アプリケーション仮想化事例
メタルワン鋼管、VMware Horizon Mirageフル活用で“一粒で三度美味しい”を実現
メタルワン鋼管は「VMware Horizon Mirage」導入によって、Windows XPからWindows 7への移行でネックになっていた基幹アプリケーションの仮想化(OS非依存)を実現。合わせて、ユーザーデータ移行とクライアントバックアップも達成した。
鉄鋼総合商社大手メタルワン(三菱商事と双日各鉄鋼部門の合弁会社)のグループ会社であるメタルワン鋼管は、社員数約350人、売上高約600億円という事業規模で鋼管製品を専門に取り扱う。同社では2010年以前から、クライアントPCのOSをWindows XPからWindows 7に移行させることが大きな課題となっていた。
加藤純一氏
メタルワン鋼管 経営管理本部 システム部 システム課長の加藤純一氏はこう話す。「PC自体はいつでも入れ替え可能だったが、ネックになっていたのは、自社開発した基幹アプリケーションがWindows XP対応クライアントアプリケーションということ。Windows 7上では全く動かない。(Windows 7上の仮想環境でWindows XP対応ソフトを動作させる)XPモードで稼働させてみたが、性能的に話にならなかった」
そこで2012年、基幹アプリケーションの開発ベンダーを交えて対策を検討した。基幹アプリケーションの作り直しも考えたが、コストと時間がかかり過ぎる。結局、サーバベースのアプリケーション仮想化ソフトを導入し、クライアントアプリケーションをサーバOS上で集中実行、画面情報のみPCに配信する方法を選んだ。2013年導入に向けて予算も計上した。
“腹案”ThinAppで移行コストを抑える
吉崎 純氏
ただ、サーバベースのアプリケーション仮想化ソフト導入は比較的低コストといっても、「最低限のサイジングでも、サーバ増加によるデータセンターコストなどの運用費を含めると、5年間で億を超えるコストが掛かる見通しだった」(メタルワン鋼管 経営管理本部 システム部 システム課 課長代理 吉崎 純氏)という。そのため、「これが使えたらコストを思い切り抑えられる」という別の“腹案”があった。それは、ヴイエムウェアのアプリケーション仮想化ソフト「VMware ThinApp」である。
ThinAppでアプリケーションを仮想化すると、そのアプリケーションの動作に必要なホストOSのレジストリ情報やシステムファイルもまとめてパッケージングされ、別のホストOS上でも実行可能になる。ThinAppパッケージは、1つの実行ファイルとしてPCに配布し、直接実行できるため、サーバ環境が不要で低コストなのも特徴だ。
試しにクライアントアプリケーションをThinAppで仮想化したところ、Windows 7上で今まで通り動作した。だが、開発ベンダーからは「何かあった場合に対応できない」とサポートを拒否される。ThinAppを取り扱う別のベンダーを探したが、どこも「Internet Explorer」などでの適用実績はあるが、カスタムアプリケーションは未経験。ところが、双日システムズがThinAppソリューションに取り組んでいることが分かり、Webサイト経由で問い合わせをした。こうして両社は2012年末から検証に入った。
最適化チューニングで従来性能を確保
ThinApp検証で発見された問題は、仮想化したクライアントアプリケーションはWindows 7上で今まで通り動作するが、データセンターから離れた拠点では応答が遅くなることだった。現地調査したところ、350Mバイトを超えるThinAppパッケージをネットワークドライブに置き、リモート実行していることが原因だった(図1)。
クライアント/サーバ型の基幹アプリケーションはサーバプログラムを更新する度、クライアント側も更新する。それまで各クライアントで更新プログラムを自動ダウンロードして適用していたが、ThinAppではパッケージへの変更点が全てサンドボックスに格納される。吉崎氏は「ThinAppでも更新は反映されていたが、アプリケーション本体と更新プログラムを分けることに不安があった。そのためパッケージを丸ごと更新するようにして共有のネットワークドライブに配置する構成にしていた」と話す。
この問題に対して双日システムズからは、アプリケーション本体とその実行環境「.NET Framework 1.1」を分け、Windows 7上で動作しない.NET側のみ仮想化する構成が提案された。これでThinAppパッケージのサイズを小さくできる上、アプリケーション本体と.NET側の両方をローカルドライブに配置できる。提案を試してみると、実際、どの拠点でも今までと同じ性能が確保されたようになった。また、今まで通り各クライアントでアプリケーション本体を自動更新できるため、運用手順を変える必要もなくなったのだ。Windows 7移行のネックになっていた問題をようやく解決できたわけだ。
加藤氏は「それまで本当にThinAppが使えるか半信半疑だったが、使えるめどが立った。双日システムズの技術力にも信頼が置けた」と打ち明ける。ThinAppは、「Microsoft Excel」など幾つかの標準的なオフィス系アプリを除けば、対象アプリとの相性があり、個別チューニングが必要だ。ベンダーの技術力がモノを言う。
Windows 7移行でも使えるHorizon Mirage
2013年5月、メタルワン鋼管がThinAppを発注しようとしたところ、ヴイエムウェアの製品再編によりThinAppは、デスクトップ仮想化関連製品群「VMware Horizon Suite」にバンドルされるようになっていた。ただこれは、Windows 7への移行を控える同社にとって“渡りに船”になった。
加藤氏がこう説明する。「基幹アプリケーションの問題とは別に、新たに調達する350台ものWindows 7(プリインストール)マシンへの移行方法も検討していた。特に個別のユーザーデータをどうするか。それがThinAppをバンドルする「VMware Horizon Mirage」がユーザーデータ移行にも使えることが分かり、Horizon Mirage導入を決定した」
Horizon Mirageは、PCのシステムイメージを丸ごと遠隔のサーバへバックアップするツール。フルバックアップした後も差分データを転送・取得し続ける。最大の特徴は、イメージデータを論理レイヤーに分けられることだ。組織全体で共通するOS・アプリケーションの「ベース層」、グループ別アプリケーションの「アプリ層」、そしてユーザー個別の「ユーザー層」。そのため、システム全体だけでなく、ベース/アプリ/ユーザー層に分けて“復旧”できる。この仕組みは移行にも使える。ユーザー層の移行では、マイクロソフトのユーザー状態移行ツール(USMT)と機能連携する。
メタルワン鋼管は2013年夏、Horizon MirageによるWindows 7移行プロセスを検証し、確立した。それは、まずWindows XPマシン上で稼働する現行システムのバックアップを取得。そして新しいWindows 7マシンに対し、展開ツールを使って新しいベース/アプリ層となるマスターイメージをコピー、そこへ既存のユーザー層イメージを追加する流れだ(図2)。
吉崎氏はこう話す。「ユーザーデータの移行後、オフラインにするとエクスプローラーが立ち上がらないなど細かな問題は幾つか出たが、双日システムズとその戦略的パートナーであるソフトバンクBB、ヴイエムウェア本社のエンジニアが協力して対処してくれた。懸念していたOutlook 2003からOutlook 2010へバージョンアップする際のデータ移行も、USMTの機能によって、ほぼ問題なく移行されることが確認できた」。今後、約30の拠点ごと移行作業を進める計画だ。
2Uサーバ1台で集中バックアップ
メタルワン鋼管は、Horizon MirageをWindows 7移行に使うだけでなく、本来のクライアント向けバックアップツールとしても使っていく構えだ。これまで同社では、クライアントに対する集中バックアップは特に行っておらず、ディスク障害が発生すると手作業でデータ復旧してきた。「新しいマシンはディスクがSSD。従来通りデータ復旧できるか分からず、何らかのバックアップ手法が必要だった」(吉崎氏)という。
検証を基にHorizon Mirageのサーバ環境をサイジングしたところ、重複排除機能によってベース/アプリ層はほとんど同一で済むため、350のクライアントに対し、2Uサーバ1台に4Tバイト内蔵SATAドライブが11台で実効容量18Tバイトという構成でまかなえる見通しだ(外付けドライブ対応も確認済み)。さらに、通常運用の差分バックアップには、1ユーザー当たり平均15kbpsという要求帯域(※1)なので従来のWAN環境がそのまま使える点も魅力だった。
※1 ユーザー当たり1日50Mバイトのデータ更新程度を前提にしている。実際にはユーザーのクライアント利用環境に依存する。
つまり、メタルワン鋼管にとってHorizon Mirageは、アプリケーション仮想化(ThinApp)、ユーザーデータ移行、バックアップと“一粒で三度美味しい”製品だった。当初の計画では、サーバ集中実行のアプリケーション仮想化だけで3倍のコストが掛かる予定だったので、大幅なコストダウンに成功したといえる。
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