中小企業が知っておきたい運用管理/資産管理ツールの選定ポイント【第3回】
中小企業で求められるPC管理 失敗しないために大切な視点とは
中小企業における運用管理/資産管理ツールの選定ポイントを解説。第1回は運用管理/資産管理ツールの全体像、第2回は注目すべき動向に触れた。第3回はPCを対象とした運用管理/資産管理ツールを取り上げる。
これまでの連載
運用管理/資産管理ツールの守備範囲は非常に広い。そのため、「自分が着目している内容が全体像のどの位置にあるのか?」を常に意識しておくことが大切だ。前回(ジョブ管理ツールとハードウェア同梱ツールでできる賢いサーバ管理術)と同様に「役割」(「監視する」「設定する」「統合する」)および「対象」(「PC」「サーバ」「ネットワーク」)の観点から整理した図1を確認しておこう。
PCを対象とした運用管理/資産管理は情報漏えい防止の色彩が強い
「統合」については次回にまとめて取り上げる。今回はPCを対象としたトピックなので、図中の[1-1](監視)と[2-1](設定)が該当することになる。
「監視」に当たる役割としては
- インストールされているアプリケーションを把握
- ファイルの印刷、USBなどの外部記憶デバイスへのコピーなどの操作を記録
といったものが挙げられる。
一方、「設定」に当たる役割としては
- アプリケーションのインストールや起動を許可/禁止
- ファイルの印刷や外部記憶デバイスへのコピーなどを許可/禁止
といったものが挙げられる。
PC向けの運用管理/資産管理には他にもさまざまな役割があるが、その多くはPC内のデータを漏えいさせないことを目的としたものだ。「監視」だけで「設定」を行わないという場合、「監視をしている」ということを社内に周知することで、抑止効果を狙った取り組みであることも少なくない。大企業と比べてPC台数(≒社員数)が少ない中小企業であれば、PC管理の作業負担軽減を目的とするよりも、情報漏えい防止を目的とするウエイトがさらに高まるといえるだろう。
セキュリティやバックアップも含めたPC管理全体で対策を考えることが大切
ここで少し視点を広げてみよう。以下のグラフは年商50億円未満の中小企業に対し、新たに対策を実施/強化するPC管理に関する最重要項目を尋ねた結果である。
実は「PC管理」は、PCを対象とした運用管理/資産管理よりも広い概念だ。PC管理を担うツールの歴史的な流れから、同分野には大きく分けて「運用管理/資産管理」「セキュリティ」「バックアップ」の3つがあり、それぞれにおいて多種多様なツールが提供されている。図2はこうした3つを全て含んだ「PC管理」という広い視点から、ユーザー企業が今後何を重要と考えているか? を表した結果といえる。
図2の選択肢のうち、運用管理/資産管理に該当する項目としては、「メールの送信内容やWebサイトのアクセスを監視して、許可/禁止を行う」「ファイルの印刷やコピーといったPC上で行う操作を記録して監視する」などが挙げられる。
セキュリティに該当するものは、「不正なプログラムによるPCへの攻撃を防御する」が該当し、バックアップ関連については「PC内のデータを適切な場所に保管/保存する、復旧できるようにする」「OSやアプリケーションの設定を保存し、復旧できるようにする」などが挙げられる。
図2の調査結果を見ると、PC管理全体で見た場合には、運用管理/資産管理よりもセキュリティやバックアップを重視する傾向があるといえる。ただし、この結果は、運用管理/資産管理の重要度が低いということを示すものではない点に注意が必要だ。PC内のデータを守るためには、社員の故意や過失によるデータ流出(運用管理/資産管理)だけでなく、外部からの攻撃に対する防御(セキュリティ)やデータ保全(バックアップ)も含む多角的な対策が欠かせない。
運用管理/資産管理という用語だけを見ると、あたかもPC管理全体を網羅しているように思えてしまう。図2は「運用管理/資産管理という名称に惑わされず、セキュリティやバックアップも含めたPC管理全体の対策を常に念頭におくことが重要」ということを示していると捉えるべきだろう。
