ユニファイドコミュニケーション(UC)をめぐる戦いの行方
CiscoとMicrosoft、UCの共通課題は“スマホ対応のカイゼン”
米Cisco Systemsと米Microsoftはモバイル市場のシェアを巡って争っている。だが、どちらのモバイルユニファイドコミュニケーション(UC)プラットフォームにも改善の余地はある。
ユニファイドコミュニケーション(UC)プラットフォームでの通信には、モバイルデバイスの機能を利用する必要がある。具体的には、ビデオ、音声、メール、セキュリティ、対話のサポートなどだ。
米Cisco Systemsと米MicrosoftはUC市場の2大サプライヤーだが、モバイル機能を並べて比較することは難しい。両社のUCプラットフォームが提供する機能には違いがあり、ユーザーのニーズによってアピールポイントは異なる。
CiscoのUCプラットフォームとMicrosoftの「Lync」プラットフォームは、それぞれモバイルワーカーが誕生する以前の時代から存在するものだ。米RingCentralで戦略担当上級副社長を務めるプラフル・シャー氏は、UCアプリケーションをクライアントPCからモバイルデバイスに移行するのは、今なお簡単な作業ではなく、さらなる改善が望まれるという。
「どちらのベンダーのUCプラットフォームも、オンプレミス環境のユーザー向けに設計されていながらモバイルユーザーを取り込もうとしている。一方、新世代のプラットフォームは最初からクラウド設計をベースにしており、モバイルユーザーと離れた場所にいるユーザー向けに設計されている」とシャー氏は語る。
CiscoとMicrosoftのモバイル戦略の違い
CiscoとMicrosoftの製品ラインアップは異なる。当然のことながら強みも異なる。どちらもモバイルユーザーの現在のニーズを満たし、将来のニーズを予測することを目指しているが、両社のプラットフォームは細部の特性が異なる。
米Plantronicsでシニアプロダクトマーケティングマネジャーを務めるジェニファー・アダムス氏は次のように話す。「Ciscoの『Jabber』はネットワークを強調し、Lyncは『Windows』を強調している。モバイルの分野、特にBYODでは、複数のOSに対応するネットワークが歓迎されるのがモバイルUCの実情だ。これまでもCiscoのJabber搭載UCプラットフォームの設計は各種デバイスとOSに対応するようになっていた。そのため、この点に関してはCiscoに軍配が上がる。これに対して、Microsoftは米Googleの『Android』と米Appleの『iOS』に対するサービスを強化している。だが、Lyncモバイルクライアントの操作性が最も高いのは、やはりWindowsベースのモバイルデバイスを使用しているときだ」
CiscoとMicrosoftの通話機能の比較
CiscoとMicrosoftのUCプラットフォームを評価するときには、両社がモバイルユーザーだけを獲得しようとしているわけではない点を理解しておくことが重要だ。シャー氏によると、レガシーUCプラットフォームでは、必ずしもモバイルアプリケーションが最優先の用途として考慮されているとは限らないという。その中核的な特性が開発されたのは、スマートフォンの誕生やその後の成熟期以前のことであることを考えれば、致し方ないだろう。
特定のユーザープロファイルに対するプラットフォームの適合性と実用性を評価する上で、他のソフトウェアやOSとの互換性は重要な考慮事項だ。
「『Microsoft Exchange』『Microsoft Office』、Lync、Windowsなど、Microsoftのソフトウェアは適切に統合されている。そのため、Microsoftにはモバイルプラットフォームをさらに取り込むチャンスがある。また、モバイル化がUCの大きな推進力になっているため、さまざまなデバイスに自社の製品を確実に導入したいベンダーは革新を起こす必要がある」とアダムス氏はいう。
アダムス氏は次のように付け加える。「モバイル機能に関しては、どちらも十分成熟しているとはいえない。例えば、iOSと『Microsoft Outlook』の予定表の同期にはまだ問題がある。また、クライアントPCとモバイルデバイスで動画を共有する機能にも制限がある。一方、Ciscoのマルチプラットフォームアプローチは、ユーザーの操作をよりシームレスなものにしている。さらに、Ciscoのネットワークサービスの品質を重視する姿勢は、さまざまなモバイル運用環境におけるJabberの音声と動画の操作性を高めることにもつながっている」
Jabberの通話機能にはWi-Fiとモバイルネットワークのオプションが用意されているとアダムス氏は指摘する。これに対して、Lyncではネットワークが自動的に選択され、どちらを経由するか選べない。また、既定の音声/動画機能がユーザーのデバイスと互換性がないことや、デバイスに接続されないという問題が発生することもある。
ただし、近年のクラウドコンピューティングとクラウドベースの音声機能の進歩に伴い、通話機能は急速に変化している。そのため、クラウドがUCの音声サービスを形成する可能性がある。
「最初から離れた場所にいるユーザー向けに設計されたクラウドベースの電話システムの新時代が到来した。これがUC市場を根底から変化させつつある。モバイルデバイス向けの各種サービスに対する企業の購入、導入、管理および支払いの方法は一変した。新世代のクラウドプラットフォームベースの新しいソリューションは、CiscoとMicrosoftいずれのレガシーUCプラットフォームと比べても何分の1かのコストで手に入る」とシャー氏は語る。
もっとも、実際問題として、恐らく多くのJabber/Lyncユーザーは、モバイルUCプラットフォームを使用していない。「モバイルUCは幅広く受け入れられてはいない。例えば、iOS向けの『App Store』にあるJabberのレビュー件数はわずか12件(星3.5個)、Lyncのレビュー件数は46件(星2個)だ。これらのモバイルクライアントの導入を増やすチャンスはある。だが、モバイルクライアントでは解決できない課題も幾つかある。多くのモバイルユーザーが安定したワイヤレスネットワーク以外からの通話にも対応しなければならない。そのため、モバイルUCの接続に関するベストプラクティスを理解するための教育が求められている」(アダムス氏)
モバイルデバイスを耳に当てると、画面の表示、IMの管理、予定表の機能などをクライアントPCと同じようには使用できないと同氏は付け加える。「モバイルデバイスの組み込みスピーカーフォン機能では、プライバシーが配慮されることも、バックグラウンドのノイズキャンセル機能やリッチな音声エクスペリエンスが提供されることもない。そのため、Bluetooth対応のイヤーピースや他のヘッドセットなどの高性能なハンズフリーデバイスをモバイルUCクライアントと組み合わせて使用し、最後の最後で音声が途切れることのないようにして、優れたエクスペリエンスを確保することをお勧めする」
モバイル市場シェアの再編
これから数カ月~数年の間に、モバイル市場におけるUCは成熟して強化されることが予想される。ユーザーはデスクトップPCからスマートフォンにシームレスに移行できるようになる。また、その逆の移行も可能になるだろう。CiscoとMicrosoftにとっては、サービスを形にすることが課題になる。鍵を握るのは各社のマーケティング戦略だ。モバイル中心のエンドユーザーが何を選択するかは、各自のニーズ/要望と提供されるサービス次第だろう。UCにモバイルデバイスを使用しているユーザーにとって、通話の価値は決して低くない。モバイル通信は非常に価値があるもので、CiscoとMicrosoftにはさらなる発展が求められている。
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