「医療クラウド推進コンソーシアム」第2回勉強会リポート
多様化する医療IT製品・サービス、専用SNSや高性能タブレットが登場
クラウドやスマートフォンの普及により、医療IT市場は拡大している。同市場の開拓に向け、さまざまな企業が独自の強みを生かして事業を展開。各社の取り組みをリポートする。
関連省庁によるガイドラインの策定により、民間企業によるデータセンターへの医療データ保存が解禁された。それを受け、医療分野のクラウドサービス(医療クラウド)への関心が高まっている。一方で、その使い勝手の高さから、タブレット端末などの利用も医療現場で進んでいる。
医療ITは急速に進化し、多様化を遂げつつある。では現状、どのような製品やサービスが登場しているのか。医療クラウドのさらなる普及を目的に設立された医療クラウド推進コンソーシアムは2014年2月28日、医療ITの現状に関する勉強会を開催。本稿では、その中で発表された医療分野向け製品・サービスを展開する各社の取り組みを紹介する。
医療・介護の現場を支援するSNS
ソフトバンクテレコム ヘルスケアビジネス推進室の小林広明氏が紹介したのが、JRCエンジニアリングや日本エンブレースなどと共同開発し、2013年7月に提供を開始した医療機関・介護施設向けSNSの「メディカルケアステーション」(MCS)である。
在宅医療の現場では従来、患者宅の連絡ノートによるスタッフ間の情報共有が広く行われてきた。しかし、この手法には情報の迅速な把握が難しく、きめ細かな対応が困難という問題が残されていた。
MCSはこの問題に抜本的な対応を図ったサービス。その特徴は「つぶやく」「見る」というシンプルな操作で、現場での情報共有度の大幅な底上げが見込めることだ。利用に際して患者ごとにスレッドを立ち上げ、タイムライン上に伝言を残しておくことで、関係者はいつでも、どこからでも内容を確認できる。伝言を過去にさかのぼり確認することで、途中から介護に参加したスタッフも、これまでの経緯を容易に把握することが可能だ。
ファイル添付によって各種ファイル形式のデータを共有できる。医用画像の共有を通じた読影など、さまざまな利用法が考えられる。完全招待制のアクセス制限やクライアントとサーバ間の通信の暗号化により、情報の高い機密性も実現した。しかも、利用料はデータ容量が1Gバイトまでは無料だ。
ソフトバンクテレコムでは2010年からクラウドサービスの「ホワイトクラウド」の提供を開始。同クラウドは医療機関からも利用を集め、同社ではPACS(医用画像管理システム)やレセコンといった院内システムや、在宅介護などの院外利用を想定したシステムのクラウド移行も支援してきた。そこで判明した医療クラウドの課題が、院内システムを切り出す場合にはシステム間連携のために、少なからぬコストが発生し、そのことが利用を阻む一因となっていることだ。
「だが、院外利用を想定したシステムなどは、その特性からクラウドと非常に相性が良い。そこでMSCを医療クラウドの中核に位置付けるとともに、連携アプリの提供環境を整え、アプリパートナーから料金を徴収するモデルを採用することで、無料で気軽に採用することを可能とした」(小林氏)
利用は着実に進んでおり、例えば豊島区医師会は在宅難病訪問支援事業でのコミュニケーションネットワーク構築のためにMCSを採用。在宅クリニックを起点に地域の介護施設や調剤薬局など適用領域を広げている。
「全県の医師のネットワーク参加を検討する医師会もある。その場合、医師の相互の信頼感により患者紹介の円滑化も見込むことができる」(小林氏)。同社では今後、連携アプリのさらなる拡充を通じ、利便性向上に取り組む計画だ。
ハイエンドタブレットの医療機関向け対応も
バンバンゲームの代用取締役 マーケティングディレクターを務める山川正樹氏は、同社の最新Androidタブレット「KALOS」の特徴を解説した。バンバンゲームはゲームなどのソフトウェア開発を皮切りに、タブレット開発にも乗り出した台湾の新興メーカーである。2012年にはAndroidタブレットの「MiSS」をリリース。KALOSはその後継機種である。
