徹底解説! VMware Horizon Suiteの世界【第2回】
Windows XP移行で「VMware Horizon Mirage」が使える理由
物理PCのイメージを統合管理する「VMware Horizon Mirage」は、クライアントPCの保護/修復、クライアントOSの移行など、多くの使い道があるソリューションだ。本稿ではWindows XPからWindows 7へのOS自動移行に焦点を当てて解説する。
VMware Horizon Mirageとは
ヴイエムウェアは2012年5月、PCが持つパフォーマンスを生かしながら物理デスクトップのイメージ管理を集中化・簡素化するソリューション「Wanova Mirage」のプロバイダー米Wanovaを買収し、EUC(End User Computing)ソリューションの充実を図った。仮想化テクノロジーを中核に置くヴイエムウェアが、仮想化ではなく物理PCの管理をEUCソリューションの1コンポーネントに据え、「VMware Horizon Mirage」(以下、Mirage)を提供する格好となった。
Mirageは、物理PCのイメージを統合管理するソリューションである。ユーザー任せになりがちなクライアントPCのデータバックアップを自動的に定期取得し、サーバ上で管理する。今回は、単なるバックアップソリューションにとどまらないMirageの大きな特徴と、その特徴によって実現するWindows XPからのOSの自動移行という活用法に焦点を当てて紹介していく。
ヴイエムウェアは2013年3月に「VMware Horizon View」(以下、View)を提供開始するまで、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)ソリューションとして「VMware View」を提供していた。データセンター内に全てのデータを格納し、データセンターから転送された画面を利用することで、手元のクライアントPCにはデータを残さずにセキュアなデスクトップ環境を提供するソリューションだ。
だが、システム管理者の立場からEUCを充実させていくことを考えると、VDIだけではユーザーの要望を満たせないケースや、関連する課題があった。例えば、クライアントPCがオフラインの場合や、VDI環境では十分なパフォーマンスの出ないアプリケーションを実行したい場合などだ。Mirageは管理対象が物理PCなので、オフラインでも利用を継続することができ、物理PCの潤沢なリソースを利用できるため、パフォーマンスの課題も解決する。コスト面でもVDIはVDAライセンスが必要だったり、高額なストレージを準備したりと負担が大きいが、Mirageにはその心配がない。
Mirageは、コストを抑えながらクライアントPCのBCP(事業継続計画)対策を一元管理できるソリューションだ。ヴイエムウェアはスイート製品である「VMware Horizon Suite」(以下、Horizon Suite)に、VDIとしてViewを、物理管理ソリューションとしてMirageを据えることでEUCの実現を目指す。なお、Mirageは、現時点でViewと一部連係しており、将来的には全ての連係が予定されている。Viewで管理される仮想デスクトップをMirageで保護し、オフラインではMirageによって一時的に利用を継続することで、BYOD(私物端末の業務利用)を実現する予定だ。ヴイエムウェアはHorizon SuiteによってシームレスなEUC環境を充実させていく方針だ。
Mirageの機能
次にMirageの機能を紹介する。
イメージの統合管理
Mirageの特徴は、物理PCのイメージを階層化する点にある。OSやコアアプリケーション、ドライバなど、IT部門が管理したい共通のレイヤー(図1、緑色部分)と、ユーザーが作成する個別のデータやアプリケーション、各種設定などが格納されるユーザーレイヤー(図1、橙色部分)を論理的に分けることで、ユーザー個々が所有する物理PCでありながら、単一のPCイメージによる統合管理が可能となる。データセンターにはMirageサーバを置き、クライアントPCにはMirageクライアントと呼ばれる専用のソフトウェアをインストールする。
MirageクライアントはクライアントPC全体をスキャンし、その内容を論理的にレイヤー化し、完全なコピーをMirageサーバにバックアップする。クライアントPCのイメージを集約して管理することで、災害時や障害時に迅速にリカバリできる。
