50年の耐久性は本当?
Facebookがデータ保存にBlu-rayとSSDを採用、専門家からは「本気?」の声
Facebookは長期的に保持するデータの格納先として、Blu-rayディスクやSSDなどを利用すると公表した。コストや消費電力を抑えつつ、50年以上の耐久性を持たせると説明するが、この戦略に対する評価はまちまちだ。
米Facebookは2014年1月下旬、米カリフォルニア州サンノゼで開かれた「Open Compute Summit」で、Blu-rayディスクと“ネットブッククラス”のSSD(ソリッドステートドライブ)利用を推進する戦略の概要を説明した。データストレージ業界アナリストやIT幹部に取材したところ、この戦略に対する評価はまちまちだ。
好評なのは、Webサーバの起動にコンシューマーグレードのSSDを使用するという戦略で、これは広く支持を集めている。一部のIT幹部は、コンシューマーグレードのSSDを使ってサーバの起動プロセスをスピードアップしているが、新しい小型の「M.2」(以前は「Next Generation Form Factor」として知られていた)規格のフォームファクターについてはまだ調査していないと述べている。M.2は、省電力が要求されるデバイス向けに設計されている。
「光ストレージは、投資採算が取れるほど売れない」発言の真意は?
これに対し、Blu-rayディスクをコールドストレージ(アクセス頻度が低いデータのストレージ)として推進するというFacebookの方針は、数人の業界アナリストから不評を買っている。FacebookはOpen Compute Summitで、「Open Compute Project」(以下、OCP)プラットフォーム規格に準拠したラック1台に1万枚のBlu-rayディスクを収納し、これらに1P(ペタ)バイトのコールドデータデータ(アクセス頻度が低い)を保存するストレージシステムのプロトタイプを披露した。
OCPは、Facebookが主導するデータセンター技術のオープンソース化プロジェクト。同社のインフラエンジニアリング担当副社長、ジェイ・パリーク氏は、このシステムの保存容量を1ラック当たり5Pバイト以上に拡張する計画を明らかにした。
「だが、業界では、エンタープライズストレージのバイヤーに光ドライブを売り込んだが、不発に終わった光ストレージ企業が山ほどある」と、米Evaluator Groupのシニアパートナー、ジョン・ウェブスター氏は電子メールで述べ、失敗した光ストレージベンダーの例として米InPhaseと英Plasmonを挙げている。「光ストレージは、投資採算が取れるほど売れない」
パリーク氏は、今回プロトタイプを披露したBlu-rayデバイスによって、「極めて長期的なコールドデータに50年の耐久性を持たせる」ことや、「Facebookの現在のコールドストレージインフラと比べてコストを50%、消費電力を80%削減する」ことなどを容易に実現できると主張した。
Facebookは2013年に、同社初のコールドストレージ設備の本番運用を開始。近いうちに2番目の設備も運用に入ることになっている。同社のデータ保存量が増加して150Pバイトを優に超えているからだ。いずれは設備当たりの保存量が3E(エクサ)バイトに達する可能性があると、パリーク氏は説明する。Facebookの広報担当者によると、米オレゴン州とノースカロライナ州にあるこれらの設備のシステムでは、コールドストレージとしてHDDを採用しているという。
また、Blu-rayシステムのプロトタイプは年内に本番テストが始まる見通しだと、広報担当者は述べた。エンジニアリングチームのFacebookページで、このシステムのデモ動画が公開されている。
それによると、Blu-rayシステムのラックは24のマガジン(カートリッジケース)から成る。各マガジンには36個のロック付きカートリッジが収納され、各カートリッジには12枚のBlu-rayディスクが収められる。ロボットピッカーが、指定されたマガジンの位置に移動し、カートリッジを特定してそのロックを解除し、ドロワーを移動して指定されたディスクを選択すると、Facebookのハードウェアエンジニアリングディレクターを務めるジョバンニ・コグリトア氏は説明している。
同氏は動画の中で、このロボットの消費電力は、通常の磁気スピンドルと比べるとごくわずかだと述べている。操作待ちのコールド状態では消費電力はほぼゼロで、データを引き出すときの消費電力は1000W未満だという。
「これは、データセンターで通常消費される電力と比べれば微々たるものだ。また、このシステムの信頼性は、設計上の特徴と結び付いている」とコグリトア氏。「これらのディスクは全て、所定の試験をクリアして50年の寿命がうたわれている。メディアとドライブが分離しているため、もしドライブに問題が発生しても、ドライブを取り換えればいい。ディスク内のデータは移行する必要がない」
Blu-ray戦略は長期にわたって有効か
米DeepStorage.netの創業者でチーフサイエンティストのハワード・マークス氏は、FacebookのBlu-ray戦略に懐疑的な見方を示す。Facebookが使うとみられる記録型100Gバイトディスクは、登場から4年もたっておらず、その寿命は、加速度寿命試験を通じて推定することしかできないと、同氏は指摘している。
「記録型のCDやDVDでのわれわれの経験は、推定寿命に到達することはあり得るが、かなり多くのディスクが、それより早くダメになるというものだ」と、マークス氏は電子メールで述べている。「だが、50年の耐久性という主張の本当の問題は、技術の進歩によって、データをそのメディアにそれほど長期間保存することが現実的ではないとうことだ」
