優秀な技術者を採用するための5つのヒント
Python生みの親を12カ月かけて口説き落としたDropbox CEOの“採用哲学”
米Dropboxの創業者、ドリュー・ヒューストン氏の経験を基に、優秀な人材を採用する方法、エンジニアが望むこと、そして同社のビジネス向けサービス「Dropbox for Business」について紹介する。
2007年、当時はまだ米マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生だったDropbox創業者のドリュー・ヒューストン氏は、バスでボストンからニューヨークに向かう途中、小さな問題に直面した。道中で作業するためのファイルを保存したフラッシュドライブを、自宅に忘れてきてしまったのである。若かりしヒューストン氏は、自分に対して腹を立て、失望し、自責の念に駆られた。その後、同じようなことを繰り返さないようにする方法を考え出すと強く誓った。そして、Dropboxという企業が誕生した。
Dropboxは、米サンフランシスコを拠点とし、オンラインでのファイル同期を専門とした新興企業。それが今では2億人のユーザーと500人の従業員を抱える企業に成長した。同社の最高経営責任者(CEO)であるヒューストン氏は現在、これまでと全く異なる問題の解決に取り組んでいる。トップレベルの人材採用に関する問題だ。
ヒューストン氏は2014年1月下旬、米マサチューセッツ州ケンブリッジにある母校に出向いた。そこで、MIT Technology Reviewの編集長、ジェイソン・ポンティン氏と「人材を巡る戦い」と題した対談を行った。
本稿では、この対談を基に人材採用を成功に導くための5つのアイデアを紹介する。
人材採用を成功に導く5つのアイデア
その1:ネットワークを広げる
ヒューストン氏と共同創業者のアラシュ・フェルドシー氏は「人材の高い水準を維持することに奔走している」という。求人や推薦は友人や同僚に委ねるのが同社の方針だ。印象の良い人物のリストを作成しておき、将来の従業員候補として加えていく。また、従業員には人材の紹介を徹底している。「全ての従業員が1、2人の優秀な人材を連れてくれば、比較的容易に規模を拡張できる」とヒューストン氏は語る。
その2:追求者になる
Dropboxは人材採用に関して、攻めの姿勢を貫いている。どこの企業も欲しがる豊富な経験を持つ人材に対しては、特に積極的である。適切な候補者から応募を待つのではなく、自ら優秀な人材を探し求めている。「当社には、採用時に転職活動をしていなかった優秀な人材が多数在籍している」とヒューストン氏は話す。同氏はまた、優秀な人材が興味深いことに取り組んでいるという情報を入手したら、その人材に接触することを推奨した。
その3:ひたむきであれ
トップレベルの人材を採用するには時間がかかる。十分に精査されていない状態で紹介された人材については、まず自分の陣地に招き入れることをヒューストン氏は勧める。
例えば、会社に寄ってもらい会食する機会を設けたり、従業員に紹介したりして、自社事業について“上品に教育”するのだという。また、トップレベルの人材を採用するときにはハードルを高く設定しないことが肝要だとヒューストン氏はいう。同氏はプログラミング言語「Python」の大ファンだ。もちろんPythonの生みの親で、後に米Googleで働くことになったグイド・ヴァンロッサムという人物の存在は知っていた。ヴァンロッサム氏への紹介を求めて、接触することに成功したヒューストン氏は、その後12カ月という歳月をかけて、Dropboxで働くよう同氏を口説き落としたのだ。
その4:「ワールドクラス」を把握する
会社を設立するに当たって、ヒューストン氏は自分の専門外の分野のスキルを持つ人材が必要だった。その結果、「調整の問題」という事象が発生した。例え話で説明しよう。
音楽に詳しくない人から見た場合、誰でも参加可能なステージで演奏するギタリストに才能があるように見えるかもしれない。だが、世界的に有名なギタリストであるジミ・ヘンドリックスの演奏と比較すれば、その差は歴然なはずだ。
つまり、何が優れているかを理解するには、マーケティング担当者にしろ、営業担当者にしろ、カスタマーサービス担当者にしろ、各業務の非常に優秀な仕事振りを理解する必要がある。ここでも、ヒューストン氏はネットワークの活用を推奨している。
その5:実際に自分でやってみる
「『優れたエンジニアはどのように探したらよいのか』という質問に対しては『コーディングの方法を学ぶことだ』と答えるのがよいだろう」とヒューストン氏は説明する。その職種の人が行う作業を実際にやってみると、感謝の気持ちと理解が深まるという。
エンジニアが望むこと
「エンジニアという職業は千差万別だ。グローバル企業のGoogleで会社員として働く形態もあれば、ガレージ起業の短命なものもある。また、その中間に位置するケースもある」とヒューストン氏はポンティン氏に話した。どの場所で働く場合も、それぞれ固有の長所と短所がある。だが、同氏によると、優秀なエンジニアは一般的に次の3点を求めるという。
- 重要な問題に取り組むこと
- 難しい問題に取り組んで成長すること
- 尊敬できる人と一緒に働くこと
ビジネス向けDropbox
ヒューストン氏は、ポンティン氏に「Dropbox for Business」を紹介した。2013年末にリリースされたバージョンでは、仕事用と個人用のアカウントを関連付けることが可能になっている。
現在、企業の最高情報責任者(CIO)とIT部門は、「従業員の生産性を向上する」「従業員が好きなツールを使えるようにする」「全てのものの安全を確保する」という厄介な問題で板挟みになっている。「コンシューマライゼーションでは、いずれかを犠牲にせざるを得ない。これまでに全ての条件を満たせた人はいないだろう」とヒューストン氏はいう。だが同氏は、Dropboxがこの状況を変えられると信じている。
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