注目の次世代ユーザー認証技術
人に聞こえない「音」がパスワード代わりに、Googleが買収した新興企業の注目技術とは
米Googleが買収したSlickLoginは、音を利用したユーザー認証技術を開発している。パスワードの置き換えや追加のセキュリティレイヤーとなる可能性を秘めている。果たして、同社買収におけるGoogleの思惑とは。
米Googleがイスラエルの新興企業SlickLoginを買収した。SlickLoginは、「音」を用いたオンラインサービスのユーザー認証技術を開発している。
SlickLoginは、自社WebサイトでGoogleによる買収を認めている。だが、買収に関する金銭的な条件などは明らかにしていない。
SlickLoginを用いたユーザー認証の仕組み
SlickLoginを利用するオンラインサービスでは、まず人間の耳では聞こえない音の信号をPCのスピーカーから出力し、利用者のスマートフォンにインストールされたSlickLoginアプリでその信号を検知。そして、スマートフォンからPCに信号を送り返すことで、ユーザー認証を完了する仕組みとなっている。
SlickLoginのテクノロジーは、Wi-FiやBluetooth、QRコードなどの通信プロトコルと連携する。これにより、利用者のスマートフォンとオンラインサービスにアクセスするPCが、同一の場所に存在するかを確認する。
同技術の開発者らは、SlickLoginは「軍用レベル」のセキュリティを提供すると主張している。全てのデータは厳重に暗号化され、スマートフォンによる音の認証が機能するのは極めて限定的な時間のみであるという。
SlickLoginのWebサイトによると、創業者の3人は、最近までイスラエル国防軍のエリートサイバーセキュリティ部門に所属していた。また、最新情報セキュリティプロジェクトに6年以上従事していた経験を持つ。
パスワードの置き換え、追加のセキュリティレイヤーとしての可能性
同社のテクノロジーは、パスワード認証システムの置き換え、あるいは2要素認証を可能にする追加のセキュリティレイヤーとして利用できる。
米Googleは、2要素認証を早期に導入したオンライン企業の1社である。その後、ユーザー名やパスワードの大規模な流出が相次いだこともあり、その他の企業もこれに追従した。
現在利用されている多くの2要素認証システムは、携帯電話のSMS経由で送られたワンタイムパスワードや、セキュリティトークンなど特別な端末などによって自動生成されるコードを利用する仕組みとなっている。
だが、テキストベースのシステムには脆弱性が潜んでいる。例えば、ハッカーがアカウントを乗っ取り、携帯電話番号の設定を変更すれば、認証に必要なコードを受け取ることが可能になってしまう。
SlickLoginには、こうした脆弱性が存在しない。また、一部の銀行などが提供するコード生成用の端末を別途利用する必要もない。
SlickLogin買収、Googleの思惑は
一部のアナリストは、GoogleがAndroidデバイスとGoogleサービスの2要素認証に、このテクノロジーを利用するのではないかと予測している。
Googleは、オンライン認証をより容易かつ安全なものにすることを目指しており、今回の買収もその流れの中で説明できる。
2013年10月、Googleは2要素認証用のセキュリティトークンを提供する計画を認めている。同社はまた、セキュア認証の推進団体であるFast IDentity Online Alliance(FIDO Alliance)のメンバーにもなっている。
同団体は、よりシンプルで強固な認証標準の策定を目的としたオープンな業界コンソーシアム。最近では、新たな認証プロトコル「Online Security Transaction Protocol」(OSTP)の技術仕様のドラフトを発表した。
OSTPは、多種多様な認証方式の相互運用を可能にすることで、将来的にパスワードを不要にする可能性を秘めている。
対象となる認証方式には、バイオメトリクス技術やTrusted Platform Module(TPM)、USBセキュリティトークン、組み込みセキュアエレメント(eSE)、スマートカードなどが含まれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
[Dropbox Japan株式会社] ランサムウェア対策で見直したい「復旧できるファイル基盤」とは? -
製品資料
[Dropbox Japan株式会社] さよならファイルサーバー クラウドストレージへの移行はこう進める -
比較資料
[セコムトラストシステムズ株式会社] 「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 過去にRPA導入をあきらめた企業こそ知っておきたい 失敗しない自動化導入術 -
製品資料
[株式会社キーエンス] 自分ひとりでデスクワークを効率化 「AI&ナビ搭載RPA」で実践する業務自動化
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
2
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「データ活用とAI活用の実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
3
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
8
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー