混在環境はもうリセット、Electronic Artsが取り組む「標準化ゲーム」とは単一ベンダー製品でシステムを統合

業務にマッチしなくなったERPをリセットするため、ゲーム会社のElectronic Artsがアプリケーションやミドルウェアなどの環境を単一ベンダーの製品に統合した。それはどのようなゲームだったのだろうか?

2012年11月05日 08時00分 公開
[Lena J. Weiner,TechTarget]

 米Electronic Arts(EA)のウデシュ・ナイッカー氏は、同社がITインフラを単一のベンダーに統合すると決断したときの臨界点を覚えている。

 米カリフォルニア州レッドウッドショアーズに本社を置く多国籍ゲーム会社のエンタープライズアプリケーション担当上級ディレクター、ナイッカー氏が問題を認識したのは月曜日の朝だった。EAの英国オフィスが突然、米国本社に何の連絡もなくリポーティングソフトウェアを変更したのだ。

 「金曜日にダウンストリームシステムがダウンし、月曜日の朝リポートツールを実行すると、それが判明した。非常に不愉快な発見であり、さまざまなところへ波及していった」と同氏は眉をしかめた。

 ナイッカー氏と彼の同僚たちは、そうした状況がいつまでも続かないことは分かっていた。会社の成長とともに、システム環境を次のレベルに移行すべき時期が来ていたのだ。同氏は2010年5月、ビジネスプロセスの標準化が必要と考え、それぞれのオフィスを相互接続して、同一のツールを導入する決断を下した。

 EAでは、ハードウェア、ソフトウェアを含め、全てをOracle環境に統一することで、多くの問題を最終的に解決することができた。

 オンラインゲームに興味がある読者であれば、EAをよく知っているだろう。この会社は、「Need for Speed」や「Madden NFL」、そして人気のFIFAシリーズなどのゲームで有名だ。オフィスはスイスのジュネーブ、米フロリダ州オーランド、シンガポールなど世界中に広がっており、同社もまた、多くの巨大多国籍企業が頭を悩ませる標準化の問題に直面していた。

 ナイッカー氏がEAに入社した4年前、レッドウッドショアーズのオフィスには「Oracle E-Business Suite 11i」が導入されていたが、他のオフィスは違った。

 「各地のオフィスは、それぞれ独自のソフトウェアを使って個別にデータを処理していた」とナイッカー氏は振り返る。そのため、ばらばらのビジネスプロセスや不正確なリポーティングの中に重要な事実や数字が散乱し、それらを基に正しい意思決定を下すことは不可能だった。その結果、次第に標準化の必要性が認識されるようになった。

 そうした中、リポーティングの機能不全が発生したのだ。しかし、その事件だけでなく、当時ゲーム業界は大きく変化しつつある状況で、同社としても適切なツールを導入し、ビジネスモデルを最新のものに維持する必要があった。

 「ゲーム産業はパッケージ商品からサービスベースモデルへと移行しつつあった。ゲーマーたちはゲームをオンラインで楽しむようになったのだ。現在、当社の売り上げの30%はデジタルによるものだ。デジタルゲーム向けの収益認識機能である“デジタルツーキャッシュ”(Digital To Cash)など、われわれは一定の機能を実現しなければならなかった」

 ナイッカー氏は、当時の社内の雰囲気をこう話す。「会社はさまざまな改革を進めており、ビジネステクノロジーの統合も必要だった。そうした背景が、単一のグローバルシステムへ向かう決断を後押しした」

システムをつなげる「統合化工場」

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