「IoT」「ソフトウェア定義」「WebスケールIT」ほか
知らないとやっぱり恥ずかしい2015年の「10大ITトレンド」
クラウド、モバイル、アナリティクス――これらは米調査会社Gartnerが2015年の戦略トレンドおよび戦略的技術のトップ10に入った主要なテーマである。
「あなたの会社が現在、どれほどデジタル化が進んでいようとも、やるべきことはまだある」。2014年10月初めに開催されたシンポジウム「Gartner Symposium/ITxpo 2014」において、2015年の戦略トレンドおよび戦略的技術としてGartnerが掲げるトップ10リストについて説明した同社のアナリスト、デビッド・セアリー氏は、そう指摘した(参考:知らないと恥ずかしい2014年の「10大ITトレンド」)。同氏はこの10項目のリストを3つのカテゴリーに分類した。最初の3つは、現実世界と仮想世界との融合を反映したもの。次の3項目は、インテリジェンス(単なるコンピューティングではない)に関するものだ。最後の4つは、ITの将来を特徴付けるものとして分類され、その最終的な形態をGartnerは「WebスケールIT」と呼んでいる。
WebスケールITというコンセプトには、企業の最高情報責任者(CIO)たちがこの数年間、格闘してきた数々のIT問題も含まれる。「いつでも、どこでも、どんな端末でも可能なコンピューティング、そしてそれを実現するのに必要なセキュリティ」を特徴とするIT環境への移行、そしてこの環境で配信されるデータが人々の仕事の効率を高める必要があるという状況は、Gartnerのリストに色濃く反映されている。
ではリストの中身を見てみよう。
1. あらゆる場所のコンピューティング
「モビリティの中心はもはやデバイスではなく、個人である」とセアリー氏(およびシンポジウム参加者たち)は述べた。これからの目標は「あらゆる場所のコンピューティング」を可能にすることだという。
戦略ノート:さまざまなベンダー(覇権を競っている米Google、米Apple、米Microsoftなど)から提供される、さまざまなプラットフォーム、さまざまなアーキテクチャ、さまざまな製品が今後も共存し、これらを管理する必要がある。「ITプロフェッショナルはこうした混在環境を受け入れるべきであり、企業を全面的にコントロールしようと考えてはならない」とセアリー氏はアドバイスした。さらに同氏は、「封じ込め」と「隔離」という手段がセキュリティ戦略として有効だと指摘。CIOは、今後数年間でモバイル市場において急速な進化と統合が進むと予想しておかねばならず、1年半から2年のスパンで戦略の見直しを行う必要があるという。
2. モノのインターネット(IoT)
産業ネットワーク、ソーシャルネットワークおよび情報ネットワークは今後も、企業に大きな影響力を持つ。
戦略ノート:「自社の資産や製品、プロセスに目を向け、IoTなどの新技術を利用して、これらの管理、収益化および拡張の方法をどう改善できるかを考えなければならない」とセアリー氏は述べた。また、実験を行うためのゆとりを確保する必要もあるという。「メーカーとしての企業文化を大切にすること。組織内の個人に力を与え、IoTを活用して、顧客が直面している問題に狙いを定めたソリューションを見つけられるようにすべきだ」(同氏)
3. 3Dプリンティング
Gartnerによると、この数年で3Dプリンティングは、材料科学という段階から、手頃な価格の実用技術へと大きな進歩を遂げたという。「そのビジネスモデルも現実のものとなってきた。米Boeingは最新のジェット機で約80の部品を3Dプリンタで製造した」とセアリー氏は語った。米Not Impossible Labsの「Project Daniel」と呼ばれるプロジェクトでは、内戦で両手を失った南スーダンの少年ダニエル君の義手を3Dプリンタで製作した。
戦略ノート:セアリー氏によると、3Dプリンタに投資する前に、5つの問題を検討する必要があるという。すなわち、「製造中心主義から顧客ニーズ中心主義に転換できるか」「俊敏性を高められるか」「コストを削減できるか」「この技術を利用するのに必要な知識、スタッフ、スキルがあるか」「イノベーションをどのように推進するか」という問題だ。
4. 高度でパーベイシブ(※)な不可視のアナリティクス
ビッグデータは2015年も話題になるだろうが、セアリー氏によると、ビッグデータよりも“ビッグアンサー”に目を向けるべきだという。これは、アナリティクスを企業の中心に据え、これを全てのアプリケーションとプロセスに組み込むという意味だ。
戦略ノート:ビッグデータのセキュリティは「次世代のセキュリティプラットフォームの中心になる。このプラットフォームでは、ビッグデータにかかわる全てのログ、イベントおよび情報が高度なセキュリティモデルの中に取り込まれる」とセアリー氏は述べた。また、「データレイク(Data Lake:企業のデータを分類・整理せずにそのまま格納する場所)」というコンセプトが注目を集める可能性があるが、これについては、「データの可搬性や利便性を重視したデータ貯蔵庫」という風に考えた方がよいという。
※ パーベイシブ(Pervasive:広範囲に浸透する)
5. コンテキストリッチシステム
セアリー氏によると、パーベイシブな組み込み型アナリティクスは、“コンテキストリッチなシステム”を補強するという。コンテキストリッチなシステムとは、ユーザーおよび彼らを取り囲むシステム、そしてユーザーが利用するコンテンツを理解するシステムである。セキュリティもそのユースケースの1つだ。例えば、あるユーザーが中国の北京からシステムにアクセスしているのに、そのユーザーが米コネティカット州にいることがユーザーのカレンダーに示されている場合、情報のコンテキスト部分から警告が発せられる。
