数年も検出されない例も
痕跡ゼロ? メモリ常駐で検出を妨害する「インメモリマルウェア」の脅威
メモリ常駐型のマルウェアを利用したサイバー攻撃が相次いで明るみに出ている。国家レベルでの関与も疑われる事例も明るみに出た。現状と対策をまとめる。
米セキュリティベンダーのFireEyeは先日、同社ブログでゼロデイ攻撃を報告し、標的型攻撃が、より短期間なメモリ常駐型のマルウェア(インメモリマルウェア)を利用したものへと移行しつつことを示唆した。同社によると、米国内で活動している民間のシンクタンクが標的型攻撃のターゲットとなったといい、この攻撃には国家政府が間接的に関与している疑いがある。FireEyeは標的となった組織名の公表を拒否し、国内外の安全保障政策に特化した組織とだけ説明している。
攻撃者は標的組織のWebサイトへ侵入し、Webサイトの訪問者のクライアントPCのメモリに「Hydraq/McRAT」と呼ばれるマルウェアの亜種を仕込んだ。当時まだ見つかっていなかった「Internet Explorer」の脆弱性を悪用した。Windows端末に読み込まれたこのマルウェアは、攻撃用サーバであるコマンド&コントロール(C&C)サーバへアクセスして、命令を待つ状態になる。
「そして攻撃者はマルウェアに感染したクライアントPCに、ファイルを探してダウンロードするよう手動で命令を送る。リモートデスクトップを操るのに似ている」と、同社の脅威インテリジェンス担当マネジャー、ダリアン・キンドランド氏は説明する。
攻撃者は、マルウェアに感染させたクライアントPCがネットワークから切断される前に狙ったデータを手に入れるべく、素早く作戦をやり遂げなければならない。
インメモリマルウェアを使った攻撃(インメモリ攻撃)を仕掛ける際、攻撃者はHDDにマルウェアを仕込む手順の自動化よりも、マルウェアの検知を難しくする方に力を注ぐ。マルウェアは数カ月、時には数年も情報を探し続け、C&Cサーバへデータをアップロードする。マルウェアは、Webサイトへのサービス妨害(DoS)攻撃にも使われる。
ただし、標的型攻撃には、ハッカーの手口が分かる情報が多数残ってしまいやすいという弱点がある。フォレンジックの専門家は、こうした情報を活用して、将来の攻撃を防ぐ手だてを講じている。また、残された情報が決め手となって攻撃者を特定できる場合もある。例えば、米セキュリティベンダーMandiantは2013年2月、米紙New York Timesのサーバを狙った攻撃を追跡し、中国軍の関与を突き止めた。
「単にデータの抜き取りだけをもくろむのなら、インメモリ攻撃ははるかに優れている。ハッカーはできるだけ長く見つからないようにと、ゼロデイ脆弱性を突いてくる」と、米セキュリティコンサルティング企業Bishop Foxの上級アナリスト、ジョセフ・ドムジー氏は語る。
「システムに侵入し直す必要があるのなら、再度ゼロデイ脆弱性を突く攻撃をすればいい。このときHDDに何も書き込まなければ、フォレンジックで発見できる証拠はほとんど残らない」と、ドムジー氏は付け加える。「この手口は何も目新しいものではないが、目にする頻度が高くなったのは最近だ」(同氏)
ドムジー氏はこう続ける。「(ゼロデイ)攻撃を事前に防ぐことはかなり難しい。この手の攻撃に対する防御策といっても、大したことはできないのが現状だ。だからこそ、このような攻撃が非常に増加して、特定の企業や個人が特に標的にされている」
実際、FireEyeが発見した最近の攻撃でも、攻撃者は誰がいつWebサイトへアクセスしたかを把握する目的で、標的のWebサイトのアクセスログを解析していた。「攻撃者はその情報から、侵入したWebサイトに特定の訪問者たちからのアクセスがあるタイミングを見計らって、訪問者のシステムをハッキングする」と、FireEyeのキンドランド氏は語る。
こうした攻撃に対する防御テクニックとして利用されるのが、データベースのエントリーに偽アカウントを仕込んでおく手法だ。コンピュータセキュリティの世界では“ハニートークン”と呼ばれている。このアカウントは実務では全く使用しないものなので、このアカウントに対するアクセスがあった場合は、システム管理者はマルウェアがシステムを攻撃していると気付くことができる。
ハニートークンは、攻撃をおびき寄せる“おとり”システムの「ハニーポット」と同じ発想から生まれたものだ。おとりの脆弱性を意図的にWebサイトに仕込んでおくことで攻撃者をおびき寄せ、攻撃のテクニックを探る。
2013年11月初め、米セキュリティ会社Triumfantは、インメモリマルウェアによる攻撃(インメモリ攻撃)を検出して阻止する機能を同社のマルウェア検出ソフトウェアに追加したと発表した。Triumfantの社長兼CEOであるジョン・プリスコ氏は、この技術は米国の諜報機関からの依頼を受けて開発したものだと説明する。同氏は依頼元の機関名について明言を避けた。
「何種類ものインメモリの脅威に遭遇したこの諜報機関は、当社にはこの手の攻撃に最も効果的に対処できる基礎力があると認めて、対策を依頼してきた」とプリスコ氏は説明する。
インメモリ攻撃は増え続けるとプリスコ氏は推測する。前述のMandiantの報告を踏まえると、驚くことに国家がこうした攻撃に関与している可能性があると分かったからだ。
「敵の方はますますステルス化している。ステルス化する最善の策は、証拠を一切残さないことだ」とプリスコ氏は語る。
政府機関のみならず、石油、ガス、金融サービス、メディア業界の企業もインメモリ攻撃の標的となったことをTriumfantは確認したと、プリスコ氏は報告している。企業が標的となったのは、海外の政権に対して批判的な記事が発表され、その記事の情報源が企業にあると見られたためである。
攻撃の多くは中国やロシアからだが、両国以外の小国からの攻撃も始まっている。
「標的を徹底的に絞り込み、非常に手の込んだ攻撃を仕掛けるのは、大人数でなくてもできる」とプリスコ氏は指摘する。「これ(サイバー攻撃)は、多くの国にとっては、国家間の力関係の不均衡をなくす手段になっているともいえる」
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