退職ラッシュで人材確保はタイムリミット寸前
ITよりも保守的? 若者の製造業離れが深刻に
「ジェネレーションギャップ」という言葉は服装や生活のスタイル、流行語など、世代ごとに大きな差異が見られる場合に用いられる。だが製造業にとって、この世代間格差ははるかに厳しい意味合いを持っている。
米ThomasNet.comが発表した報告書『2013 Industry Market Barometer(2013年産業市場のバロメータ)』によれば、製造業には若い世代からの求職が少ないため、定年退職者の穴を埋めるのに間に合わず、製造に携わる人材が不足しているという。向こう数十年にわたって製造業界に影響を及ぼしかねない状況だ。
ThomasNetの顧客であり、今回のIndustry Market Barometer(以下、IMB)調査に参加した米American Crane and Equipment Corporationも、こうした問題を抱える会社の1つだ。
「必要な人材を見つけることはできている。だが、応募者の数が減りつつあり、新入社員の再教育にこれまでよりも多くの時間とコストを費やさなければならないのは確かだ」。American CraneのマーケティングおよびIT担当副社長を務めるカレン・ノーハイム氏は、そう語る。American Craneは全米に3つの工場を有し、クレーンやホイスト(巻揚げ機)など各種の資材運搬機の他、原子力応用分野の部品製造などを手掛けている。
ベテラン社員の退職ラッシュが変えた企業の意識
ノーハイム氏によれば、American Craneは特に設計職を希望する人材の確保に苦労しているという。つまり、マシンを最初から最後まで設計する能力を備え、なおかつ、それに付随するエンジニアリングを理解している人材だ。「その域に達するには、教育と経験の両方が必要だ。ここ数年で、そうした人材は他の産業に移ってしまったようだ」と同氏は語る。
American Craneでは従業員の定年退職が続いており、同社は目下、そうした「優秀なブレーン」の跡を継ぐ若手社員を積極的に募集している。だが、ベテラン社員の退職のペースに間に合うよう若手求職者を確保するのは一苦労だという。「今は、とにかく遅れないよう、ランニングマシンの上を走り続けているような状況だ」とノーハイム氏は語る。
現状は「時間との戦い」
ThomasNetのIMB調査は、小規模から中規模の製造業の状況を知るために毎年実施されている。同社のメディアリレーション担当エグゼクティブディレクター、リンダ・リガーノ氏によれば、2013年の調査にはAmerican Craneをはじめ、1200社以上のメーカーが参加したという。ThomasNetは、ソーシングとサプライヤーのディスカバリープラットフォームを提供するWebベースの企業。このプラットフォームは、サプライヤーやディストリビューター、コンピュータ支援設計(CAD)モデルとメーカーの橋渡し役を務める。
製造業の「タイムリミット」。ThomasNetは製造業が直面している問題を、そう説明する。ベビーブーム世代の幹部や管理者の定年退職が近づく一方で、製造業はその穴を埋めるべきジェネレーションYまたはミレニアル世代の新入社員(20代から30代前半の若手社員)を十分に確保できずにいる。さらにThomasNetによれば、2025年にはミレニアル世代が労働力の75%を占めると予想されており、この見通しも問題をさらに切迫したものにしている。
若者の製造業離れの理由の1つに、「製造業はITに対して保守的であり、最新技術の採用が遅い」という固定観念がある。実際、調査では、「製造業に対しては依然として否定的な社会認識がある」と考える回答者が10社に7社の割合を占めた。ThomasNetによれば、これは製造業でのテクノロジーの役割がひどく誤認されていることの表れだという。
「世間一般の通念とは異なり、製造業は現実には統合と成長が期待される分野だ。実際、調査に参加した企業はまだ他の誰もやっていない方法でテクノロジーを活用し、製品やプロセスの変革を進めている」と、リガーノ氏は語る。調査結果によると、製造業が採用している新技術はCADアプリケーションから3Dプリンティング、ロボット工学、特殊なコーディングまで多岐にわたる。
