Column
いまさら聞けない仮想化の基礎――ヴイエムウェア、マイクロソフト、Xen
2006年には「仮想化」は普及の段階に進むだろう。先駆的なITプロたちは、仮想化製品をどのように使っているのだろうか?
2005年に企業に定着した技術を1つ挙げるとすれば、それは仮想化だろう。仮想化ソフトウェアは、だれも(専門家さえも)予想しなかったようなスピードで、開発室からデータセンターに進出した。2006年には、この技術が認知から普及という段階に進むのに伴って幾つかの障害も現れることだろうが、年末までには多くのITプロフェッショナルがデータセンターで仮想化ソフトウェアを運用するようになると予想される。
ここでは、仮想化とはどういうものか、提供ベンダーはどこか、どう活用されているのかを解説し、今後の展開を予測する。
2005年に企業に定着した技術を1つ挙げるとすれば、それは仮想化だろう。仮想化ソフトウェアは、だれも(専門家さえも)予想しなかったようなスピードで、開発室からデータセンターに進出した。2006年には、この技術が認知から普及という段階に進むのに伴って幾つかの障害も現れることだろうが、年末までには多くのITプロフェッショナルがデータセンターで仮想化ソフトウェアを運用するようになると予想される。
仮想化とは何か?
仮想化とは、1台のハードウェアが複数のOSイメージを同時に実行することを可能にする技術を指す。この技術は、何十年も前にメインフレームで登場した。メインフレームの高価な処理パワーの浪費を避けるための手段として仮想化が用いられたのである。
1998年、米EMCの子会社であるヴイエムウェアが仮想化ビジネスに参入した。新興企業であった同社は、x86プラットフォームに対応した仮想化製品を投入したことで、わずか数年でこの分野の大手にのし上がった。
ヴイエムウェアの参入タイミングも絶妙だった。
従来、1台のサーバ上で1つのアプリケーションを運用するというのが、x86サーバの標準だった。サーバが安価で、運用コストも低かったときには、それでも問題はなかった。しかしアプリケーションのニーズに対応するために次々とサーバが追加されるのに伴い、状況が混乱し始めた。データセンターの管理者は、使われていないサーバ容量に何百万ドルも支出するといった深刻な利用率問題に悩まされた。
しかし仮想化技術を利用すれば、こういった問題を解決することが可能だ。1台のマシン上で1つではなく、複数のアプリケーションを動作させることができるからだ。しかも各アプリケーションは、相互に影響しない仮想OSイメージ内に隔離されるのである。
ITの効率化と統合に向けた最近の動きが追い風となり、仮想化技術は飛躍的な普及拡大と顧客満足をもたらした。米調査会社、IDCの推定によると、従業員500人以上の企業の75%が仮想サーバを配備する見込みだ。また、サーバ仮想化技術を現在利用しているユーザーの場合、今年購入する新しいサーバの45%を仮想化する予定だ。
仮想化製品を提供しているベンダーは?
ストレージ、ネットワーキング、サーバ機器のベンダー各社も、仮想化に注目している。新興企業やオープンソースベンダーも含め、ほとんどあらゆるベンダーが、この分野に関心を抱いているのだ。
IDCによると、現在、仮想化サーバに対する企業の支出の大半を占めるのが、メインフレーム、IBMのiSeriesおよびハイエンドのUNIXシステムだという。
米調査会社サミットストラテジーズのジョー・クラビー副社長兼プラクティスディレクターは、「仮想化されたワークロードを最も多く実行しているのがメインフレームである」と話す。しかしヴイエムウェアやマイクロソフトの製品、オープンソース「Xen」などの仮想化ソフトウェアのおかげで、WindowsおよびLinuxサーバが仮想化分野で著しい成長を見せている。
ヴイエムウェアはx86サーバ市場で独占的地位を確保しており、このプラットフォームにおける事実上のリーダーが同社であることは衆目の一致するところだ。ヴイエムウェアのユーザーを対象とした最近の調査によると、90%のユーザーが実業務環境で仮想化技術を利用しており、25%のユーザーがすべてのx86アプリケーションを仮想インフラ上で標準化している。
ヴイエムウェアでプラットフォーム製品を担当するラグー・ラグーラム社長は、「自慢するわけではないが、世界で最も広範に配備されているプラットフォーム、すなわちx86サーバに仮想化技術を提供したことによって、この分野のリーダーになった」と話している。「われわれは顧客ベース、製品、売り上げのすべての面において圧倒的にリードしている」(同氏)
仮想分野での競争にやや出遅れたマイクロソフトは、「Virtual Server」技術を提供している。同社は昨年12月に「Virtual Server R2 Standard Edition」を発表した。同社は現在、「Longhorn」のコードネームで呼ばれる次期OSに仮想化技術を組み込む作業を進めている。
WindowsでVirtual Serverが利用可能になったのは2004年と比較的最近のことだが、「同社は巨大な顧客ベースを持っているため、どの分野に進出してもビッグプレイヤーになる」と競合企業やアナリストらは口をそろえる。
オープンソースコミュニティーが提供している仮想化技術「Xen」は、昨年12月にバージョン3.0が発表された。開発者たちは、このコードをLinuxカーネルの次期バージョンに組み込んでいる。一方、レッドハットやノベルなどのソフトウェアメーカーも、それぞれのOSを仮想化する作業を進めている。
Xenは現在、レッドハットの無償評価版Linuxである「Fedora」で利用可能だが、不安定な機能の1つに挙げられている。しかしレッドハットのエマージングテクノロジーグループの技術マネジャー、ブライアン・スタイン氏は、「RHEL(Red Hat Enterprise Linux)5」が今年登場するまでには、Xenを安定化してリリースできる見込みだとしている。
「すべての不具合が最初のリリースで解決されていることを期待する人はいない。Xenの安定性は改善されつつあり、RHEL 5のリリースに間に合わせる自信はある。まだ時間はたっぷりある」とスタイン氏は話す。
スタイン氏によると、レッドハットが今後注力すべき分野の1つが、ヴイエムウェアの「VMotion」などの管理ツールの分野だという。Xenは、データセンターのプロビジョニングや管理という用途よりも、個別マシンの統合に利用される方が多いと予想されるが、集約管理ツールも追ってリリースする予定だ、と同氏は話す。
「レッドハットは、管理分野での戦いがどのように展開し、大多数のユーザーが何を求めているのかを見極めた上で、その地点からスタートするつもりだ。われわれがこの分野でまだ基盤を築いていないのは、今後もこの分野の状況が変化すると予想されるからだ」とスタイン氏は話す。
「単一マシン向けの強力な管理機能を開発し、それをポリシーベースの管理機能へと拡張する予定だ。われわれはそのゴールに向かって前進しつつある。オープンソースコミュニティーに任せておけば大丈夫だ、といった甘い考えは持っていない」(同氏)
これらのプレイヤーに加え、これまで仮想化とはあまり縁のなかった大手企業も、この技術にかかわろうとしている。ネットワーキング分野の巨人、シスコシステムズは、ネットワークレベルでの仮想化に向け、同社が昨年買収した技術を推進し始めた。ITリソース管理企業のBMCソフトウェアは先ごろ、仮想環境向けの管理ツールを発表した。一方、AMDとインテルは、チップレベルでの仮想化に向けた取り組みの詳細をそれぞれ発表した。
ITプロたちはどう利用しているのか?
2005年には、あらゆる企業が仮想化にフォーカスした製品や戦略を売り込んでいるように思われた。しかしこれらの技術がITスタックのさまざまな層で提供された場合、それぞれの機能は互いに連携できるのだろうか。
「たぶん無理だろう」と話すのは、調査会社アイデアズ・インターナショナルの副社長兼上席アナリスト、トニー・アイアムズ氏だ。「ユーザーは、まだ技術を組み合わせて利用することができない。彼らは特定の技術を個々のタスクで利用しているのだ」と同氏は指摘する。
クラビー氏も同意見だ。「重複する部分は多いが、現時点では、仮想化は複合型ソリューションではない。ほとんどのユーザーは1つの分野――ネットワーキング、ストレージあるいはシステム――にフォーカスし、ニーズに基づいて仮想化の利用方針を決定している。ストレージの利用率が最大の優先事項であれば、ストレージの仮想化を進め、システム環境が手に負えない状況であれば、サーバの仮想化を進める、といった具合だ」
アイアムズ氏によると、現在、仮想化技術は主として次の目的で利用されているという。
- テスト:ITプロフェッショナルたちは、仮想化されたリソースをテストや開発業務で利用している。すなわち、新しい機能を試す際に新規のサーバを購入するのではなく、現在使用中のサーバの一部を仮想化という方法で切り取って利用するのである。
- 統合:企業はマシンの利用率を高めることによって、サーバの台数を減らそうとしている。
- レガシー環境のサポート:開発/サポートが中止になったレガシー環境を仮想マシン上で実行すれば、レガシー環境内でアプリケーションを運用しながら、新たなOS環境に移行する方法を探すための時間を稼ぐことができる。
次のステップは?
専門家によると、仮想化技術における次のステップは「管理」だという。すなわち、サーバファームをコンピューティングリソースの仮想プールとして扱うことにより、仮想マシンを自由に移動したり、それらを結び付けて巨大なマシンイメージに統合したりできるようにするのだ。
「データセンター全体を仮想化した後は、管理が重要な問題となる」とアイアムズ氏は話す。「将来的には、従来のシステム管理にまつわるすべての問題が、仮想システムの管理においても重要になってくるだろう」
アナリストによると、仮想化の真の価値を実現するには、ポリシーベースの自動管理を実践する必要があるという。仮想化ソフトウェアによって多様な仮想マシンが作成されるのに伴い、これらのOSイメージをチェックし、パッチやソフトウェア、ユーザープロファイルなどを追加するプロビジョニング作業が必要となるのだ。
このプロビジョニング作業は、ポリシーに基づいて自動化することも可能だ。しかしこれは、ベンダーにとってもITプロフェッショナルにとっても容易なことではない。
「原則論としては、ポリシーベースの管理の必要性は人々に理解されている」とアイアムズ氏は話す。
「それによってITポリシーとビジネスの優先課題を結び付けることができるからだ。ポリシーベースの管理を可能にするには、ある程度の自動化メカニズムを組み込む必要がある。しかしその実施に向けては、技術的な障害に加え、人的側面での障害が存在する。企業は長い時間をかけて現在の業務慣行を築き上げてきたわけであり、それを自動化しようという動きは、従業員の不安や恐怖心を呼び起こす」(同氏)
ワークロードの管理にかかわる人件費は非常に高いため、企業はコンピューティングリソースのプロビジョンを担当するスタッフの数を抑えたいと考えるだろう。しかしクラビー氏によると、自動管理ソフトウェアはこれからようやく認知されるという状況であり、あと2~3年は広範な普及を期待できないとしている。
「昨年は、自動管理技術とその利用法がユーザーとベンダーの間で話題になったにすぎない。実際の製品がベンダーから出てくる今年は、非常に重要な年になるだろう」(アイアムズ氏)
(この記事は2006年1月4日に掲載されたものを翻訳しました。)
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