同製品の一番の特徴は、2560×1600ドット表示の10.1型IGZO液晶ディスプレーの採用による、極めて高い画面解像度を実現した点である。
医療現場ではタブレットの利用が進みつつあるが、画面解像度の低さが電子カルテなどの確認時の課題とされてきた。だが、KALOSでは「拡大表示させることなく新聞を読むことが可能。これによりカルテ確認時の手間を抜本的に削減できる」(山川)という。
KALOSはNVIDIAのTegra 4をプロセッサに採用し、2Gバイトのメモリと16Gバイトのストレージを搭載する。本体にmicroSDXCメモリカードを装着することで、大量データの持ち運びも可能だ。
NFC(Near Field Communication)にも対応しており、非接触型ICカードと組み合わせた認証も可能。また、CMOSセンサー搭載の約1300万画素カメラを搭載しており、訪問看護時に撮影することで、鮮明な画像による患者の記録を残すこともできる。実売価格は4万6000円前後(税別)。今後は消毒面や防水など医療機関向けのカスタマイズにも対応することで、さらなる拡販につなげるという。
ベトナムではこの5年で医療市場が2倍に拡大
トライアローの業務企画室で室長を務める伊藤博樹氏は、同社のベトナム市場の開拓に向けた取り組みを紹介した。伊藤氏によると、ベトナムではODA(政府開発援助)を受けることで高価な診療機器が医療機関に導入される半面、そのメンテナンスの不備によって耐用年数まで使い続けることが困難な状況にあるという。この状況を改善すべく、トライアローがベトナムでの提供を決めたのが、各種検査機器のメンテナンスサービスである。
「ベトナムでは、検査機器を壊れるまで酷使する状況にある。われわれがサービスを提供することで、製品寿命を延ばすとともに医療機関のコスト削減も支援できるはずだ」(伊藤氏)
トライアローは2014年4月に準備室を現地に設置し、2015年4月から営業を開始する計画だ。メンテナンスサービスの提供に加え、無料のユーザー研修会の開催や検査機器の現地語での詳細なマニュアルの提供なども予定している。
トライアローのベトナム進出の背景には、同国で医療市場が急拡大していることがあるという。イーグルワンエンタープライズで代表取締役を務める斉藤達也氏はベトナムにおける医療IT市場の現状を次のように説明する。
「ベトナムには1200の国公立病院と1万1000施設の診療所が存在するが、その医療市場は2013年で約120億ドルと、過去5年で2倍に成長。この拡大著しい市場をターゲットに、現在、各国の医療関連企業がサービス保守や販売などのビジネスモデルの確率でしのぎを削っている」(斉藤氏)
イーグルワンエンタープライズは日本企業のベトナム進出を長年にわたり支援してきたコンサルティングファームだ。2013年には中堅・中小企業の新興国への進出を支援する日本貿易振興機構(JETRO)の事業委託先にも選定されており、戦略策定やマーケティング、ビジネスマッチングなどの活動を展開している。斉藤氏によると、ベトナムは日本企業にとって進出が容易な国の1つであるという(関連記事:外国人看護師・介護福祉士の育成に貢献する、HIDAの人材育成制度とは?)。
「ベトナム国民は日本に対して極めて友好的。日本人と同じように本音と建前を使い分けるため、合理的に話を進められないこともしばしばあるものの、東南アジア各国の中では進出リスクが最も低い国といえる」(斉藤氏)
総人口は9000万人、そのうち就業人口は5000万人に達するとされており、就業人口では2020年までに日本を追い抜くと予測される。その高い成長性を背景に、今後、国外のみならず国内の医療関連ベンダーのベトナム進出も加速するはずだ。
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