読者調査で分かったIT刷新トレンド
Windows移行に、Docker利用――2015年の注目プロジェクトはこれだ
次々に登場している重要なITサービスを速やかに利用するには、まず既存環境を適切なレベルにまでアップグレードしておくことが不可欠だ。ITインフラが時勢に後れを取っていると、その企業自体が時代に取り残される。
ITのアップグレードは単に「実現できればすばらしいこと」ではない。事業基盤の技術面を戦略的に改善することと同義だ。
ただし、企業が2015年に取り組むITインフラプロジェクトの内容はハードウェア、ソフトウェア、人材に対して予算がどれだけ割けるかによって変わってくる。経済の回復基調に乗り予算も上乗せ傾向にあり、理にかなったプロジェクトであればゴーサインを出す企業が増えている。
米TechTargetが実施したITの優先順位に関する調査によると、「2015年にハードウェア予算が増額された」と回答したITリーダーが約47%に上ることが明らかになった。また回答者の48%は、ソフトウェア予算にはハードウェア以上の増額が認められたと答えている。「クラウド関連のプロジェクトに予算が新たに割り振られた」との回答も41%に上った一方で、2015年にITスタッフの予算を増額すると答えた企業は32%にとどまった。
また今回の調査から、北米企業のIT部門に所属する回答者の42%が、2015年にデータセンターインフラを何らかの形でアップグレードする予定であることが分かった。
回答で多く挙げられたプロジェクトは以下の通り。
1. Windows Server 2012 R2への移行
Windows Serverの更新に関するプロジェクトは、2015年のToDoリストの上位を占めた。調査に回答を寄せたITリーダーのうち39%は、米Microsoftの「Windows Server 2012 R2」をすぐにでも導入する予定だと答えた。「Windows Server 2003」のサポートが終了する2015年7月15日までにこのOSを本番環境で動作検証する時間を確保するためだ。
このサーバOSのアップグレードプロジェクトを進めることを正当化する理由は、企業によって異なる。Microsoftの現行のサポート戦略に不安を感じている企業がある一方で、Windows Server 2012 R2へのアップグレードを長期にわたるMicrosoftからのサポートを確保する手段として捉える企業もある。他にも、エンドポイントシステムとしての「Windows 8.1」(将来的には「Windows 10」)を最適にサポートするサーバ側のプラットフォームとして、Windows Server 2012 R2に期待を寄せる企業もある。
しかし、Windows Server 2012 R2へのアップグレードを進める理由として多かったのは、このOSには新機能や改良された機能が多数含まれているという声だ。例えば、コマンドラインやスクリプティングの機能が強化されたPowerShell、Active Directory管理センターにActive Directoryのごみ箱機能などの改良が加えられたこと、きめ細かいパスワード管理、PowerShell履歴の表示などだ。サーバメッセージブロック(SMB)もパフォーマンスが向上し、イベントメッセージや仮想マシン(VM)ファイルのサポートが加わるなどの強化が図られている他、セッションシャドーイング、データのオンライン重複除去、RemoteApp操作の改善、DirectX 11.1のサポートなど、リモートデスクトップサービスも充実している。
またWindows Server 2012 R2は、仮想化とクラウドへのさらなる進出を図り、仮想HDDの共有、ストレージQoS(Quality of Service)の向上、VMの自動アクティブ化などの機能をアピールしている。Hyper-Vレプリカ機能を実装したことで、30秒間隔でVMのレプリケーションが実行できるようになり、リカバリポイントが増えた。Hyper-Vのライブマイグレーション機能も合理化されて、多くのプロトコルでパフォーマンスが向上した。クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」との統合も進められ、Windowsに慣れているユーザーにとっては、パブリッククラウドを利用しやすくなった。
2. 数より効率重視:データセンターの統合
データセンターの統合に対する圧力、つまり少数のサーバにより多くのワークロードを詰め込んでリソースを最適化するべきという傾向は、全く衰える気配がない。企業のITリーダーの33%が、2015年にITインフラの統合プロジェクトに取り組む予定だと回答した。
ITチームはデータセンターの統合プロジェクトをハードウェアの更新サイクルに合わせて実施しようとするが、経営幹部は大量のハードウェアを新たに購入する前に、その物理インフラを軽量化することに価値があると考えている。理屈上は、物理システムを構成する機器の数を減らして信頼性の高いものに集中させれば、トータルの支出額は抑えられる。データセンターのサーバ保守契約の数は減り、継続して発生する電気料金と冷却コストも抑えられるからだ。
データセンターの合理化は、ITアーキテクチャの最適化にもつながる。例えば、関連するワークロードを同一の物理サーバ上に集約するようにIT機能を再編成すれば、VM間でデータをやりとりする際に通常のネットワークを利用する必要がなくなる。内部のデータ交換は高速になり、ネットワークのトラフィックや混雑も緩和する。
包括的な管理プロセスやツールに統合化のタスクを加えて、VMのプロビジョニングやリソース割り当て、アプリケーションのパフォーマンスの監視、ワークロードの負荷分散、VMのライフサイクル管理、データセンターのインフラ管理などのタスクを支援する必要がある。
また、ワークロードの仮想化を拡張し、統合技術を極めれば、クラウド化の重要な基礎を築くことにもなる。クラウド化も、2015年に大いに注目されているITインフラプロジェクトだ。企業はこうした策を取ることで、ハードウェアコストを削減すると同時に、一連のワークロードを最大限に維持することができる。
3. 仮想化環境の進化
ITリーダーたちは、拡大が続くサービスプラットフォームの更新または採用の態勢を整えつつあるようだ。
2015年にはサーバ側のハイパーバイザーを更新する動きが多くなるだろう。最新のハイパーバイザーを採用すれば、より多くのVMをより少ない数のサーバで稼働でき、ワークロードのパフォーマンス、可用性、モバイル対応、データ保護などの機能の改善と統合化を促進できる。
今回の調査で回答を寄せたITリーダーの25%が、米VMwareの「VMware vSphere」のバージョンを5.5にアップグレードする予定だと答えた。ただし、5.5をスキップして2015年2月に発表された「vSphere 6.0」を待つという案にも一理ある。VMware vSphere 6.0では、「vMotion」「Storage Distributed Resource Scheduler(DRS)」「vCenter Site Recovery Manager(SRM)」「vSphere Replication」「vSphere Data Protection」などに新機能や改良が多数盛り込まれる予定だ。またスケーラビリティも強化され、1クラスタ当たりのホスト数64、VMの数は1クラスタ当たり8000、1ホスト当たりのCPUの数は480、ホストのメモリ容量は12Tバイト、1ホスト当たりのVMの数は2048、1VM当たりの仮想CPU数は128、1VM当たりのメモリは4Tバイトとなっている。
仮想化はネットワークの分野で急速に進んでいる。「VMware NSX」などのネットワーク仮想化技術を利用すれば、イーサネットの物理ネットワークをVMに割り当てた転送容量プールとして扱うことができ、セキュリティとネットワークサービスも確保できる。今回の調査では回答者の9%がVMwareのNSXプラットフォームを2015年中に導入する予定であると答えている。これは無視できない数字だ。物理ネットワークアーキテクチャは以前から設定作業に長時間かかる上にエラーも発生しやすい頭痛の種だったが、NSXを導入すればそうした問題を解消できる。
業務アプリケーションの開発、展開、管理は、これまでは泥臭く非効率的な作業だった。ところがDevOpsの浸透、さらには「Docker」などのソフトウェアコンテナの導入により、アプリケーションの開発は2014年に様変わりした。コンテナを利用すれば、ITチームはアプリケーションのビルド/配布/実行を、サーバやノートPC、クラウドなどマルチプラットフォームで素早く行うことが可能になる。今回の調査でも回答者の5%が、2015年にコンテナを導入すると答えている。ただコンテナ化は現時点ではまだ発展途上であり、32%のITリーダーは、2015年はモバイルアプリケーションの促進に取り組むと回答している。
4. クラウドへの移行
クラウド技術は仮想化の基盤の上で展開が進み、ワークロードの配備と管理の高速化および容易化に一役買っている。IT部門が直接関与せずに、エンドユーザーだけで事が済むことも珍しくない。クラウドによってユーティリティコンピューティングが実現され、IT部門は自社組織のサービス提供者として機能することになる。
プライベートクラウドによって、仮想化・統合化されたデータセンターではセルフサービスと自動化が可能になる。回答者の19%が「2015年中にプライベートクラウドを構築する予定がある」と答えている。さらに、22%は「多様な業務ワークロードをサポートするためにハイブリッドクラウド環境を構築する計画がある」と回答した。
業務部門は新しいアプリケーションをまずはプライベートクラウド上で試すだろうが、最終的にはパブリッククラウド事業者のアプリケーションを導入するケースもある。定型業務の一部をクラウドに移行することで、IT設備投資を抑えることができ、社内データセンターのキャパシティーを解放して基幹業務のワークロードに割り当てることができる。
ただクラウドには依然として、リソース利用の制限、ワークロードパフォーマンスの監視、データ使用量に対するチャージバック(課金)/ショーバック(コスト提示)など、管理面とセキュリティ面の懸念が付きまとう。回答者の18%が「ハイブリッドクラウド管理機能の導入」を希望し、25%が「クラウドセキュリティツールの導入を予定している」と答えたのは当然だろう。
5. モビリティの推進
企業の従業員がモバイル端末(ノートPC、タブレット端末、スマートフォン)を使って業務アプリケーションを利用するケースが増え続けている。このようなエンドポイント端末の多くは従業員が個人的に所有していることから、企業側に対して、私用端末の業務利用(BYOD)を認めるべきとの圧力が高まっている。
今回の調査では、約31%のITリーダーが「2015年にモバイル関連のITインフラプロジェクトに取り組むことを予定している」と回答した。「BYODのサポートを予定している」と答えた回答者は42%、これに対し32%は「BYODを認めるつもりはない」と答え、代わりに会社が購入したモバイル端末を従業員に配布する方式を採用するという。
モバイル端末の利用拡大に対応するためにIT部門はアーキテクチャの変更を余儀なくされるが、また同時に機密性の高い業務データの安全も確保しなければならない。
モビリティには多面的な対応が必要であり、適切に実装するためには多方面からの戦略が求められる。例えば、回答者の45%は「モバイルデバイス管理(MDM)を導入する予定だ」と答えた一方で、44%は「モバイルエンドポイントをサポートする機能を持つアプリまたはアプリケーション開発プラットフォームの利用を検討している」と答えた。また26%は「2015年中にアイデンティティー(ID)/アクセス管理のプロジェクトを予定している」という。
プロジェクトの種類は何であれ、モバイル化のサポートで常に重要となるのは、従業員の働きやすさと生産性、そしてセキュリティのバランスだ。
今回の米TechTargetの調査は、2014年後半に実施され、2212人のITワーカーから回答を得た。調査の回答者は企業のIT部門に所属する従業員で、回答者が勤務する企業の従業員数の平均は1万6870人であった。
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