社内SNSの導入により、思い切って社内メール禁止を検討する企業も出てきている。しかし社内SNSにはまだ克服すべき課題がある。
米調査会社Current Analysisのエンタープライズコミュニケーション担当調査ディレクター、ブライアン・リッグス氏によれば、前編「社内SNSとメールを使い分ける海外企業」で紹介した仏Atos Originがメールの代替手段として使用している企業向けソーシャルソフトウェアは、部分的には自家製のソリューションだという。つまり、今日市場で入手できる企業向けSNSソリューションとは若干異なるということだ。「メールゼロポリシーを成功させるためには、社内コラボレーションの場を1つに集約し、インスタントメッセージング(IM)やメールなど各種のアプリケーション間の切り替えが不要なオールインワンのメッセージングインタフェースを用意することが鍵になるだろう」とリッグス氏は指摘している。
企業向けSNSのベンダーである米SocialTextのCEO、ユージーン・リー氏は、メールにもソーシャルコラボレーションソリューションにもそれぞれビジネスコミュニケーションにおける役割があると考えている。そしてSocialTextのサービスは、多くの企業が慣れ親しんだプラットフォーム、つまりイントラネットの付属品として使用できるという。
「われわれは顧客企業のイントラネットを静的ではなくソーシャルなものにするために協力して取り組みを進めている。このアプローチにより、従業員はイントラネットを企業文書のリポジトリ以外の用途にも使用できるようになり、業務にも活用するようになるだろう。イントラネット上の情報やデータは、人事部ではなく一般社員が提供するものが主となるべきだ」とリー氏。
「社内SNSのプラットフォームには、メールに含まれる各種の情報を統合する他、コラボレーションに必須の持続的な対話を可能にするIMのような機能を統合する必要があるだろう。社内SNSをメールに取って代わるコミュニケーション手段としたいのであればなおさらだ」とForresterのデューイング氏は指摘する。同氏は社内のビジネスコミュニケーションに適したモデルとしてSalesforceを挙げている。
「データと対話の両方を1カ所にまとめることが重要だ」と同氏。
「メールゼロ化は立派な目標かもしれないし、ソーシャルメディアコラボレーションは企業に大きな成果をもたらす可能性もあるが、社内SNSにはまだ克服すべき課題がある」とラザー氏は言う。
同氏によると、企業は依然として社内SNS実装の投資対効果(ROI)をどう測るべきかを決められず、社内SNSによって「コストをどれだけ削減できたか」や「プロジェクトの実施を前年比でどれだけ改善できたか」の測定に苦心している。「それよりも企業は社内SNS上での活動を追跡し、従業員が社内SNSからどのような価値を引き出しているのかを調査すべきだ」と同氏は言う。
「コラボレーションの改善の度合いは数値では測りづらい。企業向けSNSプラットフォームの有用性はもっと主観的に測定されるべきものだ。今後、企業がソーシャルツールを採用し、そのメリットの測定を始める中で各社がどのような難題に直面することになるのかを興味深く見守りたい」と同氏。
またCurrent Analysisのリッグス氏によれば、Atosのような積極的なメール禁止ポリシーは経営陣がその方針を支持して初めてうまくいくものだという。つまり組織のトップが自らそのポリシーを採用し、推進する必要があるということだ。
「幹部が自分のチーム内でソーシャルメディアの使用を積極的に奨励し、皆に同じようにソーシャルメディアを使わせる必要がある。例えば50人のチームがあって、そのうち半数だけがSNSを活発に使用し、残りの人たちはそうでもなかったとする。そのような状態ではプロジェクトの導入自体が危機に陥りかねない。どのようなプロジェクトにおいてもコミュニケーションは極めて重大だからだ」と同氏。
「メールとは異なり、社内SNSは多くの従業員にとってはまだ非常に新しい存在だ。メールの使い方は誰でも知っているが、社内SNSの使い方については相当な社員教育が必要だろう。誰もが効率的なコミュニケーションを図れるよう、企業向けSNSの活用法を教える必要がある」とさらに同氏は続けている。
リッグス氏によれば、メールなど各種のメッセージングツールを1つのインタフェースに集約できるプラットフォームを開発することで、ベンダーはこの問題を解消できるかもしれないという。「ソーシャルソフトウェアは今日のビジネスコミュニケーションが抱えるメール過負荷の問題を解消する集約ポイントになるのではないかと、私は大いに期待している」と同氏は語っている。
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