セキュリティ、可用性への懸念にCEOが答える
クラウド大手がこぞって手を出すコンテナ技術「Docker」、これまでとこれから
DockerのCEOが、同社のコンテナ技術「Docker」と「Amazon Web Services」(AWS)の統合、Dockerの今後の展開について語った。
米Dockerのベン・ゴラブ最高経営責任者(CEO)は、2005年に登場した「Ruby on Rails」以来、最も急速に台頭している技術の1つを統括している。
Dockerはこの19カ月間、クラウドスケールのアプリケーションポータビリティを実現する新しいアプローチのコンテナ技術「Docker」を広めてきた。米Amazon Web Services(Amazon)が2014年11月に開催したカンファレンス「AWS re:Invent 2014」で「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)Container Service」を発表し、これで3大クラウドベンダー全社がDockerのサポート強化を打ち出したことになる。
同カンファレンス後にゴラブ氏に、「Amazon Web Services」(AWS)とDockerの統合や、AWSのEC2 Container Serviceと他社のサービスの違い、Dockerと従来のコンテナ技術の違い、Dockerが今後どのように開発されていくかについて話を聞いた。
――AWSはre:InventでEC2 Container Serviceを発表しました。このサービスと、AWSが従来提供してきた「Elastic Beanstalk」でのDockerとの統合機能や、Googleの「Kubernetes」とはどう違うのですか?
ゴラブ氏 AWSでは、ネイティブDockerインタフェースを大いに活用できるようになり、「Docker Hub」との高度な統合も実現されました。われわれのホステッドサービスであるDocker Hubは、レジストリに加え、5万以上のDockerアプリケーション、言語、フレームワークへのアクセスを提供し、ユーザーはプライベートレジストリやワークフロー機能といったものを利用できます。AWSのインフラでもDockerとの重要な新しい統合がなされており、これまでとの違いは、アベイラビリティゾーンやセキュリティ機能、全種類のインスタンスを利用できるようになったことです。
一方、KubernetesはGoogleが後押しするプロジェクトです。Googleも2014年11月に「Google Container Engine」を発表しました。これは「Google Compute Engine」で利用でき、AWSのEC2 Container Serviceのような機能を提供します。われわれは今回、AWSでネイティブDockerインタフェースが広く利用できるようになり、Docker Hubとの統合が実現されたことを非常にうれしく思っています。
――コンテナは決して新しい技術ではありません。今、なぜDockerは注目を集めているのですか? 何が変わったのですか?
ゴラブ氏 われわれはよく輸送用コンテナに例えます。Docker以前のコンテナは密閉された箱でした。Linux、Solaris、BSD用に優れた隔離技術が開発されていましたが、開発者は利用できず、それらの技術はポータブルではなく、標準インタフェースもありませんでした。こうしたことから、それらの技術のエコシステムもありませんでした。
Docker以前のコンテナは低レベルの技術で、Googleのような企業で使われていました。ですが、彼らは専門のチームと専用のインフラを持っていて、それらのコンテナは主に、開発者よりも運用担当者向けのツールでした。
われわれはクリーンなインタフェースを提供し、Dockerをソースコードのような既存ツールと統合しやすくしています。コード作成並みの手間でコンテナを構築できるようにするためです。Dockerコンテナは任意の2台のサーバ間で移動できるようになっており、これによってそのサーバ間で運用上の互換性が確保されることになります。さらにDockerは、開発者がアプリケーションの全てのレイヤーと依存関係を定義することで、例えば、自分のノートPCで動いているものがステージング環境や本番環境でも動き、クラスタ上でスケーリングされる仕組みになっています。
こうしたことは、作り直しの手間があまり掛からないということも意味します。つまり、アプリケーションにマイナーな変更を加える場合、それまでに自分や他のユーザーが行った作業を全て利用できるのです。
――これまでコンテナは、可用性の高い基幹アプリケーションの実行環境として適しているとは考えられていませんでした。ユーザーはホストOSがダウンした場合、どうやって可用性を確保するのですか? そのためのツールとしてどのようなものがありますか?
