社外での“炎上”抑制にも効果
社内SNSを使い始めた企業で何が起きているか
ある調査で「企業内SNSを導入済み」という回答が全体の80%を占めた。だが、多くの管理者が企業内SNSの不適切な使用を懸念している。専門家によると、企業内SNSには従業員の問題行動を抑制する効果があるという。
2013年10月に開催された「2013 HR Technology Conference」では、「HR's Role in Social and Collaboration(ソーシャルとコラボレーションで人事部が果たす役割)」と題したセッションにリーサ・ローアン氏が登壇し、「企業向けソーシャル技術はこの先、企業に深く根付き、こうした議論自体が奇妙に思えるようになるだろう」と予想した。
「数年もすれば、『われわれは一体、何を議論していたのだろう』と言っているだろう。ソーシャル技術は企業内にすっかり定着しているはずだ」。米調査会社IDCで人事(HR)および人材管理サービス担当調査副社長を務めるローアン氏は、そう語る。
だが現時点では、まだこうした企業は少数派であり、人事責任者の多くはソーシャル技術の特性を理解しようと情報収集している段階だ。例えば、ソーシャルコラボレーションプラットフォームは誰が所有すべきか? また、コラボレーションの場はどう規制すべきか? ローアン氏は調査データを引用しながら、こうした問題を始めとする幾つかの疑問に答え、さらにソーシャルメディアポリシーの策定に関する留意点を説明した。
現状ではサイロ化されたソーシャルシステムの個別運用が大勢
ローアン氏はまず、企業向けソーシャルシステムの3段階からなる成熟度モデルを提示した。「何だか恐ろしい」(第1段階)、「それなりに使い道はある」(第2段階)、「既に活用している」(第3段階)の3つだ。聴衆に尋ねたところでは、第2段階にいるとの回答が大半を占め、第1段階や第3段階にいるとの回答はわずかだった。
では、第2段階にいる企業はソーシャル技術をどの分野に活用しているのだろうか。ローアン氏によると、現在ソーシャル技術は「人材採用」の分野で最も活用されており、「業績管理」と「ラーニング」がそれに続くという。IDCの調査では「企業内SNSを導入している」との回答が全体の80%を占めたが、その多くは部門ごとに導入されているもので、「複数のSNSが導入されている」との回答が30%に上った。「均質化されないまま増殖している状態だ」とローアン氏は語る。
「複数のコラボレーションシステムを単一のプラットフォームに統合することが、ソーシャルシステムを慣行化する上で主要な要素となった」。聴衆の1人は、自社の成熟度レベルを第3段階と評し、そう語った。「第3段階に到達すれば、ソーシャルに対応していることが新たな規範となり、“ソーシャル”という言葉は前面から姿を消す」とローアン氏は指摘する。
ただし、いざ企業が単一のプラットフォームを採用するとなると、次は所有の問題が発生する。IDCが人事部の幹部を対象に2013年に実施した調査では、「人事部は、企業内SNSを単独で管理するよりも、リーダーとしてであれ、補佐的な立場であれ、業務責任者と共同で管理を行う場合が多い」ことが明らかとなった。ただし、これは人事部が少しでもかかわっていればの話だ。ローアン氏によれば、実際のところ、人事部の約40%は全社的なコラボレーションにはほとんど関与していないという。
回答者の約半数は、「今後1年~1年半以内に企業内SNSの管轄部門を変えるつもりはない」と答えている。だが、残り半数は「人事部の関与が増える」あるいは「人事部が主要な役割を担うことになる」と答えている。これはローアン氏にとっては朗報だ。
「個人的な意見だが、人事部は社内のコラボレーションシステムに関して、単独所有者ではなく主要所有者になるべきだと私は考えている」と同氏は語る。
幹部の支持を得ることが重要
ローアン氏は、企業内SNSの取り組みに対して幹部の賛同を得ることの重要性を繰り返し強調する。「人々はリーダーに付いていくものだ。上級幹部が先頭に立って先導している様子が見て取れないと、承認された取り組みとは思えない」と同氏は語る。
さらにIDCの調査からは、人事部幹部の間で企業内SNSに対する関心が高まりつつあることも読み取れる。「アナリティクス」「モバイル」「クラウド」と比べると、「ソーシャル」の重要度は最も低い評価だが、ソーシャルに対する関心は2012年よりも2013年の調査で高まっている。一方、アナリティクスに対する関心度は2012年と2013年どちらの調査でもトップだったが、数値は横ばいとなっている(関連記事:「第3のプラットフォーム」時代を生き抜くためのスキルとは?)。
ローアン氏は、多くの人事責任者にとって最大の懸念である管理の問題にも触れた。
「企業内SNSのポリシーを定める必要があるかと質問されることがあるが、私は必要だとは思わない。恐らく企業は既に何かしらのソーシャルメディアポリシーを策定しているはずだ。それと同じでいい。幾つか文言を追加する必要はあるかもしれないが、それだけで十分だ」とローアン氏は語る。
人事部の幹部は、企業内SNSの不適切な使用についても懸念している。だがユーザーや専門家によれば、この点は過度に懸念されている場合が少なくないという。ローアン氏は、米Home Depotにおけるソーシャルコラボレーションプラットフォームの導入事例を挙げ、次のように説明する。「システムを利用しはじめてある程度の時間がたつと、ポリシーは自ずと形成されていくようになった。問題行動は容認されない。心配は無用だ」
さらにローアン氏は、Home Depotが「不平を言うこと」を従業員に認めている点を評価する。そのおかげで、リアルなコラボレーションが可能となるだけでなく、従業員のエンゲージメントを低下させるような悪影響が及ぶ前に先手を打つことができるからだ。例えば、ローアン氏によれば、Home Depotは当初、「労働者の日」(9月の第1月曜日)以降はショートパンツでの勤務を禁じていたという。寒冷地域の従業員には理にかなったルールだが、温暖地域の従業員はこの規定に不満を抱き、コラボレーションプラットフォームを利用して不満を訴えた。それを受けて、経営陣はこの方針を変更したという。
ネガティブなフィードバックを認めることには、もう1つ重要なメリットがある。聴衆の中にいた、米SAP傘下のSuccessFactorsでHCMコンサルタントを務めるジャレット・パザハニック氏は、次のように発言している。「Glassdoor(米キャリア情報サイト)など外部のSNSでそうした不満をもらされるより、社内で不満を口にしてくれる方が、まだましだ。外部のSNSで発言されれば、会社の評判を損なうことになりかねない」
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