今後5年でビジネスITはどう変わるか
これだけは覚えておきたい、ITを激変させる「10のメガトレンド」
今後5年間にビジネスITの世界には「メガトレンド」の波が押し寄せてきそうだ。巨大インフラ。際限のないビジネス要求。管理体制の大転換などなど。どう備えればいいのか。
「ビジネス担当者は、社内データセンターのスケーラビリティとコストが、米Amazon Web Services(AWS)のクラウド並みになることを期待している」。2014年6月に米国フロリダ州オーランドで開催された「Gartner IT Infrastructure & Operations Management Summit 2014」の出席者の1人はそう語った。
こうした最先端のITとそれに対する企業の期待が、今後予想される以下の10のトレンドの底流となっている。これらのトレンドは、Gartnerで副社長を務めるミリンド・ゴブカー氏が、同カンファレンスで紹介したものだ。
1. オープン哲学
「Open Compute Project」などの活動で推進されているオープン開発では、データセンターインフラの構築は、最も下位レベルのコンポーネントで行われる。これらのコンポーネントはオープン標準を使用して相互に連携する。だが、エンタープライズアプリケーションのうち、こうしたインフラでの利用が想定されているものは2%に満たない。このため、企業のIT部門は、レガシーアプリをオープンインフラに乗せるのは避けなければならない。
代わりに、新しいワークロードをこうしたビルディングブロック型のインフラに配置する。また、オープン標準ベースのハードウェアおよびソフトウェアの増加に備えてハードウェア契約を考えなおす必要がある。
2. 自動化
自動化は決して新しいものではない。だが、今後5年間で、ITの自動化については、これまでの場当たり的な実装から体系的な実装へと変革が進むだろう。
問題は、IT管理者がスクリプトを愛用していることだ。IT管理者は、優れたスクリプトを作ることや、同僚が作ったスクリプトをいじることを好み、転職時にはドキュメントをほとんど残さない。IT自動化は、スクリプティングから厳密な設計(作業のワークロードを定義)へ、さらにはヒューリスティック設計(オペレーションで得られたデータに基づく自動化)へと進化しなければならない。
今からヒューリスティックな自動化に取り組み始めよう。そのためには、IT部門に自動化のリーダーを置き、スクリプト検出を自動化するとともに、レジリエンス(運用弾力性)を実現する構造化されたスクリプトを推奨するようにする。
3. あらゆる機器へのソフトウェア定義の適用
「ソフトウェア定義(Software-defined)」は、コントロールプレーンがハードウェアから抽象化されることを意味する。データセンターを構成する全ての機器でその仕組みの導入が進んでいる。ソフトウェア定義サーバは定着しており、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN:Software-Defined Network)は成熟化しつつある。一方、ソフトウェア定義ストレージは、少なくとも2017年までは大きなインパクトをもたらさないだろうと、ゴブカー氏は述べた。
コスト削減を目的に、ソフトウェア定義の適用を取り組むべきではない。その真価はアジリティにあるからだ。この分野は多くのベンダーが入り乱れる混戦模様だが、ベンダーロックインを回避しなくてはならない。データセンター全体を抽象化するための相互運用可能なAPIを探すようにする。なお、レガシーデータセンターからの脱却は、一朝一夕にはいかないことを覚悟しておこう。
4. ビッグデータ
ビッグデータ分析は現在、さまざまな方法で問題解決に利用されている。例えば、警察は、大量のパトロールカーで管轄区域をくまなく巡回することなく、リアルタイムデータと過去データに基づいて、犯罪が発生する可能性が高い場所を随時特定することで、犯罪を減らしている。
非構造化データやリアルタイム入力を扱うには、新しいデータアーキテクチャの構築が必要になる。これらは、既存アーキテクチャでは効果的に対処できないからだ。しかし、企業ITにおけるビッグデータアナリティクスの導入を妨げる最大の障害は、データアーキテクチャではない。ビッグデータのスキルを持つ人材の不足だ。