「ディスクは今から50年間読み取れても、ドライブはそれほど長持ちしない」と同氏は続ける。「コンデンサの漏れ、潤滑油切れや変形といったトラブルが起こる。このため、今から40年後にこうしたディスクを読むには、その時点で使用年数が10年以内で、それらを読めるドライブが必要になる。
前出Evaluator Groupでシニアパートナーを務めるラス・フェローズ氏は、研究開発がほとんど行われていないため、この技術で「今後、改良が進むことは、よく言っても疑わしい」と指摘する。さらに、光ストレージは一般的に、テープストレージよりも容量単価が高いと、同氏は述べている。
「Blu-rayはどんな企業にとっても、データ保存の良い選択肢ではないと思う」とフェローズ氏。さらに同氏は、Googleはデータの長期保存にテープを使っていると補足し、「Facebookは、Blu-rayの推進を決めたことを後悔するだろう」との見方を示している。
米Coughlin Associatesのトム・コグリン社長は、Blu-rayは堅実な技術であり、さまざまなストレージ階層で容量拡大に利用できると語る。しかし同氏は、購入価格全体と運用コストの両面で、Blu-rayの方がテープよりも経済性が高いとは考えていない。
「高密度のテープストレージがあれば、一定量の情報を保存するのにそれほど大きなライブラリは要らない」とコグリン氏。「そのため、ストレージの設置面積もそれほど広くならない」
米Wikibonのシニアアナリスト兼プリンシパルリサーチコントリビューター、スチュアート・ミニマン氏は、Blu-rayストレージシステムのプロトタイプは、興味深い科学的実験だが、かなり実現性に乏しそうだと評している。
「Amazon Glacier(クラウドアーカイブストレージサービス)は、古い技術を転用して基盤に据えている」と、ミニマン氏は電子メールで述べている。「光メディアとロボットアームをベースにした特殊な長期ストレージアーキテクチャには、テープのような長期ストレージの選択肢に取って代わるだけの規模の経済性はなさそうだ。この技術の導入を進める企業はFacebook以外には出てこないだろう」
しかし、米ウィスコンシン大学マディソン校の仮想化アーキテクトを務めるボブ・プランカーズ氏は、コールドストレージとしてBlu-ray技術を検討するかもしれないと語る。1回書き込めば多様な機器で読み取れるというBlu-rayの特徴は、コンプライアンスニーズや記録のアーカイビングに役立つ可能性があると、同氏は説明する。さらに、Blu-rayに移行すれば、陳腐化に対処するためにデータを異なるフォーマット間で変換する必要があるといったテープの煩わしさの一部から解放されるかもしれないと、同氏は付け加える。
プランカーズ氏は、Facebookのような規模で技術を利用する企業では、消費電力が大きな問題になることはよく理解できるとしている。Blu-rayを選択すれば、消費電力はごくわずかで済むだろうと同氏は見る。
米Enterprise Strategy Groupのシニアアナリスト、ウェイン・ポーリー氏は、Facebookのストレージアプローチは、コールドストレージとしてテープライブラリシステムの代わりに使える、興味深い選択肢を提供すると考えている。「率直に言って、光ストレージの機械的な側面には長年の歴史がある。この技術が使い物にならないということは決してない」と、同氏は電子メールで述べている。
ポーリー氏は、この技術の記録密度、寿命、小さなフォームファクターは理にかなっており、メディアフォーマットも経済的だとしている。しかし同氏は、Facebookのアプローチが同社以外でも広く採用される可能性が開けるには、同社がカタログシステムをオープンソースコミュニティーに公開することが必要になるだろうとも付け加えている。
ネットブッククラスのM.2 SSDは広い支持を獲得するか
一方、ネットブッククラスのM.2 SSDの利用が、Facebook以外の企業や組織に広がるかどうかも未知数だ。米Gartnerの半導体担当シニアリサーチアナリスト、マイケル・レーツ氏は、M.2 SSDは比較的新しく、広く普及するには、もっと導入事例が出てくることが必要だと指摘する。M.2 SSDは小容量の2.5インチHDDに取って代わり、それに伴って、サーバに変更を加えることなく、すぐにM.2 SSDを組み込めるかどうかが問題になるだろうと、同氏はみている。
また、M.2 SSDの小さなフォームファクターは、省スペースや省電力の観点から魅力的である他、他の全てのSSDと同様にM.2 SSDも、起動プロセスをスピードアップさせるだろうと、レーツ氏は語る。
「M.2規格は、エンタープライズSSDにもクライアントSSDにも採用されていくだろう」と、同氏は電子メールで述べている。
Facebookでハードウェアエンジニアリングディレクターを務めるマット・コードリー氏によると、同社は、Webサーバを起動するドライブの総所有コスト(TCO)を調査したという。このTCOには購入価格、生涯消費電力、ドライブの故障率を考慮した運用コストなどが含まれる。調査の結果、SSDは実用に耐えると考えられるが、データセンタークラスのSSDは購入価格が高過ぎることが分かった。ネットブッククラスのSSDは、ディスクが回転するドライブよりもTCOが低いと、コードリー氏は述べている。
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