2008年の仮想化動向を読む──競争激化と製品拡充でさらなる活性化へコスト削減にグリーンITに

2008年、データセンターを占うキーワードは仮想化だろう。MicrosoftのHyper-VやXenSourceを買収したCitrixの動きなど、仮想化の動向に注目だ。

2008年01月07日 04時45分 公開
[James M. Connolly,TechTarget]

 2008年の中堅企業のデータセンターを占うキーワードは、仮想化だろう。仮想化ソフトウェアベンダーが引き続きサーバ仮想化に重点を置くほか、中堅企業向けブレードサーバ、仮想マシンベースのリモートサービス、仮想デスクトップ、グリーンコンピューティングといった重要な技術分野で仮想化に基づく先進的な取り組みが進む見通しだ。

 中堅企業のデータセンターマネジャーは、こうした動きがもたらすハードウェアコストや電力コストの節減、管理の容易化、そして恐らく最も重要な、新しいディザスタリカバリソリューションの恩恵を受けることになる。

 「サーバ仮想化はここ数年支持を広げてきたが、いよいよ本格的な普及が進みつつあると思う。競争が活発化し、多くの製品が登場するだろう」と調査会社Yankee Group Researchのアナリスト、ゲーリー・チェン氏は語る。

 仮想化市場ではVMwareが強固な地位を築いているが、専門家はMicrosoftの攻勢と中堅企業に重点を置いたCitrix Systemsの市場展開に注目している。Microsoftは2008年初めのWindows Server 2008のリリースに続いて新しい仮想化ツールを投入する予定で、Citrix Systemsは2007年8月にオープンソースベンダーのXenSourceを買収している。

仮想化の効果はサーバ統合だけではない

 多くの大企業はサーバ統合を仮想化の導入理由としているが、仮想化の導入を検討している中堅企業のデータセンターマネジャーは、サーバ統合以外のメリットに目を向けるべきだと専門家は指摘している。

 「一部の企業がサーバ統合のために仮想化を進めるのは確かだ。仮想化によってサーバ統合を行うことで、スペース、ハードウェア、電力・冷却コストの削減が図れるからだ。しかし、それほど大規模なインフラを持っていないほとんどの中堅企業では、サーバ統合の効果は、仮想化導入の決め手になるほど大きなものではない」とチェン氏。多くの中堅企業にとって、仮想化の重要な用途はバックアップとディザスタリカバリだという。「仮想化により、これらのための高度なセットアップが可能だ。1時間もかからずにリストアを行うことができ、非常に実用的でコストも手ごろだ」(同氏)

 Enterprise Strategy Groupのアナリスト、マーク・バウカー氏は、最近の調査でサーバ仮想化を計画していると回答したITマネジャーの70%は、2008年に行う予定だと語る。

 仮想化により、ITマネジャーは仮想マシンをイメージとして1つのファイルに保存できる。「イメージをコピーしてオフサイトのディスクに移し、すぐに起動するといったことができる」(バウカー氏)

 仮想化はディザスタリカバリに利用できるだけでなく、サーバの利用率を向上させ、サーバ管理を容易にするとバウカー氏は語る。「ITマネジャーが仮想化に着目する第1の理由はコストだと思う。新しい物理サーバを調達するプロセスは面倒だ。そこで、『新しいサーバを買わずに済むように、仮想化を試してみよう』ということになる。そして導入すると、すべての仮想マシンを1つの管理コンソールから管理できることが分かる。そのおかげで管理が非常に簡単だ」

 一方、MicrosoftのHyper-Vのリリースは、2008年の中堅企業向け仮想化市場における要注目の動きだ。Hyper-Vは2007年12月からβ版が公開されており、2008年初めのWindows Server 2008の一般出荷から6カ月後に正式版がリリースされる予定だ。バウカー氏は、このツールは同OSの一部として無料で提供されるため、中堅企業にとって魅力的かもしれないと語る。しかし同氏の指摘によると、Hyper-Vのインパクトは、Microsoftがリリーススケジュールを守るか、このツールが高可用性などのニーズにどの程度対応しているか、どの程度の拡張性があるか、などに左右されるという。一部のユーザーは、アプリケーションや管理上のニーズから、VMwareのようなより実績のある堅固な製品を選択するかもしれないと同氏は見ている。

 2008年には、さまざまなベンダーが価格に敏感な中堅企業向けの仮想化製品パッケージを提供する取り組みや、変換ユーティリティとシステム管理ツールなどの製品をより緊密に統合することで、仮想サーバへの移行を容易にする取り組みを進めると専門家は予測している。

 チェン氏は中堅企業のITマネジャーに、「仮想化に取り組む際には、慎重に計画を立てる」ようアドバイスしていると語る。また、ソフトウェアベンダーは、ITマネジャーがワークロードや統合率の見積もりを行うための支援策を整備しているという。

 専門家は2008年の仮想化関連の動向について、以下のような見通しも示している。

  • IntelやAMDなどのハードウェアベンダーは、仮想環境における特定のワークロード(I/O負荷の高いものなど)のパフォーマンス低下を引き続き改善していく(チェン氏)
  • オフサイトサーバでホストされる仮想マシンに、ユーザーが必要なときに必要なだけアクセスできる仮想化サービスが登場しており、このサービスの利用という「小さいながらも新しい動き」への関心が高まる(チェン氏)
  • デスクトップ仮想化への注目度がさらに上がる。CitrixはXenSourceを買収したことで、「エンド・ツー・エンド」のプロバイダーとなっている。デスクトップの仮想化では、デスクトップイメージが1つのデータベースに集約され、社内のどこからでもこのイメージにアクセスできるほか、IT部門はイメージのパッチ作業や管理を容易に行える。2008年にデスクトップ仮想化は、セキュリティ対策の観点から、医療や金融サービスといった規制が厳しい業界を皮切りに普及が進む(バウカー氏)
  • IBMやHewlett-Packard(HP)などのハードウェアベンダーが、入手しやすい価格設定と導入の簡素化に重点を置いた特別なブレードサーバパッケージで、中堅企業市場を狙う。ブレードは、どちらかといえば大企業向けの製品だったが、今では入手しやすくなっている。それに、ブレードは仮想化と相性が良い。また、一部のサーバは仮想化ソフトウェアをあらかじめシステムに組み込んで販売されるだろう(チェン氏)
  • 仮想化とブレードは、グリーンコンピューティング、少なくとも、冷却用を含む消費電力の削減を重視するグリーンコンピューティングの基本要素でもある。グリーンITはこのところ大変な注目を集めている。中堅企業ではIT環境の規模から言って、削減できる消費電力量はそれほど大きくない。しかし、省電力に取り組むのは良いことであり、コストもそれほどかからない。省電力化は、誰にとっても実りある取り組みだ(チェン氏)

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