5. あらゆるモノのインターネット
「IT部門がコーヒーポットも担当する」ということだろうか。コーヒーポットにIPアドレスを割り当て、ネットワークに接続すれば、そうなるかもしれない。
インターネットに接続されたデバイスの増加とビッグデータアナリティクスの普及が相まって、企業がこうしたデバイスから得るデータを活用し、業務の自動化や改善を行うことが可能になっている。また、こうしたデバイスの増加に伴い、新たなタイプのエンドポイントをカバーするセキュリティ対策が求められている。こうした「あらゆるモノのインターネット」(Internet of Everything:IoE)というトレンドを受けて、データセンターのキャパシティー管理においては、単にハードウェアを買い足すのではなく、需要調整と、顧客の優先順位を踏まえたキャパシティー配分を行う必要がある。
データセンターは、長くもつように構築するのではなく、変更を加えていけるように構築すべきだと、ゴブカー氏は指摘した。
6. WebスケールIT
良くも悪くも、経営幹部は、「なぜIT部門は、GoogleやFacebook、Amazonにできることができないのか」を知りたがっている。
従来のハードウェアとソフトウェアでは、大手クラウドプロバイダーが実現する「WebスケールIT」を実現できない。大手クラウドプロバイダーのWebスケールITは、あらゆる機器へのソフトウェア定義の適用と、Open Compute Projectなどの取り組みで実践されているオープン哲学に基づくものだからだ。WebスケールITを実現するには、IT部門が、実験や失敗を許容する姿勢に大きく舵を切ることが不可欠だ。
7. モビリティ
あなたの会社の社員も顧客も、モバイルデバイスを使うのが当たり前になっている。社員が職場にモバイルデバイスを持ち込むことは、「BYOD(私物端末の業務利用)」と呼ばれてきたが、こうしたデバイスは生活や遊びの場面でますます活躍するようになり、今では、社員は職場におもちゃを持ち込んで仕事に使っているようなものだ。IT部門としては、このトレンドに取り残されるわけにはいかない。「IT部門は現場を分かっていない」とレッテルを貼られかねないからだ。
自社の技術ロードマップに、データの隔離(同じデバイス上でデータおよびアプリケーションを個人用とビジネス用に区別し、相互に隔離する)を盛り込むようにするとよい。
8. ITの両面展開
IT部門が地道に運用管理を行い、サーバの安定稼働を維持しても、そしてそれがいかに困難でも、IT部門をたたえる人はいない。ITの両面展開は、従来のIT運用管理を継続しながら、革新的な新しいプロセスの導入を安全に行うことを指している。
アプリケーション開発におけるペースレイヤリング(※)の考え方をITのロードマップに応用するとともに、顧客と密接な関係を築く方法を見いだすようにする。ITの両面展開を進めることで、IT部門ではより多様な人材が育つだろう。
※「アプリケーションを使用目的と変更の頻度で分類し、分類ごとに、異なる管理とガバナンスのプロセスを定義する新しい手法」としてGartnerが提唱しているもの。
9. ビジネスバリューダッシュボード
2017年までにITインフラおよびオペレーションチームの大部分は、「ビジネスバリューダッシュボード」を使ってビジネスサイドとコミュニケーションを行うようになる。
ビジネスバリューダッシュボードの内容を評価するとともに、その結果を材料にした効果的なコミュニケーションが成立するように、ITスタッフがビジネスステークホルダーの立場に立って考えられるように導くことが重要だ。
10. 既存の管理体制からの脱却
以上のトレンドは全て、シャドーITの助長につながる。シャドーITは、ビジネス部門が手っ取り早さを優先して、IT部門を通さずに勝手に利用しているITを指す。
一部のIT部門は新しいアプローチを試みている。シャドーITを全て却下するのではなく、概念実証テストのように、ビジネスユーザーがプロジェクト用にシャドーITをセットアップすることを許可するというアプローチだ。これらのIT部門は、こうしたプロジェクトで利用が成功したら、そのシャドーITを正式に取り込んでいる。
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