボックスシステムを提供しているCiscoのようなOEMから、提案を受けているかどうかが気になる。
アーマド氏 OEMはまだ様子見といったところだろう。公正を期すために言えば、われわれも具体的なチャーターを作成してこなかった。この取り組みで先陣を切ったベンダーは、疑問点があっても見切り発車で参加してくれた。われわれがチャーターを公開すれば、参加企業はもっと増えるはずだ。
――Ciscoは、IOSやNX-OSをそうしたオープンソーススイッチで動かせるようにすると思うか?
アーマド氏 われわれは、顧客がまさにそうした環境を選択できるようにしたいと考えている。われわれが目指しているのは、まずハードウェアとソフトウェアの分離であり、次に、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ方を選択できるようにすることだ。
この選択ができれば、快適に動くものを何でも使える。他のさまざまな要因に応じて、新たなOSやプロトコルセットを採用できることになる。SDN技術を利用したり、OpenFlowスイッチを作成したりといったことが可能になる。こうした選択を可能にすることこそ、われわれの目指す目標だ。
――Facebookのように大規模なデータセンターを運用している他の企業(米Googleや米Amazonなど)は、独自のスイッチを構築しているが、その設計は非公開にして専有している。Facebookはなぜ設計を公開するのか? どのような意図があるのか?
フランコブスキー氏 ソフトウェア分野では、オープンソースの原理やフレームワークをプロジェクトに導入すると、イノベーションのペースが大幅に加速することが歴史的に証明されている。これらの原理やフレームワークによって顧客がソフトウェアに適用できる機能と管理のおかげで、イノベーションが加速したわけだ。
われわれが一部の同業者のようにクローズドではなく、オープンであることを選択するのは、1つのものを提供すると10のものが返ってくると考えているからだ。その10のものが何かは前もって分からないが、われわれはこれまでのところ、見返りとして得ることができた派生的成果や貢献の一部に非常にうれしい驚きを感じている。
さらにFacebookは、コミュニティーで行われるイノベーションを利用できる。われわれが世界で最も優秀なエンジニアの一部を採用することに成功しても、そうした人材を独占することは不可能であるため、コミュニティーによるイノベーションを利用できることは重要だ。Google、Amazon、Cisco、米Intelなど、どの企業もそうした人材を独占することはできない。
アーマド氏 ネットワークに関しては、われわれはハードウェアとソフトウェアの分離を目指しており、これを業界に浸透させようとしている。スイッチの買い方について言えば、スイッチの詳細な仕様表を見ると、ハードウェア仕様ではポート、速度、フィードといった各種項目が網羅され、さらにソフトウェア機能も記載されている。ハードウェアとソフトウェアに関する自社固有のニーズに合ったスイッチを買うことはできない。
スイッチに搭載されている機能の必要性に注意することは、搭載されていない機能に注意することとほぼ同じくらい重要だ。現在販売されているOEMスイッチは、それぞれ固有の要件とワークロードを持つ多様な業種の企業を含む、かなり広範な市場向けに設計されているに違いない。
例えば、われわれの環境では、レイヤー2機能を全く利用しないが、市販のスイッチはレイヤー2機能をサポートしている。そのためにソフトウェアリソースが使用され、それらはバグなどの問題が混入する可能性を招いてしまう。
このため、われわれはスイッチを既存環境に合わせて柔軟にカスタマイズし、両者の最適な統合を実現したい。これは、多様な業種に対応した市販パッケージでは不可能だ。
OCPが策定するオープンソーススイッチの仕様により、ユーザーは自組織に関連する機能を選んでスイッチに組み込むという選択を行えるようになる。業界も発想を転換し、そうした使い方を想定したネットワーク機器を開発できるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー