ソーシャルメディアに飛びつくCIOと冷ややかな若手社員企業文化の育成が重要に

企業におけるソーシャルメディアの利用に関して、若手社員とエグゼクティブの間でギャップが広がっている。ギャップを埋めて新しい企業文化を育成するため、エグゼクティブは意識の変革が必要だ。

2012年11月09日 08時00分 公開
[Karen Goulart,TechTarget]

 ほんの数年前、エンタープライズソーシャルメディアには懐疑的な声が溢れていた。もちろん、ソーシャルメディアを利用して顧客とコミュニケーションを図るという面では理解されていたが、企業内部でこうしたテクノロジーはどのような位置にあっただろう? 今日、YammerやJive、あるいはMicrosoftIBMの製品、社内開発されたイントラネットなど、ソーシャルメディアを利用していない企業を見つけるのは難しい(参考記事:MicrosoftのYammer買収は何を意味するの)。

 今問題なのは、それらのツールがコラボレーションやビジネスの透明性などに、どれだけ貢献しているかということだ。コンサルティング・監査サービスを提供する英Deloitteが最近行った企業文化に関する調査によると、経営者と従業員とでは、全く正反対の見方をしていることが分かる。例えば、米国企業の1000人の従業員と300人のエグゼクティブを対象に実施した今回の調査では、エグゼクティブの45%がソーシャルメディアは職場環境にポジティブな影響を与えていると回答したが、同じように考える従業員は27%にとどまった。

 それは精密機器サプライヤ、米Methods Machine ToolsのITディレクターであるデビッド・パドヴァ氏が直接目撃した問題の1つでもある。同社ではソーシャルメディアを従業員間で利用するとともに、顧客とのやりとりにも活用している。だが古い従業員たちは、仕事でソーシャルメディアを利用することに全く興味を示さないという。しかし、ソーシャルメディアを通じて顧客を囲い込むメリットを理解するようになると、徐々にそうした見方を変えるようだ。それでも、彼らがすぐさまブログに飛びつき、他の従業員とインスタントメッセージング(IM)でコミュニケーションを取ることは期待できそうにない。「全ては業績次第」とパドヴァ氏は語る。

 「他のあらゆる技術と同様、そこに競争的な優位性を見いだせるかだ」と語るのは、米調査会社Forrester Researchのアナリスト、TJ・カイト氏である。「従業員の行動を観察して、彼らがそういうことを強く望んでいると考え、『うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれないが、取りあえず始めてみよう』と目をつぶって決断するだろう」

 「ほとんどの場合、こうしたアプローチは失敗に終わる」とカイト氏はいう。第1に、ソーシャルテクノロジーの中に隠れている機能の多くは、他でも提供されている。電子メールやチャットによるコミュニケーションで十分と思っている従業員は、わざわざ他の新しいツールを試さないだろう。新しいツールが従業員のワークフローに統合されていなければ、なおさらだ。ソーシャルプロファイルやドキュメントの共有、あるいは問題解決のために社内の専門家を見つける仕組みがあれば役立つ。しかし、「そうした機能がビジネスプロセスに自然に連結していなければ、誰からも振り向かれることはないだろう」とカイト氏。エンタープライズソーシャルメディアの導入はチェンジマネジメント問題の1つなのだが、多くの会社がそうは見ていない。

 「1つの技術に期待し、それで何かできると思いながら、実はその技術を何も理解していない」とカイト氏は語る。「従業員は文化を変え、CIOなどのエグゼクティブは方針を設定し、中間管理職は行動様式を変えるためのインセンティブを用意し、実行しなければならない」

新世代労働者と企業文化

 エンタープライズソーシャルメディアに関してパドヴァ氏が感じたことは、何もMethods Machine Tools特有のものではない。ソーシャルメディアに対する社内の異なる反応は、米Stellium Communicationsの社長で、世代の違いによる行動や世代間の関係についての専門家、ジェシー・ニューバーン氏にとっては、なじみの問題だ。同社は、企業が社会変革に適応するための手助けをしている。

 「企業のリーダーは、コミュニケーションの取り方の違いによる世代間のギャップを埋めることに長けていなければならない」とニューバーン氏は指摘する。企業文化がこれまでに増して重要になってきた今日において、世代間の断絶が目立ってきたからだ。「ミレニアル世代」と呼ばれる20代半ばから30代前半の労働者たちは、2013年の終わりまでに米国の全労働人口の過半数に達するとみられている。

 自分の庭の芝生を大切にするベビーブーム世代や、自分のスキル向上にしか興味を示さないジェネレーションXと異なり、ミレニアル世代は対等で平等な職場環境を求める。「企業文化は突如、異なる意味を持つようになった」とニューバーン氏は指摘する。「ミレニアル世代の従業員は、自分たちの成長と能力開発をサポートしてくれる文化的特性を選び、よりセキュリティが高い専門的な仕事にしか就きたがらない。そうした中にあって、企業文化はこれまで以上に重要性を増している。そのことについて、多くの人はあまり気に掛けていないようだ」

エンタープライズソーシャルメディアを有効活用

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