VMwareとKVM、導入の決め手は何?
ベアメタル型か否か──KVMをめぐるハイパーバイザー論争
KVMがタイプ1とタイプ2のどちらのハイパーバイザーなのかで議論が割れている。一方で、そもそもハイパーバイザーの導入の決め手は、タイプ論争にないという意見もある。
KVM(Kernel-based Virtual Machine)は不当な評価を受けており、その主な原因はKVMがタイプ1とタイプ2のどちらのハイパーバイザーなのかについての誤解だ──。米IBMのチーフ仮想化アーキテクト、マイケル・デイ氏はそう述べている。
昔からある論争だが、サーバ仮想化ハイパーバイザーのタイプ1とタイプ2の違いが依然として議論を呼んでおり、特にKVMが議論の的になっている。どちらのカテゴリーにもすっきり収まらないからだ。
「人々はKVMのパフォーマンスとセキュリティについて、KVMがタイプ1であるか、タイプ2であるかの認識に基づいて結論を導き出している」とデイ氏は語った。同氏は4月に開催されたLinux Foundation Collaboration Summitで、KVMに関する俗説についてのプレゼンテーションを行った。「IBMの一部の顧客は、KVMがタイプ2のハイパーバイザーとしてホストOS上で動作するため、『高いパフォーマンスを実現しにくい』という認識や『安全性が低い』という悪意ある見方が存在することを知り、これらを引き合いに出している」
昔からある論争
KVMは、Linuxカーネルの仮想化レイヤーだ。他の全てのサーバ仮想化の実装と同じように、KVMには仮想マシン(VM)モニターという要素が含まれる。仮想マシンモニターはワークロードの分離に加え、物理ハードウェアリソースと、アプリケーションに利用される仮想ハードウェアとの変換を行う。
タイプ1とタイプ2のハイパーバイザーの違いは、VMモニターとゲストOSの間で行われる変換の回数にある。タイプ1、つまりベアメタル型のハイパーバイザーでは、変換は1回しか行われない。これに対し、タイプ2のハイパーバイザーでは、ホストOSとVMモニターを介した2段階のプロセスが必要になる。
この2つのタイプの区別は、ロバート・ゴールドバーグ氏とジェラルド・ポペック氏が1974年に発表した論文「Formal Requirements for Virtualizable Third Generation Architectures」(仮想化が可能な第3世代アーキテクチャの正式な要件)に起源をさかのぼることができる。現在、VMware vSphere、Hyper-V、Xenハイパーバイザー(オープンソースとして、また、Citrix Systemsの「XenServer」という製品として提供されている)が、タイプ1のハイパーバイザーと広く考えられている。一方、Mac OS X対応のParallels、VMware Workstation、Oracle VM VirtualBoxなどがタイプ2だというのが一般的な認識だ。
KVMの分類をめぐって混乱や論争が起こっている一因は、KVMが今ではLinuxカーネルの一部となっていることにある。例えば、2009年に、米Enterprise Management Associatesのアナリストだったアンディ・マン氏は、SearchServerVirtualization.comサイトの「Xen vs. KVM:Linux仮想化ハイパーバイザー」という対論企画への寄稿で、こう述べている。「KVMがタイプ1とタイプ2のどちらなのかについては、ほとんど意味論のような込みが入った議論がなされている」
マン氏はこの寄稿で次のように論じている。「Xenは、新しい仮想マシンの作成時も含めて、低レベル(リング0)で動作し、管理される。ゲスト同士はメモリブロック、CPU命令、Linux(時には非特権でも)を共有しないが、KVMはこれらを共有する。このことは、KVMが真のベアメタルハイパーバイザーは影響を受けない、パフォーマンス、遅延、セキュリティ、スケーラビリティ、分離などの問題を抱えていることを意味する」
だが、IBMのデイ氏の見解は異なる。同氏は2つの理由から、KVMはタイプ1のハイパーバイザーの定義に当てはまると考えている。まず、KVMはベアメタル上でカーネルモードとして動作し、ハードウェア仮想化機構を使用する。また、KVMゲストは起動から終了までのほとんどの間、直接実行モードで動作する。これもゴールドバーグ氏が最初に定めたタイプ1のハイパーバイザーの定義だ。
「興味深いことに、ゴールドバーグ氏は後年の論文で、タイプ1とタイプ2を区別しなくなった」とデイ氏は付け加えた。「現在ではこの区別が復活してきている。タイプ1とタイプ2のハイパーバイザーの分類がブログなどで盛んに取り上げられている」
現在のタイプ2ハイパーバイザーは、以前の定義には合致しない。ハードウェアとOSの両方が、定義が作成された当時とは大きく変わっているからだ。
タイプ1とタイプ2のどちらであるかは、導入の決め手ではない
仮想化の専門家は、タイプ1とタイプ2のハイパーバイザーの違いは、製品を検討する上で依然として重要だと話している。
「この違いは、余分な仕事をしないために重要だ」と、米国中西部の大規模大学の仮想化アーキテクト、ボブ・プランカーズ氏は語った。「タイプ2ハイパーバイザーを使うと仕事が増えてしまう。ハイパーバイザーに加えてホストOSもメンテナンスしなければならないからだ。タイプ1ハイパーバイザーでは全てが一体化されており、それらはまとめて管理される」
もっとも、プランカーズ氏が主に使っている仮想化製品は、VMware vSphereだ。vSphereは、仮想化管理やクラウドコンピューティングのための高度な機能に関しては、KVMを含む競合製品の数年先を行っている。
「私にとっては結局のところ、KVMの最大のネックはサポートと互換性だ」とプランカーズ氏。「誰もがVMwareを知っており、VMwareは誰にでも使ってもらえるように全力を挙げている。彼らは、多くのハードウェアをサポートしており、VMwareの仮想化環境は多くのソフトウェアでサポートされている。KVMはそれほど成熟しておらず、サポートしているハードウェアの数がVMwareに及ばないのは間違いない」
IBMのLinux担当ディレクター、ジーン・ステーテン氏は、広報担当者を通じて電子メールで配信した声明で、「顧客からのフィードバックを見ると、ハイパーバイザーがタイプ1であるかタイプ2であるかは導入の判断を左右する問題ではない」と述べた。さらに同氏は次のように付け加えた。「KVMを採用するのは、データセンターの仮想化を本格的に始めつつある顧客にとっては、非常に理にかなった戦略だ。しかし、プロプライエタリなハイパーバイザーの導入を既に進めていた顧客にとっては、KVMへの乗り換えは少し大変かもしれない。全体的なデータセンター戦略に合わせてKVMを導入、展開するのに時間がかかる可能性がある」
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