押さえておきたい重要キーワード
スマートフォン&タブレット、これから起こることを予測する
スマートフォンとタブレットが急速に普及し、われわれの生活や仕事の仕方は大きく変わった。この業界では今後どのようなことが起こるのだろうか。重要なキーワードを挙げる。
数年という短い期間に、タブレットとスマートフォンは、一般消費者向けの製品から企業のIT環境を抜本的に変える存在へと進化した。現代のビジネスパーソンは、いつでもどこでも仕事ができることを望んでいる。この状況はモバイル化によって簡単に実現できるようになった。
一般消費者向けデバイスが職場で使用されることが増えた結果、IT部門には新たな課題が付き付けられている。「モバイルデバイスで会社のデータにアクセスすることを許可すべきユーザーは誰だろうか」「会社のデータにアクセスすることを許可すべきデバイスはどれだろうか」「どのデータにアクセスできるようにして、どのようにアクセスできるようにしたらよいのだろうか」というような問題である。
スマートフォン/タブレット市場の歴史
企業のIT環境にスマートフォンやタブレットが流入するようになり、IT部門はスマートフォンとタブレットの管理について理解を深めている。その最たる例はBYOD(私物端末の業務利用)モデルだろう。課題は依然としてある。だが、スマートフォンとタブレットの普及により、ビジネスにとってモバイルは特別なものではなく、日常的なものになっている。企業全体の使命と同じ経過をたどっている。
何年もの間、カナダBlackBerryの「BlackBerry」はエンタープライズ環境のモバイルデバイスとして君臨してきた。IT部門は「BlackBerry Enterprise Server」(現在の「BlackBerry Enterprise Service」)を使用してBlackBerryデバイスを管理できた。一方、企業がモバイルデバイスを使用し始めた当初、米Appleの「iOS」、米Googleの「Android」、米Microsoftの「Windows Phone」を実行するデバイスには管理機能がなかった。
エンタープライズ市場にモバイルデバイスが流入したことに起因する問題により、セキュリティとコンプライアンスの問題に対応するための新しいテクノロジーが誕生した。最初に誕生したのは「モバイルデバイス管理」(MDM)だ。だが、モバイルに対するより明確で総合的なアプローチである「エンタープライズモビリティ管理」(EMM)の出現により、MDMは2番手のテクノロジーとなった。
EMMを使用すると、IT部門はデバイスだけでなく、さまざまなことを制御できるようになる。一般的にEMMプラットフォームは、デバイス、アプリケーション、コンテンツの管理とコラボレーションやユーザープロファイルのコンポーネントで構成されている。独自のメールクライアントやWebブラウザ、アプリケーション開発機能を搭載したEMMシステムもある。
ここ1年くらいの間に、EMM市場は大きく変化し、統合が進んでいる。テクノロジーベンダーはエンタープライズ環境のモバイル化という流れに沿って変化している。大手ベンダーは、各社のモバイル関連サービス/製品の充実を図るために、EMMのベンチャー企業を大々的に買収している。例えば、米IBM、米Citrix Systems、米Oracle、米VMwareなどでは、そのような動きが見られる。一方、独自のEMM製品を開発しているベンダーもある。Microsoft、米Dell Software、韓国Samsung Electronics、米CA Technologiesなどがその一例だ。
その数は減少傾向にあるがEMMに特化した独立系企業も存在する。その筆頭が米Good Technologyと米MobileIronであるのは誰もが認めるところだろう。2014年には、この2社を含む独立系EMMベンダーが買収されるという臆測が飛び交っている。
変化し始めたスマートフォン/タブレットの管理戦略
企業がデバイスをロックダウンするためにできることには限りがある。OSの改造という脅威とは常に隣り合わせだ。また、デバイスの盗難や紛失は避けられないだろう。企業の関心は徐々に「デバイスの管理」から「デバイスがアクセスするデータやアプリケーションの管理」へとシフトしている。
データの管理に関して企業は多くの選択肢を持っている。BYODでは、コンテナ化(サンドボックス化)により、ユーザーは個人のデータと仕事のデータを分離できる。例えば、メールクライアントのコンテナでは、個人用のメールと仕事のメールを分けることが可能だ。
デュアルペルソナでも同様のアプローチが採用されている。IT部門がデバイス上に仕事用のプロファイルと個人用のプロファイルを準備する必要がある。デュアルペルソナを設定しているデバイスでは、従業員の退職時に、IT部門が仕事用のプロファイルにあるデータを消去できる。
「モバイルアプリケーション管理」(MAM)を使用すると、IT部門は会社が管理しているデバイスにインストールされているアプリケーションによるアクセスやアプリケーションのデータを制御できる。モバイル化がビジネスプロセスを加速し、生産性を向上することについて企業が理解を深めるにつれ、モバイルアプリケーションの機能を解放して、モバイルアプリケーションを管理するための手段が重要になる。
既存のデスクトップアプリケーションをモバイルデバイスで実行可能なアプリとして再現するだけでは、モバイルアプリにはならない。モバイルアプリは、モバイルワーカーのニーズに合わせて調整し、さまざまなデバイスやOSとの互換性が確保されている必要がある。
モバイルアプリの開発に関してIT部門が採用したアプローチは「BaaS」(Backend as a Service)だ。BaaSではアプリケーションプログラミングインタフェース(API)とソフトウェア開発者キット(SDK)を使用して、モバイルアプリをクラウドコンピューティングサービスと関連付けている。
「モバイルコンテンツ管理」(MCM)市場は活発で、ITバイヤーに多数の選択肢が用意されている。企業は米Dropboxの「Dropbox」やGoogleの「Googleドライブ」などの一般消費者向けサービスを活用できる。加えて、米Box、米Acronis、米Accellion、米Soonr、米WatchDoxなどが提供するエンタープライズクラスの製品/サービスもある。
また、EMMシステムでMCMやセキュリティが確保されたファイル転送の機能を提供しているベンダーもある。例えば、Citrixの「Citrix ShareFile」やVMware傘下の米AirWartchの「AirWartch Secure Content Locker」などだ。
長年にわたって改善と実施が行われているにもかかわらず、BYODはいまだ多くの企業にとって謎が多い。IT部門によるBYODへの取り組みはビジネスによって異なる。会社が所有するBYOD専用のデバイスとしてスレートPCを導入している企業もある。一方、このような自由を認めていない企業もある。後者は規制の厳しい業界に多く見られる傾向だ。
BYODの代替手段としては「COPE」(Corporate-Owned, Personally Enabled:企業が所有する端末の個人利用)がある。COPEでは、企業がBYODデバイスと同じように管理/運用できるデバイスの選択肢をユーザーに与える。しかも、COPEはBYODよりもコスト効率が高い。というのも、企業が端末ベンダーから直接デバイスを購入して一括購入割引を得ることができるからだ。
BYODのポリシーではIT管理者とユーザーの両方に対して私物端末を業務で使用するためのベストプラクティスが提供可能だ。IT管理者は、会社とユーザーのニーズを調整する必要があり、適切なバランスを取るには機会と課題の両方に対応しなければならない。
BYODのポリシーには、許容できる用途や返却、アプリケーション、セキュリティ、デバイスの選択肢などに関する規約を含めることができる。エンタープライズ環境でモバイルデバイスを使用するときの注意事項を完全に網羅した分かりやすく簡潔なポリシーがあれば、IT部門とユーザーの両方の悩みを解消できるだろう。
モバイル化により、ユーザーは各自の生産性をより思い通りにコントロールできるようになった。IT部門がモバイル管理ツールを意のままに操れるようになったときには、企業全体がモバイル化の恩恵を受けられるようになるだろう。
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