システム管理者は、ユーザーがクライアントPCを利用していても、管理コンソールから任意のレイヤーを更新できる。システム管理者が共通レイヤーのOSをアップデートしても、クライアントPCのユーザーデータは上書きされない。そのため、ユーザーの業務を中断することなく、クライアントPC環境を更新することができるのだ。
クライアントPCの保護と修復
Mirageで管理されるクライアントPCは、常にMirageサーバと同期している。ユーザーが作成したデータやインストールしたアプリケーション、各種設定情報は、デフォルトでは1時間に1回差分を取得しMirageサーバに保存する。
取得した各クライアント情報は、データセンターに設置されるMirageサーバで統合管理されるため、クライアントPCのデータが消失しても迅速に復旧することができる。
ハードウェアの移行
Mirageのレイヤー管理機能によって、ハードウェア間の移行も容易に短期間で実現できる。例えば、メーカーや型番の異なるハードウェア間の移行であっても、異なるドライバレイヤーを適用することで迅速な移行が可能だ。
アプリケーションの管理
システム管理者は、Mirageにより各部門に必要なアプリケーションを一斉配信できる。また、「VMware ThinApp」(以下、ThinApp)で仮想化したアプリケーションも配信可能だ。
Windows 7への自動移行
任意のレイヤーのみを更新するという特徴を持つMirageの利点を最大限に発揮できるのが、長らくシステム管理者の頭を悩ませてきたWindows XPからWindows 7へのOS移行である。詳細は次の章で述べたい。
Windows XPからのOS自動移行
Windows XPのサポート終了までに、Windows XPから新OSへの移行が完了しない場合、さまざまな問題の発生が予想される。まずはセキュリティの問題が挙げられる。マイクロソフトによるWindows XPのサポートが終了すると、新たな脅威に対するセキュリティパッチが提供されない。そのため、Windows XPを狙った新たなマルウェアの増加も予想される。IT部門は、一大イベントとなるWindows XPからWindows 7への移行を、コストや期間、そして、既存ビジネスへの影響度を考慮して進めていく必要がある。また、既存ビジネスへの影響については、OS移行に際してのユーザーの手間や業務が中断する時間を最小限に抑えることが重要となる。
Windows XPからWindows 7へのマイグレーションには、一般的に2つのアプローチがある。1つは、Windows XPを利用している既存のハードウェアのOSをWindows 7にアップグレードする方法。もう1つは、あらかじめWindows 7がインストールされた新しいデバイスを導入する方法だ。どちらもプロファイルやデータの移行は必要となり、効率的な移行が求められる。
Mirageでは、このどちらの方法に対してもアプローチが可能で、社内共通のWindow 7イメージを極めて短いダウンタイムで展開できる。それぞれのアプローチについて紹介していく。
既存のハードウェアを利用したインプレースアップグレード
現在利用中のWindows XP端末をWindows 7にアップグレードする場合、Mirageを利用すれば、ユーザーの再起動1つでWindows 7にアップグレードできる。
全ての企業がWindows XPのサポート終了に合わせて全端末を買い替えられるわけではない。特にここ2~3年の間に購入したWindows 7がインストールされたPCをWindows XPにダウングレードして利用しているPCは、買い替えをするにはまだ早いケースが多くある。
そのようなユーザーには、利用中のデータやプロファイルをそのままに、共通レイヤーの更新によってOSのみを入れ替えることができるMirageが最適だ。システム管理者は、Mirageサーバ側で管理されたWindows 7イメージを管理対象のWindows XP端末にストリーミング配信する。利用者は、Windows 7イメージの配信中もWindows XPでの作業を続けられるため、ダウンタイムもビジネスに対するインパクトも最小限に抑えることができる。
