“コミュ力”もランクイン
知らないと恥ずかしい2014年の「10大ITトレンド」
2014年、IT業界や技術開発はどのような方向に進むのか。米Gartnerのアナリストが2014年に考えるべき、10のITトレンドを挙げた。
「仮想化は、ITのアジリティ(俊敏性)を高める上で今後も重要な役割を果たす。ITへの要求は増大している。ITスキルは変化している」。米Gartnerのアナリスト、デビッド・カプチーオ氏は、企業のITインフラおよびオペレーション戦略に最も影響すると同氏が考えるトレンドをそう要約した。同氏は2013年10月に米フロリダ州オーランドで開催されたGartner Symposium/ITxpo 2013で講演し、最高情報責任者(CIO)が2014年のIT戦略の策定に当たって考慮すべき10の技術トレンドを説明した(その中には実証済みの技術も新しい技術も含まれる)。
1. SDN(Software Defined Networking)
SDNにより、技術者がソフトウェアを使ってネットワークを集中管理し、トラフィックパターンやワークロード要件、さらには自然災害のような事象にも迅速に対応することが可能になる。「SDNは、プロビジョニング時間を大幅に短縮する」とカプチーオ氏は語った。SDNを高く買っているのはGartnerだけではない。米Facebookなどの企業もそう評価している。
2. SDS(Software Defined Storage)
“Software Defined(ソフトウェア定義)”のトレンドは、ストレージにも波及している。従来のストレージネットワークは、ハードウェアやデータフォーマットに制約されていると、カプチーオ氏は指摘した。SDSは、ハードウェアではなくソフトウェアに依存しているため、データを合理的な場所に保存した上で、まとめてプールできる。
「20~30年前に一部の大手ベンダーがストレージで何を実現しようとしていたかを見ると、それはSDSとほとんど同じものだ。ただし、現在行われている取り組みとは異なり、彼らは全て自社ハードウェアで実現しようとしていた」(カプチーオ氏)
3. ハイブリッドクラウドサービス
クラウドは効果的なソリューションだが、万能ではない。そこでハイブリッドクラウドサービスの出番となる。多くのプロバイダーが企業にこのサービスを提供し、企業のIT部門がシステムを開発するか、レンタルするかを柔軟に選択できるようにしていると、カプチーオ氏は述べた。IT部門がうまく事を運べば、顧客には、サービスがどこで運用されているか、あるいは誰が開発したかは分からない。IT部門は重要なアプリケーションに集中し、そうではないアプリケーションをアウトソーシングできることになる。ただし、留意すべきことがある。それは、開発するか、レンタルするかにかかわらず、IT部門はエンドユーザーエクスペリエンスの責任を負うということだ。
4. 垂直統合型システム
垂直統合型システムは、IT担当者にとって新しい言葉ではなく、以前はアプライアンスと呼ばれていた。アプライアンスはそれぞれ単一の機能の実行に優れていた。現在、ベンダーは(単独で、あるいはパートナーと組んで)システムを統合し、サーバ、ストレージ、ネットワーク機能を含む1つのスタックを構築している。Gartnerはこれを“ファブリックベースのインフラ”と呼び、こうしたシステムは今後、さらに統合が進み、リソースのグローバルな共有が可能になると考えている。
「この統合の考え方は、スペース(特に、データセンタースペース)の活用を効率的に進めるという観点に通じるものだ」(カプチーオ氏)
5. アプリケーション開発の迅速化
顧客は、何でもこなせる大きなモノリシックアプリケーションを使おうとはしていないと、カプチーオ氏は指摘した。代わりに、それぞれ単機能の処理を得意とする多くのアプリケーションを使うようになっているという。IT部門はこのトレンドをどうすれば生かせるのか。アジャイル開発の手法がお手本になる。具体的には、「小さなアプリケーションを迅速に作成してリリースし、ユーザーの意見を踏まえて再び手を加える」という反復プロセスに習熟することで、アプリケーション開発サイクルをスピードアップするとよい。「そうすれば顧客は喜ぶし、実は開発もずっと楽になる」(同氏)
6. Internet of Things(モノのインターネット)(「“全て”のインターネット」とも呼ばれる)
