何をクラウドに肩代わりさせるか?
企業がクラウドに移行した方がよい5つの業務
セキュリティやトータルコストの面では、いまだ多くの企業が懸念を持っているクラウドサービスだが、利便性や初期コストなどさまざまなメリットを考えれば、企業がクラウドサービスを利用しない手はない。
クラウドサービスを利用して、社内のサーバや配線をお払い箱にするというアイデアは、企業のIT部門にとってますます魅力的な選択肢となっている。クラウドサービスプロバイダー、例えば米Amazon Web Services(AWS)や米Rackspaceなどは、会社のデータ管理や通信の負担を軽減してくれる。しかも、大抵は安上がりに。
ただし、クラウドセキュリティや全体的なコストについては、いまだ多くの企業が懸念を持っている。コストは、時間当たりの利用料や従業員数など、さまざまな要素によって利用企業ごとに異なる。しかしそうは言っても、アプリケーションのクラウド移行は、もはや今後のあるべき姿なのである。
以下は、企業が簡単にクラウドへ移行できる5つのワークロードとアプリケーションだ。
1.電子メールサービス
どのような企業にとっても、通信は最も重要なコンポーネント1つである。そして、その管理には膨大な時間と費用が要求される。Gmailなどのクラウドベースの電子メールシステムを導入すれば、企業は保守作業の負担を軽減できる。
「社内で電子メールを管理する場合、サーバやプロセッサを購入し、専任のスタッフを雇うことになる」と語るのは、米調査会社Forrester Researchのインフラストラクチャ運用プロフェショナル担当主任アナリスト、デーブ・バートレッティ氏だ。「企業は自社で電子メールを管理したいとは思っていない。だから米Googleや米Microsoftにアウトソースする。誰かに肩代わりしてもらえばかなり楽になる」
会社の電子メールにリモートからアクセスできれば便利だ。従業員の生産性も上がるだろう。会社の電子メールに、バハマからでもニューヨークシティからでも、社内と同じようにアクセスできる。いつでも連絡を取れるようにしておくことは、これまではそう簡単ではなかった。クラウドがそれを可能にした」
ただし、懸念もある。電子メールが社外(オフプレミス)に置かれ、社員以外の誰かが管理しているという点だ。米調査会社451 Researchのインフラストラクチャサービス担当アナリスト、カール・ブルックス氏は語る。
「もし通信内容の機密性が高ければ、電子メールはリスクをもたらすことになる。誰かにその電子メールを読まれる可能性があるからだ」
2.データバックアップとディザスタリカバリ
従来はサーバがダウンする、あるいは停電するといった事態に直面すると、かなり高い確率でデータ損失が生じていた。データをオフプレミスのクラウドプロバイダーに移行することは、恐らく大切なデータを守る最良の方法かもしれない。離れた場所にデータを保管することは、ハリケーン・サンディのような自然災害への対策でも極めて有効だ。
「バックアップがしっかりしていれば、ディザスタリカバリ(DR)にも備えることができる」と語るのは、クラウド関連のコンサルタントを手掛ける米CloudeBrokerのクラウドアーキテクト、マーク・シジナカ氏だ。「データをIaaS(Infrastructure as a Service)にバックアップする企業は、DRにも同じプロバイダーを利用しようと考えているところが多い。プロバイダーも災害や障害が発生したときにアプリケーションを実行するサービスを用意している」
クラウドへのデータのバックアップには、他にも従来のオンプレミス方式より有利な点がある。
「旧来の方法はサーバの複製だった」とブルックス氏。「クラウド環境ではそれがもっと簡単にできる。伝統的な手法はあまりにもコストが掛かり過ぎていた」
クラウドを利用したデータバックアップには、それほど不利な点がない。だが企業は、「物理的な場所からバーチャルへ情報を移行しても問題がないか、しっかり理解しておかなければならない」とブルックス氏は警告する。
3.エンタープライズリソースプランニングシステム
ERPシステムには、一般に在庫管理、製品計画、受注追跡、顧客サービスなどが含まれる。これらをクラウドに移行することで、ITワーカーの生活はかなり楽になる。そう語るのは、米調査会社Beagle Research Group代表、デニス・ポンブリアント氏だ。
「クラウドサービスはデータをデータベースにアップロードし、企業に月々の使用料を課金する仕組みだ」とポンブリアント氏。
クラウドのERPはまた、企業のさまざまな部門の業務を統合することができる。
「例えば、在庫をチェックしたいと思ったとき、タブレットでもリモートでも、どこからでも在庫を検索できる」と、調査アドバイザリー会社、米ChainLink ResearchのCEO、アン・グラッキン氏は語る。「小売業でこれ以上紙ベースの受注業務を続けたくないなら、顧客や商売相手とのコミュニケーションを全てクラウドに投げ込むのも1つの方法だ」
一方で同氏は「クラウドで他社とインスタンスを共有することは難しい」とも述べる。特定のクラウドサービスの需要が高まれば、クラウドが混雑する可能性もある。
「地球上の遠く離れた2つの場所でデータ処理を行うことは難しい」とグラッキン氏。「サイトのパフォーマンスはどう改善できるか? 帯域幅、Wi-Fi、インターネットのスピードがパフォーマンスに影響する」
また、セキュリティリスクについても無視することはできない、と同氏は指摘する。
4.顧客関係管理
「CRMは非常に複雑なアプリケーションであり、実行するにもコストが掛かる。そのため、この大変な仕事を誰かが肩代わりしてくれるなら大いに時間の節約になるだろう」と451 Researchのブルックス氏。
米Salesforce.comのように、このアプリケーションをクラウドに置くメリットは大きい。
「なぜなら、全国をまたにかけて顧客と交渉する営業スタッフたちが、どこにいても必要なときにサービスを受けられるようになるからだ」とChainLink Researchのグラッキン氏はいう。フィードバックを得たり、情報を共有したりするために顧客とコミュニケーションを図ることは重要だ。クラウドはそれを容易にしてくれる。
CRMをクラウドに置く場合の最大の問題はセキュリティである。
「セキュリティは1つの課題だ。第三者に全ての情報を見られてしまう危険性がある」とグラッキン氏。
企業の中には、クラウドとオンプレミスの両方に情報を置いているところもある。しかしその場合、「情報が分散し、収拾がつかなくなることもある」と同氏はいう。
5.チームコラボレーションサービス
チームコラボレーションサービスをクラウドに置けば、従業員はどこにいても会社の情報にアクセスすることが可能になる。
「従業員は世界中のさまざまな場所からオンラインで集合できる」とグラッキン氏。「モバイルでもデスクトップでも、誰もがドキュメントと情報を共有できる。全てのものをチーム内に取り込める」
「オンプレミスのシステム多くは、旧式で時代遅れのものだ」とBeagle Researchのポンブリアント氏。「そうしたシステムは特定の目的のために構築されており、今日われわれが使っているような最新のコントロールや機能が組み込まれていない」
ただし、CRMと同様、企業が情報の流れに関するコントロールを手放してしまうため、セキュリティが課題となる。悪意の他者に会社のデータが盗まれてしまう危険性がある、とグラッキン氏は話す。
企業はまた、サービス品質保証契約(SLA)の内容を十分確認する必要がある。それによって会社の義務やプロバイダーから受けるサービスの品質、そのコストなどを知ることができる。過剰な課金や低品質のサービスを避けるためにも、この点は重要だ。
「クラウドに移行することで、会社はサービスを実行する能力を失う」とForrester Researchのバートレッティ氏。「もし何かがダウンしたとき、誰かがそれを復旧させるまで会社は待たなければならない」
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