ゴラブ氏 ここ数年で、可用性やセキュリティをめぐる問題の多くが大幅に改善されています。Dockerコンテナは低コストで迅速に作成でき、破棄も迅速にできます。人々は従来、高可用性(HA)の実現を厄介な課題と考えていましたが、こうしたDockerコンテナの特徴を生かせば、事情は違ってきます。
つまり、至って簡単に、同じアプリケーションの複数バージョンをさまざまなホストで実行できるのです。われわれがアプリケーション開発者に勧める方法はこうです。各プロセスをそれぞれ固有のDockerコンテナに割り当てるとともに、アプリケーションを移動する、作成する、また破棄するときでさえも、ストレージなどが一貫して機能するように、コンテナ同士が連携する方法を提供するという方法です。
ユーザーはコンテナを仮想マシン(VM)で使えますが、全く新しい方法でコンテナ使うこともできるわけです。全てのアプリケーションがインフラに縛られていた時代にわれわれが感じていた、可用性の実現を阻む多くの懸念を和らげる全く新しい方法です。
HAに類するものについての現在の考え方の多くが作られたのは、アプリケーションが長期にわたって使われ、モノリシック型で、1台のサーバで動作し、そのためにサーバのダウンが心配されていた時代です。そうした既存の考え方と新しい考え方の違いは、NORAD(北米航空宇宙防衛司令部)のネットワークとインターネットの違いに通じるものがあります。前者は極めて強力ですが、もし停止すると、大惨事を招く恐れがあります。これに対し、後者は冗長で、1つの要素が壊れてもユーザーは気付きません。再ルーティングが行われるからです。
Dockerの分散アプリケーションモデルでは、アプリケーションの各コンポーネントはDocker化され、複数のサーバで実行されます。このため、個々のサーバのダウンや個々のディスクの故障などに対する心配は、大幅に軽減されます。確かに、ホストOS上で多くのコンテナを動かしていて、そのOSが停止した場合、それを再起動するまで、コンテナも動きません。しかし、VMにも同じ問題があります。実のところ、VMの方が問題はもっと深刻です。ホスト上で多くのVMが動作し、各VMにはゲストOSが含まれますが、ゲストOSも停止する可能性があり、ゲストOSは、停止する可能性があるハイパーバイザー上で動作し、ハイパーバイザーは、停止する可能性があるホストOS上で動作しているからです。
―――市場にはDockerのセキュリティを懸念する声もあります。Dockerは今後、セキュリティへの取り組みをどのように強化していきますか?
ゴラブ氏 Dockerはセキュリティ回りを大幅に強化してきました。「SELinux」や「AppArmor」のような技術を利用して隔離機能を高めることもできます。また、私は基本的な認識として、われわれがDockerのセキュリティ対策を進めるのに加えて、ユーザーもDockerを1つのレイヤーの中で、つまりDockerをVM内で実行するという対策が取れると考えています。
さらに、われわれはコンテナの署名に関連する一連の機能を提供していきます。これらの機能によってユーザーの安全性が格段に向上します。アプリケーションは小さな要素で構成されていますが、それらの要素が何か、どこから提供されたかをポリシーによって保証し、管理することが可能になるからです。攻撃対象領域を減らすこともできます。
――Dockerはまだ若い会社です。今後数年間でDockerの技術と組織はどのように進化していきますか?
ゴラブ氏 われわれの組織は年初以来3倍に拡大し、優秀な経営幹部も多数加わりました。現在、われわれはDockerプロジェクトに集中し、オーケストレーションのマルチコンテナモデルを適切に実現することに力を注いでいます。また、Dockerコンテナの管理とオーケストレーションに関連するサービスもリリースしていきます。
――大手ベンダーがオープンソースプロジェクトに基づくサービスを提供する中、Dockerは市場での地位をどうやって維持していくのですか?
ゴラブ氏 多くの企業から、「Dockerから欲しいのは、ソフトウェア開発ライフサイクルの管理と、オンプレミスおよびさまざまなパブリッククラウドに分散したコンテナの実行管理を支援する商用ソフトウェアのセットだ」という要望が寄せられており、われわれはこうした声に応えていきます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
9
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
10
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー