米Microsoftにとって2012年は「Surface」でタブレット市場に本格的に参入した年だった。だが「Windows Phone 8」と同様にその成否は不透明だ。ヒットさせる鍵とは。
本連載ではIT業界に大きな影響力を持つ米Microsoftの2012年における注目すべき展開や興味深い出来事をピックアップする(前編記事:「Office 365」に相次ぐ障害、ユーザーの信頼をどうつかむか)。
スティーブ・バルマーCEOは2012年10月、Microsoftは今や「デバイスとサービスの企業」であると述べた。これは特に驚くようなことではないが、それを公に宣言したというのは劇的な出来事のようにも思える。バルマー氏のメッセージの本質は「Microsoftの将来はWindowsとOfficeの向こうにある」というものだ。年商690億ドルの大半を両製品ファミリーで稼いでいる企業にとって、これは恐ろしいシナリオだ。
しかし同社は既に、「Surface」でこの新世界に足を踏み入れた。加えて、「Windows Phone 8」とデスクトップ用の「Windows 8」は極めてサービス指向型のOSであり、「SkyDrive」や「Office 365」などの製品との結び付きが強い。また、以下でも述べるように、同社は「Windows Azure」の開発をさらに強化し、広範な種類の端末にクラウドサービスを提供できる強力なプラットフォームに仕立て上げる考えだ。
Microsoftは2012年、ハードウェア事業の新たな展開を目指し、「Surface」タブレットを投入した。Microsoftの従来のハードウェア製品としては、マウス、キーボード、Xboxなどがよく知られている。しかし同社はこれまで本格機能を備えたコンピュータを販売したことはなく、この分野では常にハードウェアOEMに依存してきた。
2機種のSurfaceタブレットは、テレビでの大々的な宣伝攻勢のおかげでまだ命脈を保っているが、Microsoftは売り上げに関する具体的な数字を公表したくなさそうだ。このため、同製品の販売状況をめぐってさまざまな臆測が飛び交っている。IT専門家の評価も決して芳しいものではない。「ソフトウェアの動作速度が遅いこと、そしてレガシーアプリケーションがそろっていないことが、ハードウェアの魅力を損ねている」というのが専門家の意見だ。
どうやらSurfaceタブレットは出足でつまずき、広範な支持を得られていないのが現状のようだ。Windows Phone 8も当分、スマートフォン市場で2けたのシェアを獲得できる見込みはなさそうだ。
だが、結論を出すのはまだ早いのかもしれない。ARMプロセッサを搭載したWindows RTベースの廉価版ではなく、間もなく登場する「Surface for Windows 8 Pro」(Surface Pro)に望みがあると指摘する人もいる。また、最初の2機種に続いて2013年後半にも登場する予定の後継製品にも期待が持てそうだ。
Microsoftは「Windows 8」の適応性の広さを生かし、モダンな外観を誇る新バージョンの「Windows Phone 8」をリリースした。Windows 8ベースのSurfaceと同様、Windows Phone 8も2012年のクリスマス商戦では大々的な宣伝が繰り広げられた。しかしやはりSurfaceと同様、その成功の可能性はまだ見えてこない。
リリースから数カ月が過ぎたWindows Phone 8だが、答えの出ていない疑問が幾つか残されている。まず、「アプリはどこにあるのか?」。MicrosoftのWindows Storeのカタログは充実してきてはいるが、AppleやAndroidのスマートフォンOS向けのアプリの充実度と比べると圧倒的に品ぞろえが少ないのが実情だ。Microsoftを悩ませている問題の1つは、開発者を引き付けられないことだ。
また、「市場シェアを拡大するためにAppleとAndroidの両陣営からどうやってユーザーを奪うのか?」という疑問もある。MicrosoftがWindows Phoneプラットフォーム向けの開発を優先する(もっと良いのはWindows Phone向けしか開発しない)開発者ベースを確立できれば、そこからがスタートということになるだろう。
Microsoftが本格的なデバイスメーカーという新たなポジションを目指すという状況の中、2013年には「Surface Phone」が登場するのだろうか。Surfaceの登場以来、Microsoft製のスマートフォンをめぐってさまざまな臆測が飛び交っているが、その真偽は不明だ。
本連載の後編ではOffice 2013への取り組みと同社の人事について解説する。
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