Windows 7イメージのダウンロード完了後は、ユーザーがクライアントPCを再起動するだけで自動的にOSがWindows 7に入れ替わる。もちろん、ユーザーデータやプロファイルは維持され、ドメインへの参加も自動的に完了する。また、Windows 7を適用する前のWindows XPイメージが自動的にMirageサーバにバックアップされる機能も、システム管理者にとっては心強い。万が一、OSの移行がうまくいかなかったとしても、OSが切り替わる前のWinodws XPの状態に、すぐに戻すことができる。このリカバリ手段を保険として、Windows 7へのマイグレーションを進めていくことができる。ロールバック手段が提供されることは、この類の移行ツールにはないユニークな機能だ。
新しいハードウェアへの移行
もう1つの移行方法として、利用中のWindows XP端末からユーザーのプロファイルとデータを自動的に取得して新しいWindows 7端末に移行する機能がある。
この方法では、新規のPCに対してOSやアプリケーションが統一された共通のイメージを適用でき、またWindows XPで利用していたユーザーデータやプロファイルを自動的に移行してドメイン参加も引き継ぐ。これによって、ユーザーの利用開始までの時間を大幅に短縮する。システム管理者は、1つの管理コンソールから一度に数百台のマイグレーションを同時に行うことが可能だ。
また、連載第1回「EUCを再定義する『VMware Horizon Suite』のコンセプトと主要機能」でも述べたが、MirageにはThinAppがバンドルされている。Windows XPからWindows 7へOSの移行はできても、Windows XPで長らく利用してきたアプリケーションがWindows 7上で稼働しない場合には、ThinAppを利用してアプリケーションの移行を実現すればよい。このようにMirageは、OSとアプリケーションの両面で、Windows XPからのマイグレーションを強力に促進することができる。
OS移行後にも価値を提供
Mirageが単なる移行ツールではなく、EUCの中核を担う製品であることは移行後のクライアントPCの運用で体感できる。多くの場合、サーバのバックアップは計画的に取得され運用されているが、クライアントPCのバックアップは管理されていない。
Mirageでは、1つの管理コンソールから全ての物理PCを管理できる。物理PCが複数拠点に分散していてもリモートでの管理が可能だ。これまで物理PCの管理に苦労したIT部門にとって、遠隔地の端末も含めて共通の環境へ同時にアップグレードできることはメリットである。
サーバと継続して同期する場合、システム管理者が懸念するのはネットワークへの負荷である。Mirageでは、過去の自身のファイルを対象にした重複排除のみならず、同じMirageサーバの管理下にいる全てのクライアントPCとの重複排除も行うため、WANの帯域を最適に保てる。
一度サーバに集約した上で重複排除をするソリューションが多い中、MirageはMirageクライアントによって、サーバにアップロードする前に重複排除し、既にサーバに同じファイルがある場合は、アップロード自体を行わないため、ネットワークへの負荷を軽減できる。
さらに、エンドユーザーも多くのメリットを享受できる。誤ってファイルを上書きしたり、削除したことは誰もが経験していると思うが、Mirageでは、Mirageサーバにバックアップされているデータをエンドユーザー自身がファイルレベルで復旧できる。つまり、クライアントPCに障害が発生しても、例えば1時間前の環境をすぐに別の端末に復旧できるのである。
Mirageは単なるOS移行ツールとは異なり、移行後も継続的にクライアントPCを管理・保護することができるため、移行から運用に至るまで大きな価値を提供するソリューションだ。今まで、物理PCを管理したくても管理できなかったIT部門にとっては、Windows XPからのマイグレーションを機会に、2014年を“PC管理元年”にしてはどうだろうか。
次回は、ファイルやアプリケーションをシームレスかつ安全に共有する「VMware Horizon Workspace」を紹介する。
川本政文(かわもと まさふみ)
双日システムズ
岐阜県出身。東京農工大学工学部生命工学科卒業後、ITの世界へ。
多くのアプリケーション開発に従事した後、サーバ仮想化からストレージ仮想化を経て、「VMware ThinApp」との出会いによりEUC分野で仮想化の匠を目指す。現在は全国各地を飛び回り、VMware Horizon SuiteやThinApp、EUCについて熱い講演を繰り広げる。
BYODを駆使してワークライフバランスを追求する、一児のパパ。
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