徹底入門:財務諸表分析(2)
四季報だけではダメ? 財務諸表分析で知っておきたい情報ソースの選び方と使い方
企業の財務データが書かれている財務諸表を使えば企業のさまざまな姿を分析できる。本連載では競合分析、転職など用途別に財務諸表の分析方法を解説する。第2回は財務分析の実際について。
ビジネスパーソンの新たな三種の神器と呼ばれる「英語」「会計」「IT」。特に会計はグローバル経済が発達した現代において、必須スキルと注目されています。本連載の第1回「今から役立つ『財務諸表』の基礎と活用法」では、財務諸表読み取りの基礎を説明しました。連載第2回は「財務分析の実際」をテーマに、実際に分析を行ううえで、どのような情報ソースを使い、どのように利用していくのかを解説しましょう。
重要な情報ソースの選択
分析を行うに当たり、情報ソースを適切に選択することは非常に重要です。情報ソースによってデータの品質や特徴が異なるためです。
財務分析に使う情報ソースには「企業自身が作成するもの」と「企業外部で作成するもの」に分かれます。
企業自身が作成するものとして、以下のものがあります。
- 有価証券報告書
- 決算短信
- 決算公告
- アニュアルレポート
企業外部で作成するものとして以下の情報ソースがあります。
- 『会社四季報』『日経会社情報』(データ、出版物)
- 帝国データバンク企業情報(データ)
ここでは企業自身が作成するものについて、その特徴や違いを見ていきましょう。
有価証券報告書とは
有価証券報告書とは、有価証券(株式)を発行する企業が自社の情報を開示(ディスクロージャー)するために、事業年度の終了した日から3カ月以内に内閣総理大臣に提出する報告書です。「有報(ゆうほう)」と省略して呼ぶこともあります。
かつては紙媒体での入手が一般的でしたが、現在はEDINET(Electronic Disclosure for Investors’ NETwork、 金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)という仕組みが整備されており、誰でもインターネットを通じて無料で各種書類を閲覧することができるようになっています。
有価証券報告書はその情報量が非常に充実しており、公に入手できる資料としては最も多くの情報を得ることができます。また、提出後は財務局による審査が行われ、その品質が担保されていることから分析に使う資料としては最も有用といえます。年に1回作成される「有価証券報告書」と、3カ月に1回作成される「四半期報告書」があり、原則として「連結ベース」(企業グループを一体と考えて、グループ単位で財務諸表を作成する)で作成・開示する必要があります。
決算短信とは
決算短信とは、株式を上場している企業が証券取引所の要請に基づいて決算時に作成する資料です。決算発表のシーズンになると、各社がこの決算短信を基礎資料として決算発表資料を作成・開示します。
決算短信の特徴は「速報性」です。投資家の判断に役立つために、決算日後45日以内に作成することが求められています。有価証券報告書に比べると情報量は少ないですが、有価証券報告書と同様に投資家は年4回の財務データを入手する機会があり(四半期決算短信を含める)、決算データの速報値としてその企業の姿を迅速に理解することができます。決算短信も有価証券報告書と同様に連結ベースで作成します。
決算公告とは
決算公告とは、会社法の要請に基づいて会社が定款に定めた公告方法によって公告する「財務に関わる情報」のことで、おおむね決算日後3カ月後に行われます。かつては日刊新聞に記載されていましたが、今は「電子公告」と呼ばれる方法で電子的に決算情報を公告する企業が増えています。
会社法上の大会社(資本金5億円以上、または負債200億円以上)については「貸借対照表」と「損益計算書」を、それ以外の会社については「貸借対照表」が公告の対象になります。有価証券報告書や決算短信と異なり、非上場の会社も対象とされているため、上場企業に比べてデータを入手しにくい会社の貴重な情報源といえます。
アニュアルレポートとは
アニュアルレポートとは、企業が株主をはじめとするステークホルダー(利害関係者)と効果的なコミュニケーションを取ることを目的として作成・開示する書類です。法的に作成義務はありませんが、IR活動に力を入れている会社は積極的に作成しています。国内外の投資家を意識して「和文」「英文」の両方で作成されることが多いのが特徴です。
アニュアルレポートは投資家とのコミュニケーションを重視していることもあり、情報量も充実して視覚的に分かりやすく構成されています。財務データはとかく味気ない内容になりがちですが、アニュアルレポートは一種の読み物としても興味深く読むことができるでしょう。
財務データのどこを見るのか
このような財務データのうち、分析に使う情報ソースとして有用なものは有価証券報告書や決算短信です。
例えば決算短信では、「サマリー情報」と呼ばれる2ページほどの書式が冒頭ページに記載されています。定型書式で作成されているため非常に読み取りやすく、短い時間でその会社の財務データを把握することができます。
ここで、実際の決算短信の数字を見てみましょう。例として取り上げるのはアイティメディア株式会社の2013年度(平成26年3月期)第3四半期連結決算短信です(リンク《PDF》)。
「連結経営成績」「連結財政状態」「配当の状況」「連結業績予想」というタイトルが目に入ります。
連結経営成績では、「売上高」「営業利益」「経常利益」といった財務データを2期比較で表示し、その会社の1年間(または3カ月間)の業績を一目で把握できるようになっています。
連結財政状態では、「総資産」「純資産」「自己資本比率」といった財務データを2期比較で表示し、会社の規模や株主の出資財産の構成が一目で分かります。
配当の状況では、年間を通して株主への配当状況を表示し、株主への還元状況を定量的に示しています。
連結業績予想では、通年にわたる業績予想を定期的に表示します。業績予想に変化があれば、業績予想の修正発表が行われて数値が更新されます。
サマリー情報の数字をかいつまんで見るだけでも、会社がここ2、3年の間に順調に業績を上げて成長してきているのか? 健全な財務状態を維持できているのか? 株主に高い還元を行っているか? 近い将来の予測をどのように行っているか? といったデータを読み取ることができ、分析の基礎データとして活用することができるのです。
サマリー情報の後ろに続く「添付資料」では、「定性的情報」として以下の情報が記載されています。
- 連結決算に関する定性的情報
- サマリー情報(注記事項)に関する事項
- 連結財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)および注記事項
定性的情報では、サマリー情報に記載された数値をより詳細に説明するための文章記述があります。投資家をはじめとする財務諸表の読み手がより詳細な情報を知りたいときに、これらの定性的情報を読み取ってさまざまな判断材料にします。
連結財務諸表に記載されている情報は、数値を使った財務分析の基礎データになります。
このようなデータを利用して、いよいよ具体的な分析作業に入っていきます。次回その詳細を説明しましょう。
原 幹(はら かん)
株式会社クレタ・アソシエイツ 代表取締役
公認会計士・公認情報システム監査人(CISA)
大手監査法人にて会計監査や連結会計業務のコンサルティングに従事。ITコンサルティング会社を経て、2007年に会計/ITコンサルティング会社のクレタ・アソシエイツを設立。「経営に貢献するITとは?」というテーマをそのキャリアの中で一貫して追求し、公認会計士としての専門的知識と会計/IT領域の豊富な経験を生かしたコンサルティングに多数従事する。
著書に「図解IFRSのきほんがわかる本」をはじめ、翻訳書やメディア連載実績多数。
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