戦略ノート:スケジュールの管理や的確で素早い情報検索を可能にするコンテキストリッチなデジタルアシスタンスに慣れる必要がある。「こういった機能は、情報を結び付けてユーザーに提供するインテリジェントなユーザーインタフェースと見なされるようになるだろう」と同氏は述べた。
6. スマートマシン
コンテキストリッチシステムの延長線上にあるのが“スマートマシン”だ。これは、機械学習と人工知能を利用して、人間が行ってきた仕事を肩代わりするというものだ。「機械はますますインテリジェントになっている。抽象的概念を理解し、自ら学習して再プログラミングすることも可能になった」とセアリー氏は語る。例えば、米Cornell University(コーネル大学)が開発した予測型支援ロボットは、センサー、カメラおよび機械学習システムを使って人間の行動を“見て”、どう支援すべきかを判断する。
戦略ノート:Gartnerは、スマートマシンを「移動型」(自動運転車など)、「行動型」(コーネル大学の支援ロボットなど)、「賢人型」(米IBMの「Watson」など)の3つのタイプに分類している。このうち、企業に最も直接的な影響があるのが賢人型である。具体例としては、ユーザーのデジタル予定表、ユーザーの現在位置およびリアルタイムの運行情報にアクセスし、ユーザーが飛行機に乗り遅れる可能性があると判断される場合には警告するといった仮想パーソナルアシスタントなどが考えられる。
7. クラウド/クライアントコンピューティング
クラウド/クライアントコンピューティングとは「クラウドとモバイルの統合である」とセアリー氏は説明する。アプリケーションはクラウドに置かれて連係ポイントとして機能するという。コンテンツは複数のデバイスにわたって高度に同期化され、コンテンツにアクセスしているユーザーがいる場所、ユーザーの周囲の状況やユーザーがやろうとしていることに基づいて情報を配信できるようになるという。
戦略ノート:「クラウド/クライアントコンピューティングというのは、単にエンタープライズアプリケーションをモバイル端末に移植することではない」とセアリー氏は語る。CIOはより高度なアプリケーションモデルを検討する必要がある。「2015年にはクラウドに最適化されたクラウド専用のアプリケーションがクラウドの中心テーマになるだろう」と同氏は指摘する。これらは従来型アプリケーションとは異なる設計になる必要があるという。
8. ソフトウェア定義のアプリケーション/インフラストラクチャ
「これからの主流はソフトウェア定義型(Software-Defined)だ。複雑化する環境で求められる俊敏性を手に入れるには、ハードコードされた設定済みの機器ではだめだ」とセアリー氏は語った。ソフトウェア定義型のネットワーク、セキュリティ、データセンターおよびストレージを利用すれば、アプリケーションのニーズに基づくコンポーネントを組み立てることができる。ソフトウェア定義型のアプリケーションデリバリーはクラウド/クライアント型コンピューティングによって支えられるという。
戦略ノート:APIおよび組み立て可能な“コンポーネントサービス”の作成を始めること。「ソフトウェア指向のアーキテクチャサービスが登場するだろう。複数階層のクライアントサービスとコンポーネントサービスを備えた柔軟で俊敏性に優れたクラウド中心型モデルを扱うのに必要になるからだ」とセアリー氏は述べた。
9. WebスケールIT
セアリー氏は“WebスケールのIT”について、これは「IT界の未来」であると同時に「デジタル社会の未来の基盤」であると表現する。WebスケールのITは、“グローバルクラスのコンピューティング能力”を意味しており、この分野は現在、米Facebook、米eBay、米Amazonなどの企業の独壇場となっている。このコンピューティングモデルを企業に導入することがCIOに求められている。
戦略ノート:IT開発チームと業務チームの連係を高めること。「これは、APIベースの管理、速度を重視したプロセス、連続性のある開発を意味する」とセアリー氏は説明する。CIOは、両チームの連係に際して生じる文化的な問題を解決する必要もあるという。「CIOはいずれ、Web指向のアーキテクチャ、ソフトウェア定義型モデルおよびハードウェアの新たな構築手法を受け入れる必要がある」(同氏)
10. リスクベースセキュリティ/セルフプロテクション
企業は境界部分で防護されているという前提に立つのをやめ、自己防護能力を備えたアプリケーションの検討を始める必要がある。「アプリケーションは基本的にブラックボックスであり、内部のセキュリティがどうなっているのか見ることができない。これをこじ開けなくてはならない」とセアリー氏は語った。
戦略ノート:ブラックボックスをこじ開けるのに必要な要素は2つある。1つはセキュリティアプリケーションのデザインだ。「アプリケーション開発者はセキュリティ専門家にならなくてもいいが、アプリケーションは外部のセキュリティツールと連係する必要がある」とセアリー氏は述べた。2番目の要素はランタイム型のアプリケーション自己防御機能だという。「この2つの要素が、データを分析してアプリケーションの状態を監視し、リアルタイムで対処するためのエンジンである」と同氏は説明する。「CIOは、セキュリティチームと開発チームを緊密に結び付けるのに伴う文化的問題に対処する必要もある」(同氏)
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