「PC台数が少ないから個別管理で十分」とは限らない
PC管理全体という広い視点で対策を講じる場合、ユーザー企業は具体的にどのような形態のツールを選ぶべきなのだろうか? 図3は先に挙げられた選択肢のうち、回答割合が高かった上位3つの項目について、その望ましい実現手段(複数回答可)を尋ねたものである。
いずれの項目についても「管理用の社内サーバは利用せず、個々のPCにアプリケーションを導入して実現する」という回答が4割前後で最も多く挙げられている。確かにPC台数の少ない中小企業においては、個々のPCにツールをインストールして個別に管理する手法でも十分だと考えるかもしれない。
だがその場合、最も多く挙げられたニーズである「PC内のデータを適切な場所に保管/保存する、復旧できるようにする」(n=91)を実現する場合、データの保管/保存先はどうするのだろうか? ファイルサーバを設けて、そこに置けば良いかもしれないが、PC台数が少ないとはいえ、複数台のPCに格納されたデータを集めれば、それなりの容量になる。それに対応できるディスク容量を持ったファイルサーバを導入するとなると、相応のコストが掛かってくる。バックアップからデータを復元しようとする際、誤って別のPCデータを復元してしまう可能性もゼロではない。
その点、2番目に多く挙げられた「管理用の社内サーバと、個々のPCに導入するモジュールの組み合わせで実現する」(20.9%)という手法であれば、複数PCで重複するデータを圧縮することにより、バックアップデータの容量を削減できる(複数の社員が同じドキュメントを各自のPCに保存しているケースは多いはずだ)。PCと管理サーバのやりとりも統制されるため、上記に述べたようなデータの復元ミスも起こらなくなる。
また現時点では回答割合がそれほど多くないが、将来的には「管理用サーバの役割を業者が担い、個々のPCにモジュールを導入するサービス形態で実現する」という手法も有効になると予想される。この手法では管理サーバの役割がインターネット越しにクラウド形態で提供され、PCが社内にあるか社外にあるかに関係なく管理が可能となる。
ここで3番目に多く挙げられた重視事項が「PC内のデータを共有し、スマートフォンなどの他デバイスからも閲覧可能にする」(n=47)である点にも注目したい。スマートデバイスからの閲覧を可能にするためには、データがインターネット越しにアクセス可能な状態である必要がある。クラウド形態でのPC管理を行っておけば、スマートフォンからアクセスしたいフォルダをクラウド側に複製しておくといったサービスも行いやすくなる。スマートデバイスの活用は中小企業においても関心が高い。それを考えれば、クラウド形態のPC管理も検討対象となってくるわけだ。
こうした将来像を見据えて、PCを対象とする運用管理/資産管理ツールを提供するベンダーも、クラウド形態でのサービス提供に力を入れてきている。本連載の第1回(運用管理/資産管理の全体像を整理しよう)では、年商50億円未満の中小企業において多く導入されている運用管理/資産管理の製品/サービスの市場シェアを確認した。この中の、エムオーテックス「LAN Scope Cat」やクオリティソフト「QND Advance/Standard、QND Plus/QAW」は共にPCを対象とした運用管理/資産管理ツールの代表格だ。前者は「LANScopeクラウドキャット」、後者は「ISM CloudOne」という名称でクラウド形態のサービスも提供している。
このように、PCを対象とした運用管理/資産管理の利用形態は進歩を続けている。「ウチの会社は規模が小さいから、個別管理で十分だ」と決めてしまわず、日々の業務を少しでも効率化するという観点から、管理サーバやクラウド形態の活用も視野に入れておくべきだろう。本稿がPC管理における視野拡大の契機となれば幸いである。最終回となる次回は統合的な運用管理/資産管理ツールについて見ていく。
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