モバイルテクノロジーによる品質改善(QI)
スマホとタブレットが医療の現場をカイゼンしつつある
医療現場におけるデータの利活用は重要な課題の1つであり、モバイルテクノロジーは医療の品質改善の面からも評価されるべきだ。
モバイルテクノロジーによる変革に多くの医療機関が行き詰っている。議論の中心となるのは「医師が医療行為を行うとき、モバイルテクノロジーが情報の利用方法をどう変えるか」「モバイルテクノロジーによって患者自身がライフスタイルの選択肢をより適切に管理できるようになることを通じて、患者の医療への理解向上をどう図っていくか」の2点だ。本稿では、医療現場における品質とパフォーマンス向上という観点から、モバイル分野の大きな変化について説明する。
医療における品質改善の必要性
総合病院から単科の診療所まで、ほとんど全ての医療機関が品質改善(QI)に取り組んでいる。その主な内容は患者から見た診療の効率と価値の改善だ。医療機関が置かれている環境は常に変化し続けているが、そうした中でも常に医療の品質改善を妨げているのは以下のような課題だ。
- 外部の課題(規制の変更や資金面の問題など)
- 内部の課題(人事管理、物理的な設計上の制約、非効率な作業工程、コミュニケーション不足など)
- 患者のニーズの変化(高齢化など、新たな状況への順応に起因するもの)
- テクノロジー(診療方法に変化をもたらし人命救助に役立つが、コストが高い)
これらの課題に取り組んでいないか、対応できない医療機関は、競争面で不利な立場を強いられる。また、法律/財政/患者の安全の面でもリスクを負うことになる。
品質改善への取り組み
適切な取り組みを行っている医療機関の多くは、確立されたQIの方法を採用している。現在、医療の品質改善への取り組みには以下のようなものがある。
- リーン(Lean:スリム化)の原則
- シックスシグマ(ミスの発生確率を低くする活動)
- 総合的な品質管理
- 制約管理
- その他(リーンとシックスシグマを統合したリーンシックスシグマなど)
これらのフレームワークの指針/手段/手法は異なる。だが、複雑な組織で品質とパフォーマンスの改善を目的とした体系的な取り組みを行う点は同じだ。
品質改善とデータの必要性
医療機関が品質に関する取り組みを適切に行うために、必ず必要になるものがある。それはビジネスと医療活動の内情を把握する手掛かりとなる情報だ。現在の医療におけるQIでは、正確かつタイムリーな情報をすぐ入手できることが求められる。これは品質/パフォーマンス改善の取り組みにおけるほぼ全ての段階で必要なことだ。データ分析によって、特定の品質改善の取り組みに使用できる実用的な情報を抽出し、それを品質改善チームが使えるようになる。この情報は、チームが改善点の優先順位を把握して取り組みの効果を評価するのに役立つ。
医療におけるQIを実現する上でデータ分析は欠かせない。そしてモバイルテクノロジーを使うことで、医療QIチームによる活動効果をさらに高めることが可能になる。チームは分析結果とデータをより効果的かつ効率的に活用できるようになる。モバイルテクノロジーは、QIチームにさまざまなメリットをもたらすが、本稿では特に、データ入力/監査機能の強化、データリポートと分析の効率化について取り上げたい。
データ入力と監査機能の強化
品質監査や時間動作研究の一環として、あるいはパフォーマンス把握に必要だけど電子的に入手不可能なデータを取得するために、手作業でデータを収集することがある。だが、そうした手動によるデータ収集は、往々にしてQI活動の妨げになる。QIデータのフォームに手動でデータを入力したり、フォームに入力されたデータを分析するためにコンピュータに移行するような作業は、誰もやりたがらない。そのため、「監査やその他のデータ収集が定期的に行われない」「監査やその他のデータのフォームが故意にせよ偶然にせよ紛失する」「データがコンピュータに入力されない」などのリスクが生じ、それが原因で有効な分析を行えなくなる可能性がある。
モバイルテクノロジーは、データの手動収集に関連する多くの問題に対処できる。情報の完全性を検査して入力された情報を検証する電子フォームを使用すれば、監査情報をオンラインで入力できるようになる。データ管理システムにデータを瞬時に保存できるというメリットもある。そのため、スマートフォンやタブレットで入力されたデータをすぐ分析することが可能だ。
筆者は、ごく単純なモバイルベースのデータ収集を行うときには、シンプルなクラウドベースのスプレッドシート(米Googleの「Google Drive」のスプレッドシートなど)を使用している。また、複雑なデータを収集したり、クラウドにデータを保存したりするときには、専用のデータ収集アプリ(米Spatial Networksの「Fulcrum」など)や独自に開発したアプリが役立つ場合がある。
データリポートと分析の効率化
医療業界はめまぐるしく変化している。そのため、QIチームメンバーと関係者が医療現場の作業工程を改善しようという際には、過去/現在/将来のパフォーマンス基準と指標をその場で把握している必要がある。モバイルテクノロジーを使用すれば、QIチームのメンバーと関係者は、必要なデータにアクセスして状況を正確に判断できる。例えば、現在のプロセスのパフォーマンスを確認したり、次に対応すべき問題を判断したりするときにモバイルテクノロジーが役立つ。分析システムやビジネスインテリジェンスシステムを採用すれば、パフォーマンスの問題が発生したりパフォーマンスの限界を超えたときに、電子メールやテキストメッセージなどのメッセージを使用して、QIチームと関係者に素早く通知できる。この機能により、QIチームはすぐ解決策を講じることが可能になる。
筆者がお勧めするモバイルテクノロジーを使用した分析方法を紹介しよう。品質やパフォーマンスの改善に取り組んでいる現場を視察するときには統計的工程管理図表やその他の分析結果をタブレットで確認できるようにしたい。そうすれば、実際の作業現場とその作業工程を見ながら、パフォーマンスデータを確認して検証することができる。
医療の品質改善は、大半の医療機関にとって重要度の高い戦略的な目標である。その目標達成を託された専門家は、効率性に優れた手段と最新の情報を準備しておく必要がある。モバイルテクノロジーは、医療の品質改善を目的とした対策(リーンの原則やシックスシグマなど)が真価を発揮すること可能にする。臨床の医療従事者に重要な情報を提供したり、患者の医療への理解向上を図ったりすることで、医療の提供を促進することもできる。それから、QI対策の実現や改善にも役立つ頼もしい存在だ。
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