多くのメーカーにとって、新技術は新たな成長機会へと続く道にもなっている。今回の調査では、「この1年で事業が成長した」と答えた企業が全体の半数以上を占め、「この先1年で成長する見通しだ」と答えた企業も全体の3分の2を占めた。また、10社に8社は「テクノロジーの力を借りて、この先1年で生産能力を強化する」と答えている。
製造業の求人で必要とされる変化
では、製造業はどのようにすれば、減少する若手求職者の数を増やせるのだろうか? リガーノ氏によれば、まずは「製造業の仕事とはどのようなものか」という一般認識を変えることだという。「今の製造や生産の仕事は、単にAからBへと物を動かすことではない」と同氏は語る。今日の製造業従事者は直接ソフトウェアとハードウェアを扱うだけでなく、最終製品を完成させるためにテクノロジーをいかに活用すべきかを理解している必要がある。「非常に熟練を要する仕事だ」と、リガーノ氏は語る。
さらにリガーノ氏によれば、「ジェネレーションYの求職者にアピールするには、業界が一丸となった取り組みも不可欠だ」という。製造業の最新の状況や製造業の重要性について、若手求職者の意識を高めるためには、より多くの取り組みが必要だ。「製造業はイメージチェンジを必要としている。メーカーは、製造業が技術革新の芽が育ちやすい分野であるという現実をしっかりアピールする必要がある。最先端のプロジェクトを手掛け、人材を募集している企業を具体的に紹介することも重要だ」と、リガーノ氏は語る。
そうしたメッセージを世の中に広く伝えるためには、メーカーは学校や人材紹介会社、同業他社と協力し、できる限り多くの若手求職者にリーチを広げることが必要となる。最近は実習制度やインターンシッププログラムへの関心も新たに高まりを見せている。高校生や大学生が、実際に現場で働き、研修を受けることで、スキルセットを構築し、卒業後の仕事を見つけやすくするという仕組みだ。またリガーノ氏によれば、現在、製造業ではエンジニアリングのノウハウを必要とする仕事が増えていることから、エンジニアリングの学生にもリーチを広げようという動きが見られるという。
ミレニアル世代に照準
メーカーにとって「タイムリミット」の問題は既に明白であり、American Craneなど一部の企業は、この問題を雇用戦略の要に据えている。
ノーハイム氏によると、American Craneはミレニアル世代の求職者の関心を引くために、技術職業訓練学校向けにインターンシップと新卒採用のプログラムを用意したという。American Craneは地元の大学である米ペンシルベニア州立大学グレートバレー校との取り組みに力を入れ、設計技師のための学科の新設と促進を支援している他、学生にインターンシップの機会を提供するために同校と直接提携関係も結んでいる。
さらにAmerican CraneはThomasNetのデジタルマーケティング機能を活用し、採用戦略にソーシャルメディアも取り入れている(関連記事:社内ソーシャルコラボに失敗した企業の4つの共通点)。ノーハイム氏によれば、モバイルコンピューティングを活用して若手求職者にアピールする計画も用意しているという。
最新技術といえば、若手の新入社員には、IT関連の新鮮なノウハウを社内にもたらしてくれることも期待できる。「ジェネレーションYの社員を入社させるのは重要なことだ。若手社員にはモバイルなどの得意分野があるはずだ。それはまさに、当社の問題解決チームに追加しなければならない重要な要素でもある」と、ノーハイム氏は語る。
同氏によれば、人材募集における世代間格差を解消するための最も重要なポイントは、「首尾一貫した明確なメッセージを発信すること」だという。「メッセージをしっかりと発信し、製造業がいかにエキサイティングな分野となり得るかを語る必要がある。人材を募集するなら、若手社員が評価され、尊重され、気持ちよく働ける場所にしなければならない。チームワークと問題解決の文化を生み出す必要がある」と、同氏は語る。
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