2008年3月から日本国内での提供が開始された、Oracleの仮想化ソフトウェア「Oracle VM」。本稿ではその実体について、前編・後編の2回に分けて解説する。
IDC Japanが2008年5月に行った調査「国内仮想化サーバ市場動向を発表」によると、調査対象のユーザー企業の約6割が、仮想化サーバの導入目的として「リソースの有効活用によるハードウェアコストの削減」や「運用管理の効率化を伴う保守コストの削減」を挙げているという。
その一方で、ユーザー企業は仮想化サーバの可用性や信頼性に対して、いまだに不安を抱いているとも報告している。こうした不安は、ユーザー企業の検証段階や予算化段階において少なからず影響を及ぼし、仮想化サーバ導入の障壁になっているといえる。
そんな中、Oracle VMには
などの施策により、仮想化サーバの導入を検討しているユーザーの不安を取り除く狙いがある。そしてさらには、Oracle製品ユーザーの囲い込みを進める戦略にも大きく貢献する狙いがあると思われる。
また現時点(2008年7月)では、Oracle VMの準仮想化方式で動作するOSはLinuxのみだが、Oracleは2008年中に準仮想化方式でWindowsを稼働させることができるドライバをリリースする予定だ。これにより、Linuxと同等のオーバーヘッドでWindowsを動作させることが可能になるという。
今後は、Oracle VMとOracle Enterprise Managerの統合による管理機能の充実とともに、仮想化技術とグリッド技術により企業ユーザーを満足させられるレベルの高可用性を提供していくという。
Oracle VMは、いわゆる「ハイパーバイザー型」の仮想化ソフトウェアである。ホストOSを必要とせず、ハードウェア上に仮想化ソフトウェアを直接インストールする。ゲストOSとハードウェアの間にホストOSが介在しないため、オーバヘッドが少ないというメリットがある。
Oracle VM以外で同じ方式を採用する代表的な仮想化ソフトウェアには、以下のものがある。
3つ目のXenはオープンソースの仮想化ソフトウェアだが、Oracle VMのハイパーバイザー部分はこのXenをベースにして作られている。以下に、Oracle VMのハイパーバイザーのアーキテクチャを示す(図1)。
Domain-0と呼ばれるベース部分とDomain-U(もしくはHVM Domain)と呼ばれるゲストOS部分で構成されている点、ゲストOSの環境として完全仮想化と準仮想化が実装されている点など、XenとOracle VMのハイパーバイザー部分の構成に大きな違いはない。
では一体何が違うのかというと、主にI/Oやメモリ、プロセスハンドリングのチューニングを行い、ハイパーバイザー部分の性能を高めているとのことである。こうした部分については、OracleからXenに技術フィードバックを図っているとのことなので、Xenの将来のバージョンではOracle VMと同様の実装になる可能性もある。
なお、本稿執筆時点(2008年7月)でのOracle VMの最新バージョンは2.1.1だが、これに対応するXenのバージョンは3.1.3とのことである。
ハイパーバイザー部分以外での構成の違いについては、次項にてOracle VMの全体像を説明する中で併せて確認していく。
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