徹底解説! VMware Horizon Suiteの世界【第3回】
モバイル活用を安全に、「VMware Horizon Workspace」5つの機能
時間や場所にとらわれず多様なデバイスを活用して業務を遂行したいというニーズが高まっている。IT部門はこうした要求を叶えるとともに、安全で快適な情報システム基盤を構築しなければならない。
1.VMware Horizon Workspaceとは
多くのエンドユーザーが複数のデバイスを所有している昨今、時間や場所に関係なく、多種多様なデバイスから社内のデータやシステムを利用したいという声が挙がってきている。SaaSなどのクラウドアプリケーションの利用もその1つだ。システム管理者はそうした声を認識してはいるものの、SaaSの利用をはじめ、業務用デバイスを社外に持ち出したり、私物デバイスに業務データを残すことなどについては、セキュリティ面での不安を抱えている。システム管理者には、あらゆる形態のアプリケーションにあらゆるデバイスでどこからでもセキュアに接続できる環境を実現することが求められている。
そんな課題を解決するソリューションが「VMware Horizon Workspace」(以下、Workspace)だ。Workspaceは、エンドユーザーに対し「ワークスペース」と呼ばれるポータルを提供する。ワークスペースには、ユーザーデータやアプリケーション、ユーザーのデスクトップが含まれ、IT部門はこれらの資産を一元管理することができる。ユーザーは、あらゆるデバイスからこのワークスペースに容易にアクセス可能だ。
WorkspaceへはSSO(シングルサインオン)接続が可能である。今後、ますます普及が予想されるSaaSアプリケーションは、アプリケーションごとにユーザーIDやパスワードが分かれるため管理が煩雑になりやすい。Workspaceでは、ユーザーが一度ログインすれば、データやファイルのみならず、SaaSアプリケーションでさえ再ログインすることなくシームレスに利用することができる。
2.Workspaceの機能
Workspaceは、5つの「vApp」と呼ばれるバーチャルアプライアンス(VA)で構成される。以下では、Workspaceの機能を紹介する。
データの管理
マルチデバイスが普及している現在、IT部門のあずかり知らないところで、多数のコンシューマー向けファイル共有サービスが利用されつつある。こうしたファイル共有サービスの利用には情報漏えいリスクが拭いきれないものの、システム管理者は個々のユーザーの利用を完全に制限することができないのが現状だ。
そこで、ユーザーには、企業が正式に提供するセキュアなファイル共有サービスを利用してもらうことで、ユーザーの利便性と生産性の向上、データやアプリケーションの安全な管理を同時に実現することができる。
Workspaceには、オンラインストレージのようなファイル共有機能がある。業務で利用するアプリケーションやファイル、データの保存先として利用することができる(図2)。OSごとにエージェントを持ち、エクスプローラの中に組み込まれ、ユーザーのデバイスと自動同期する。
また、ファイル管理機能によって、バージョン管理やコメント入力、プロジェクトメンバー間での共同編集、私物デバイスからの安全なアクセスを実現する。大容量ファイルを送ることもでき、USBをはじめとした外部メディアを利用することなく、社内外の人々とのデータコラボレーションを安全に行える。
アプリケーションの管理
Workspaceを利用すると、システム管理者はユーザーおよびアプリケーションごとに必要な権限を設定し、管理することができる。例えば、学校のPC教室では、複数人で共有するPCにWorkspaceのクライアントエージェントをインストールしておけば、個別にアプリケーションをインストールすることなく、ログインしたユーザーにひも付いた仮想アプリケーションをデスクトップに配置することができる。
また、Webブラウザを利用すれば、ログインユーザーが利用可能なアプリケーションカタログを表示できる。そのカタログにはSaaSアプリケーションやWebアプリケーションが含まれる。SAML(Security Assertion Markup Language)連携することによって、煩雑になりがちなSaaSアプリケーションのログインを、Workspaceで一元管理し、SSOでシームレスに行うことが可能だ。
デスクトップの管理
Workspaceでは、個人の仮想デスクトップ(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)をカタログのように表示し、提供することができる。HTML5対応のWebブラウザがあれば、Webブラウザ上で仮想デスクトップを利用することも可能だ。必要なアプリケーションやデータは自動的に割り当てられるため、ユーザーはどこにいても、どんなデバイスからでも自分の仮想デスクトップを利用することができる。つまり、ユーザーにとっては利便性を向上でき、システム管理者にとってはBYOD(私物端末の業務利用)によるセキュリティリスクを払拭できる。
モバイルワークスペースの提供
OS、アプリケーション、ポリシーを備える独自の仮想コンテナ技術を使用して、Android端末上に仮想的なワークスペースを構築し、物理デバイスとは切り離して保護することができる。システム管理者はそのワークスペースをリモートで管理し、監査用ログの記録やリモートワイプを実行するなど、セキュアな環境を保つ。現段階ではAndroid端末のみが対象となる。
デバイスの管理
近年普及しているタブレットなどを対象に、ポリシーによるリモート管理が可能となる。現段階でサポートされているデバイスが限定的であるため、実運用ではまだ難しいが、将来的には期待される機能だ。
3.Workspaceの特徴
BYODをキーワードに企業がマルチデバイス運用を始めるには、ファイル共有機能やMDM(モバイルデバイス管理)、MAM(モバイルアプリケーション管理)など、それぞれの機能に特化したソリューションを組み合わせて安全を確保していくことが一般的だ。Workspaceではこれらの機能を統合ソリューションとして提供する。システム管理者にとっては、機能ごとに個別のソリューションを導入する必要がなく、一連のソリューションとして扱うことができ、それぞれの機能間に抜け落ちるセキュリティリスクを最小化できる。
米VMwareは2014年2月24日(米国時間)、企業向けモバイル管理およびセキュリティソリューションを提供する米AirWatchの買収を完了したと発表した。これまでのWorkspaceではカバーしていなかったデバイスやアプリケーションの管理に対して、今後の機能統合と強化が期待できる。
システム管理者はマルチデバイスの運用に際して、ガバナンスの維持とユーザーの利便性向上を同時に実現する責務がある。一方、ユーザーには、手元のデバイスで普段と同じようにアプリケーションやデータを使いたいという思いがある。AirWatch買収によって機能強化したWorkspaceが、双方の思いを実現することが期待される。
次回は、全ての「VMware Horizon Suite」製品に関連する「VMware Horizon View」を紹介する。
川本政文(かわもと まさふみ)
双日システムズ
岐阜県出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業後、ITの世界へ。
多くのアプリケーション開発に従事した後、サーバ仮想化からストレージ仮想化を経て、「VMware ThinApp」との出会いによりEUC分野で仮想化の匠を目指す。現在は全国各地を飛び回り、VMware Horizon SuiteやThinApp、EUCについて熱い講演を繰り広げる。
BYODを駆使してワークライフバランスを追求する、一児のパパ。
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