ゲーム以外の活動にゲームの仕組みを利用する「ゲーミフィケーション」を一部の企業が取り入れ始めている。NTT Data Americas、SAPなどはどう活用しているのか。
従業員に新しいツールやサービス、アプリケーションを習得させることは常に困難が伴う。作業効率を高めること、あるいは単にヘルプデスクで自分たちが扱う件数を減らすことについて、従業員をやる気にさせるのはさらに難しい。最近では、一部の企業がエンタープライズ向けの「ゲーミフィケーション」(ゲーム以外の活動にゲームの仕組みを利用すること)を実験的に導入し始めた。
ゲーミフィケーションはムチの代わりにアメを利用して、表彰、成績ランキング、進捗度グラフ、達成レベル、さらには仮想通貨の利用を通じて事業目標の達成を目指す。この用語ができたのは2002年だが、2010年になって人気が上昇した。多くはエンタープライズ向けのゲーミフィケーションを、マイレージ制度や月間優秀従業員の表彰のようなシンプルなものと捉えているが、適切に実施すれば、ゲーミフィケーションはパワフルなテクニックとなり得る。
「従業員は給料をもらって雇われていれば満足する。ではどうすれば、新しいことに挑戦させ、それまでの働き方を変えさせることができるのか」。米NTT Data Americasのイムラン・サイード最高技術責任者(CTO)はそう問い掛ける。
サイード氏は同社でエンタープライズ向けのソーシャルコラボレーションプラットフォームの立ち上げに関わった。当初利用していた従業員は数えるほどだったが、カルマポイントとバッジを導入したところ、アクティブユーザー数は(従業員7000人のうち)4000人に激増し、さらに増え続けている。
組織はゲームを導入する前にまず、出したい結果とインセンティブについて考える必要があると話すのは、米SAPの研究部門SAP Labsの上級イノベーションストラテジスト、マリオ・ハーガー氏。そうでなければエンタープライズゲーミフィケーションの取り組みは確実に失敗すると指摘する。
同氏はSAPで100以上のゲームを立ち上げてきた。その中には従業員がタイムカードの記録を正確に把握できるようにするものや、出張経費の節約を手助けするものなどがある。
「仕事と遊びは共存できる。そしてその2つを組み合わせれば、さらに良い結果を出すことができる」とハーガー氏。同氏は望ましい行動を表彰する制度としてよりも、全般的な啓発ツールとしてゲームを使おうとしているという。
これはかすかな違いではあるが、後々まで影響を及ぼすこともある。エンタープライズゲーミフィケーションの取り組みがデジタルバッジや表面的な報酬を中心としたものであれば、従業員の側から望む進歩は頭打ちになりかねない。
米Persuasive Gamesの創業パートナー、イアン・ボゴスト氏は話す。「ゲームは単にバッジを獲得したり、スコアを上げたりすることが目的ではない。適切に実施すれば、ゲームのプロセスを通じて会社が目指す目標へと従業員を導ける」
ゲーミフィケーションを否定する人は、職場にゲームが存在する場所はないと考えがちだ。だが、エンタープライズゲーミフィケーションの神髄はゲームではなく心理状態にあると、米ゲーミフィケーションベンダー、Badgevilleを創業したクリス・ダガン氏は解説する。
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