固定電話や会議システムとも連動
スマホだけが主役じゃない、Cisco流「モバイルファースト」の想定外
スマートフォンなどの新しい端末は、コラボレーションの形を確実に変える。一方、固定電話や会議室といった従来の手段が即座になくなるわけではない。Ciscoが狙うのは、双方のいいとこ取りだ。
企業の社内および社外のモバイルコミュニケーションのニーズに応えるために、米Cisco Systemsは各種ソフトウェアのアップデートと新しい製品を発表した。その裏側にあるのはモバイルファースト(モバイル優先)のコラボレーション構想だ。
米Wainhouse Researchの上席アナリストであるビル・ハスキンズ氏は、Ciscoの狙いについて、「ユーザー企業が社内外の接続性を確保するのを支援するとともに、モバイル端末からエンタープライズサービスへ容易にアクセスできるようにすることにある」と語る。
Ciscoでコラボレーション製品のマーケティングディレクターを務めるクリス・ウィボーグ氏は、こう話す。「今回の発表のポイントは、エンドユーザーの仕事のやり方の変化に合わせて各Cisco製品を連係し、新たなユーザーエクスペリエンスを創出することにある。従業員が職場に端末を持ち込むようになったことも、今日の職場におけるコミュニケーションについて見直すきっかけになった」
Ciscoのモバイル戦略:コラボレーションを社外に拡張
社内のエンドユーザーがコラボレーション経験を通じて得る価値と同じものを、社外のエンドユーザー(ゲスト、取引企業、顧客、パートナーなど)に提供するのは容易ではない。Ciscoの「Cisco Collaboration Edge Architecture」をベースとする新ゲートウェイ「Cisco Expressway」は、社外のエンドユーザーが社内のコラボレーションツールにセキュアに接続することを可能にする。Cisco ExpresswayはVPN接続を必要とせず、エンドユーザーはTransport Layer Security(TLS)を備えたユニファイドコミュニケーション(UC)システムあるいはアプリケーションを通じてコラボレーションへ参加できる。
「音声、動画、コラボレーションの各セッションは暗号化され、ファイアウォールで防護される。エンドユーザーは社内にアカウントやパスワードを持っていなくてもよい」とウィボーグ氏は話す。
Ciscoのモバイルコラボレーションポートフォリオの一部として発表された新技術「Cisco Jabber Guest」は、Cisco Expresswayを利用し、社外のエンドユーザーがWebリンクを通じて、社内のエンドユーザーと同様に音声やHD動画、コンテンツ共有による会議に参加できるようにする。「Jabber Guestは、社内コラボレーションの価値を社外へ拡張するだけでなく、企業とコンシューマー間のコミュニケーションやパートナー/サプライヤーとのコラボレーションにも役立つ」とウィボーグ氏は語る。
この技術は、近く登場予定のWebブラウザ間リアルタイム通信技術「WebRTC」もサポートするという。「WebRTCの標準化が完了すれば、Jabber Guest用のプラグインが不要になるかもしれない」と同氏は言う。
モバイルコラボレーション管理の簡素化と音声/動画用の新機器
私物端末の業務利用(BYOD)を採用した企業のニーズに応えるべく、Ciscoは「Intelligent Proximity」という技術を開発した。Intelligent Proximityは、個人のモバイル端末で開始したコミュニケーションのセッションを固定電話などの機器へシームレスに移動することを可能にする。さらにIntelligent Proximityは、モバイル端末と固定電話との間で通話ログや連絡先情報を同期させることもできる。
「携帯電話から、優れたスピーカーとマイクロフォンを備えた固定電話に通話を転送し、より良い通話環境を実現できる」とウィボーグ氏は説明する。Intelligent Proximityは今のところ、AndroidおよびiOS搭載のモバイル端末で利用できる。
Ciscoは同社主催の「Cisco Collaboration Summit 2013」で、2種類の新しい製品、「Cisco Telepresence MX300」および「Cisco IP Phone 7800 Series」を発表した。
MX300は室内設置用のシステムで、最大4台の端末に接続してテレプレゼンス会議ができる。映像/音声データ転送用のネットワーク装置であるMultipoint Control Unit(MCU)を必要としない。エンドユーザーは、Intelligent Proximityを利用してMX300へ接続できる。デュアルディスプレー型会議スクリーンと、エンドユーザーのモバイル端末の間でコンテンツを送受信することも可能だ。会議の出席者は、ドキュメントを共有したり、他の出席者のプレゼンテーション資料を自分のペースでスクロールしたりできる。
ウィボーグ氏はCisco IP Phone 7800 Seriesについて、「中堅・中小企業をターゲットとした固定電話だ。消費電力とコスト節減のために業務時間外は自動的に電源が切れるようにした」と説明する。
Ciscoは、プラットフォーム製品「Cisco Prime Collaboration」もアップグレードし、音声/動画関連製品を含む同社のコラボレーション関連製品群を単一のコンソールから管理できるようにした。「最初の設定と構成が簡単になるだけでなく、IT部門がコラボレーション環境を運用・管理する作業も簡素化される」と同氏は話す。
モバイルコラボレーション:モバイル端末
「モバイル関連の発表の一環として新しいテレプレゼンス製品をリリースするのは、少し奇妙に思えるかもしれない。だが『モバイルコラボレーションとユニファイドコミュニケーションに必要なのはモバイル端末だけではない』というのが、Ciscoの考え方だ」。こう話すのは、米Frost & Sullivanの上席業界アナリスト、ロブ・アーノルド氏である。
従業員はどんな場所でも、どんな端末でも仕事ができる必要がある。ただし、小さなスマートフォンで仕事をするのは、できれば避けたいはずだ。
「Ciscoはモバイルへのニーズが高まっている状況から目をそらしているわけでもなければ、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末だけに注目しているわけでもない」とアーノルド氏は語る。「社外で仕事をする従業員に必要なのは、移動中であろうと同じ場所にいようとも、快適で効率よく仕事ができる環境だ」
同氏によると、Ciscoのモバイル戦略は広範囲に及ぶが、同社ではさまざまなモバイル利用形態をサポートするための機能も開発しているという。「モバイルはBYODが全てではないし、固定された場所で使用する技術の必要性を排除するものでもない」
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