ウェアラブルなスマートエレクトロニクス、シューズ、タトゥーが、10億ドル産業になろうとしているのは確かだ。しかし、それはIT部門にとって必ずしも最高のニュースではない。こうしたものの多くは固有のIPアドレスを持ち、それらは皆、いずれは分析に利用される可能性があるデータを生成する。こうした新しいもの全てをモニタリングする仕事は、最終的にIT部門の責任になるだろうと、カプチーオ氏は語った。「トンネルの向こうに見える光は、実はこちらに向かって走ってくる列車だ」
7. Open Compute Project
Facebookが米オレゴン州に独自のデータセンターを建設したとき、その目的は、メンテナンスしやすい省電力型のシステムを実現することにあった。その後、同社はOpen Compute Projectを立ち上げ、その仕様や設計を全て公開した。「彼らが長期的に目指しているのは、ベンダーの参加を得て、企業が共通の機器を使ってシステムを構築できるようになることだ」とカプチーオ氏。ラック、ストレージ、サーバなど、あらゆる機器がその射程に入っている。こうした標準化は、コストの低減につながる可能性があり、これはどんな規模の企業にとっても好都合だ。また、電源の共有のような踏み込んだ提携に道を開く可能性もある。「このような変化は一朝一夕には起こらないだろう。だがいずれにしても、この取り組みの行方からは目が離せない」(同氏)
8. インテリジェントデータセンター
“Software Defined”のさまざまな取り組みのもう1つの焦点である“インテリジェントデータセンター”は、「企業がビジネスニーズに基づいて、ワークロードの定義や移動を行うのに役立つ」とカプチーオ氏は説明した。言い換えれば、コンピューティングリソースがどこにあるかよりも、それらをどのように管理するかの方が重要になるということだ。仮想化がここで大きな役割を果たすが、カルチャーも同じく大きな役割を果たすと、同氏は語った。「仮想化が進んだ環境では、どのような組織体制にするかが大問題になる」。1つの有効な定石は、IT部門内の縦割りを排し、スタッフに部分最適ではなく、全体最適の考え方を促すことだ。
9. ITへの要求
ほとんどのCIOが既に知っていることを数字で示してみよう。企業の従業員は現在、平均4種類のデバイスを使っており、アクセスできるWebページは144億ページ以上、iPhoneアプリは80万種類、Androidアプリも80万種類に上る。ITへの要求は増大する一方だと、カプチーオ氏は強調した。幾つかの指標の年平均増加率を見ると、このことは歴然としている。例えば、ネットワーク帯域幅の年平均増加率は35%、ストレージ容量は50%、サーバワークロードは10%だ。
10. 従業員の質的変化
上に挙げた9つのITトレンドとともに、従業員も現在では組織の構造変化の要因となっている。若い従業員の勤続期間がこれまでより短くなっている一方で、ベビーブーマーは続々と65歳になり、組織固有の知識を持ったまま引退している他、スキルも変化していると、カプチーオ氏は説明した。CIOとIT幹部は、こうした雇用動向も踏まえなければ、技術ニーズを考えることはできない。長期的なIT計画を立案する際は、人事担当者にも加わってもらうのが得策ということかもしれないと、同氏は語った。
心をつかむIT
カナダのノークエスト大学の教育および情報技術ディレクターを務めるデーモン・メイズ氏にとっては、最後のテーマの内容が琴線に触れるものだった。適切なスキルを持った人材の発掘を課題として意識しているからだ。現在、同大学では、目覚しい技術進化のペースについてさまざまな見方がある。「技術が急速に進歩しているのであれば、ビジネスにおいて、期待通りにITの付加価値が得られないのはなぜか」といった声もありそうだと、同氏は語った。
しかし、そうした疑問にIT部門が答える場合、その会話は技術にはあまり関係がなく、ビジネスの話が多くを占めることになる。メイズ氏は、技術は「簡単な部分」だと述べた。さらに、経営側とIT部門が実りあるコミュニケーションを進めるには、IT担当がソフトスキルを持っている必要があるが、そうした人材はなかなか見つからないと説明した。同氏はソフトスキルの例として、ストーリーを語る力、難解なIT用語を日常会話の言葉でかみくだいて説明する力、さらにはカリスマ性を挙げた。
「相手の心をつかむことができなければならない」とメイズ氏。それは最近のIT人材の社内募集ではほとんどの場合、必ずしも条件に含まれていないスキルだ。
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