ゲーム向けだけではない可能性に注目
徹底レビュー:異例の前評判の高さ 仮想現実ヘッドセット「Oculus Rift」から目が離せない理由
ゲーム業界で仮想現実ヘッドセットへの注目が高まっている。その中心にいるのは米Oculus VR。同社の「Oculus Rift」はITに何をもたらすのか。新製品を検証した。
ゲーム業界において米Oculus VR(以下、Oculus)のバーチャルリアリティ(VR:仮想現実)ヘッドセット「Oculus Rift」ほど心をくすぐるものはないだろう。米Kickstarterの夢だったOculus Riftは米Facebookに買収され、開発者、ライター、ゲーマーらを魅了している。この可能性を秘めた製品は、テクノロジーがきれいに詰まった単なる箱ではなく、ビデオゲームのまったく新しいメディアが収められている。FacebookはOculus Riftの将来性に大規模な投資をしており、Oculus Riftは今後数年のうちにさまざまな文化に影響を及ぼすかもしれない。
しかし、まずは動かなければ意味がない。Oculus Riftはまだ一般販売されていないが、2012年に初期バージョンが登場して以来、その勢いはとどまる気配がない。最初はインパクトがあるもののゲームをプレイすると気分が悪くなる黒い箱だった。だが、薄くて高スペックで高解像度の没入型マシンへと進化を遂げている。その間に、バーチャルリアリティはゲーム業界の一大ムーブメントとなり、Oculus Riftはその一端を担った。今やインディーズの個人スタジオからソニーのような大企業までがVR市場に参入している。VRは現実のものになりつつある。
最新版「Oculus Rift DK2」登場
Oculus Riftの現在の最新バージョンは「Development Kit 2」(以下、Oculus Rift DK2)である。2014年3月後半に発表されたOculus Rift DK2は、コンシューマーモデルの基盤となる要素を数多く搭載しているといわれている。コンシューマーモデルの出荷は2014年7月を予定しているが、350ドルで予約注文が可能だ。米TechTargetは2014年4月中旬に開催されたイベント「PAX East」で最新のOculus Riftのハンズオンを体験し、Oculusが進んでいる方向が正しいという確信を強めた。
Oculus Rift DK2はOculusが2014年初頭に発表したプロトタイプ「Crystal Cove」で導入した全ての技術改良を洗練させたにすぎないというのが一般的な見方だ。確かに、最初のHDプロトタイプほどの大きな躍進はない。しかしそれでも問題はない。Crystal Coveでは既に処理能力が向上してモーションブラーを軽減し、頭部の位置追跡範囲が拡大されていた。
技術的な言葉を避けて説明するなら、Oculus Rift DK2では首を素早く頻繁に振っても気分が悪くなることはない。また、キット前面に搭載されたLEDを追跡するカメラと、それに連携する専用の外部カメラのおかげで、より広い角度を見渡すことができるようになった。
この2点の改良はどちらも非常に重要だ。Oculus Rift DK2を装着したところ、動きによって気分が悪くなる(モーションシックネスの)心配はほとんどなく、3D空間で首を前後に動かすこともできた。さまざまな方向に首を動かしても、極端なジャダー(ブレ)や画質低下は感じなかった。また、高解像度ディスプレー(片目960×1080ピクセル)を搭載していることもあり、頭を打たれて周囲がぼやけたときの感じとは異なり、仮想世界をのぞき込んでいる気分を味わえた。プレーヤーが自由に首を動かせるようになったことで、VRゲーム開発者もゲームを開発しやすくなるに違いない。
つまり、Oculus Rift DK2を装着しているとき、バーチャルリアリティの中での首の動きが現実世界のそれに近づいたといえる。ただし現実世界での動きと完全に一致するまでにはまだ時間がかかるだろう。ゲームのプレイ中、激しい動きをするとこのズレが気になるが、このズレもかなり解消されている。Oculus Riftが目指すべき目標は装着感をなくすことである。Oculus Rift DK2によってOculusは以前よりもその目標に近づいている。
Oculus Rift DK2の新機能や改善点は外見的なものか、開発者向けのものだ。例えば、モーショントラッキングカメラと連動するセンサーが前面のプラスチック製カバーの下に隠れるようになった。また、オーディオジャックとUSBポートもキットに搭載された。対応のPCとOculus Riftやケーブル類を接続するための小さなコントロールボックスはなくなり、代わりに電源ボタンが搭載され、1本のケーブルでHDMIとUSBが機能するようになった。
Oculusの創業者パーマー・ラッキー氏は正式発売までに製品全体の大幅な仕様変更もあり得るとしているものの、すっきりしたのはいいことだ。Oculus Riftが店頭に並ぶ準備は着々と進んでいる。開発者向けの変更としては、Oculus Riftのソフトウェア開発キットの設計を変更し、米Unity Technologiesの「Unity 4」や米Epic Gamesの「Unreal Engine 4」などのゲームエンジンとの統合を最適化したとOculusは発表している。詳しい仕様はOculusのWebサイトを参照されたい。
Oculus Riftについて語れば賛辞は尽きない。Oculus Rift DK2に施された全ての改良をもってしても、一般発売がいまだに延期されているのには理由がある。その1つとして、モーショントラッキング用のLEDが全てキットの前面に内蔵されていることが挙げられる。この仕様により、完全に後ろを向いたり、外部カメラとの接続を安定した状態で維持することは難しい。そのため、多くのOculus Riftのゲームでは振り返る動作を求められることはめったにない。Oculus Rift DK2ではこの問題をまだ完全には解決できていない。
さらに、Oculus Rift DK2のディスプレーは十分高解像度だが、映像が不鮮明になることがある。キットの他の部分で首の動きに対応していても、この問題の解決にはならない。実際、映像をクリアな状態にするために、装着しているキットの位置を調整し直さなければならないことが何度もあった。大した手間ではないが、長時間使用する場合は煩わしいと感じるだろう。ディスプレーの良い点を挙げると、鮮明な映像がより広い視野で表示されるようになった。Oculusはディスプレーの表面に使用する樹脂を改良したためと説明している。
イベントの中でOculus Rift DK2のゲームが幾つか紹介されたが、どれも技術的な簡易デモの域を出ないと感じた。その中で最も目を引いたのは、Epic Gamesの「Couch Knights」という1対1のマンガ風対戦ゲームだ。2人のプレーヤーがバーチャルなリビングルームでかわいらしい中世風の小さな騎士を戦わせるゲームだが、プレーヤー自身も遠くから騎士たちを操作するデジタルなアバターとして表示される。
Couch Knightsは単純なゲームで面白みは少なかった。だが面白かったのは事実だ。動作はもたつくことなく、操作も乱れなかった。対戦相手が騎士を私のアバターのところに連れてきて、映像内の私のアバターに対して泣き叫んでいるのを見たが、とにかく聞き心地が悪かった。デジタルで描画された自分のアバターの手も気味が悪いほど精巧に再現されていた。バーチャルなリビングルームの中で自分がコントロールしている身体のパーツが頭だけという事実もはっきりした。それで没入感が薄れたが、このゲームはOculus Rift DK2で3D空間を動き回って遊べることを分かりやすく紹介するという目的は果たしていた。数カ月後には、このキットの潜在能力を生かしてより現実に近いVRが実現されるだろう。
それでも公式発表があるまで、今後数カ月はOculus Rift DK2を使うことになる。Oculusはコンシューマーモデルの発売時期や価格について言及していない。Oculusが超えるべきハードルはまだ多い。しかし、Oculus Rift DK2は、Oculus Riftの非常に高い前評判に応える上での次の一歩となるようだ。
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