医療IT最新トピック
急増する介護疲れを防げ 拡大する「高齢者見守り・緊急通報サービス」市場
福岡市のオープンデータを活用したiOSアプリ、熱中症やインフルエンザの危険性を警告する温湿度計、拡大する高齢者見守り・緊急通報サービスの市場予測など、医療IT関連の最新トピックを紹介します。
「IT化が他分野より10年遅れている」ともいわれる医療業界だが、関連技術や製品、サービスは日々進化している。医療IT関連の動向を紹介する「医療IT最新トピック」。今回は、福岡市のオープンデータを活用したiOSアプリ、熱中症やインフルエンザの危険性を警告する温湿度計、高齢者見守り・緊急通報サービスの市場予測などを取り上げる。
「Microsoft Azure」ベースの介護支援システムを開発、女性と地域活性推進機構
女性の再雇用支援や医療関係のコミュニティ運営を手掛ける団体「女性と地域活性推進機構(WAO)」が、介護支援システム「Term Care Support System」(TCSS)の提供を開始。居宅介護支援・訪問看護事業を展開するピースクルーズと共同で開発した。
TCSSは介護計画やスタッフの勤務条件などで優先順位を変更してシミュレーションできる「シフト作成機能」、本日のルートマップ表示、ヘルパー同士の情報共有などの機能を備え、介護ヘルパーや事業所向けに提供する。また、介護サービスの利用者やその家族はスマートフォンで介護予定・実績を確認できる。日本マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」をベースに、アプリケーション開発フレームワーク「Ruby on Rails」で開発した。
今後、WAOではAzureのビッグデータ解析のエンジンを用いて、蓄積したデータから利用者や介護ヘルパーの特性を基に最適で効率的なシフト作成を可能にする機能を盛り込む予定だ。TCSSの販売価格は、個別見積もりとなる。
WAOは「年齢にかかわらず、全ての女性が業種・職種の枠を超えて、働き方を自ら選択し、やりがいを持って社会参加できる地域社会を創る」を理念に活動してきた。同団体によると、TCSSの開発背景には、離職率の高い介護業界の現状と、介護保険法で創設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」による24時間対応型サービスの登場があるという。介護サービスの利用者、介護業務に関わるスタッフそれぞれの負担を軽減するとともに、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられる仕組みである「地域包括ケア」システムの構築を支援する基盤だと説明する(発表:女性と地域活性推進機構<2015年2月26日>)。
処方情報を中心とする医療・介護従事者の連携支援クラウド「私のおくすりStationネット」、エス・エム・エス
介護・医療の情報サービスを提供するエス・エム・エスが、「私のおくすりStationネット」の提供を2015年4月に開始する。私のおくすりStationネットは、患者の処方情報を中心に医療・介護従事者の地域連携を支援するクラウドサービスだ。「かかりつけ薬局支援システム」「電子お薬手帳」「地域連携システム」のサービス3種で構成する。
かかりつけ薬局支援システムは、患者のレセプト情報をクライアントPCやタブレットなどで参照できるクラウドサービス。いつでも必要な時に場所を問わず患者情報にアクセスでき、レセプト情報のバックアップ環境としても利用できる。
患者向けサービスである電子お薬手帳では、レセプトコンピュータ(レセコン)と連動し、患者が薬局で受け取った調剤情報を自動的に取り込む。スマートフォンやタブレット、従来型のフィーチャーフォンでも利用可能だ。また、患者が携帯電話などで撮った処方せんの写真を送信することで、薬局が事前に処方せんを受け付ける「処方せん送信」機能を搭載する。患者の薬局での待ち時間の削減が期待できる。
地域医療連携システムは、かかりつけ薬局支援システムと電子お薬手帳のオプションとして利用できるサービスだ。医師やケアマネジャー、ヘルパーなど医療・介護従事者間で患者の服用薬情報を共有できる。薬の紛失時の情報参照や在宅ケアにおける他従事者への薬剤情報の提供、患者への服薬指導などに役立つ。地域医療連携システムは、エス・エム・エスが提供する「訪問薬局ナビ」「ケアマネドットコム」などの他サービスとも連係する(発表:エス・エム・エス<2015年2月26日>)。
福岡市のオープンデータを活用し、医療機関の情報検索を容易にするiOSアプリ
iOSアプリケーション開発を手掛けるArtisan Forceは、福岡市が提供するオープンデータを活用するアプリ「福岡市オープンデータビュー」を提供開始した。米Appleのスマートデバイス「iPhone」「iPad」向けに提供する。オープンデータとは、コンピュータでの判読に適したデータ形式で、二次利用が可能な利用ルールで国や地方自治体などの行政機関が公開したデータのことを指す。
福岡市オープンデータビューでは、福岡市の無料公衆無線LANサービス「Fukuoka City Wi-Fi」や公共施設、医療機関、防犯防災などの情報を検索・閲覧することが可能だ。また、地図上の任意地点や現在地、町名、鉄道駅、郵便番号を入力するだけで施設を検索でき、検索した施設はカテゴリごとにブックマークすることができる。
その他、カーナビアプリとの連係による経路検索、SNS投稿やメール送信機能を利用したコミュニケーションなども可能。Appleの公式アプリストア「App Store」から無料でダウンロードできる(発表:Artisan Force<2015年3月6日>)。
熱中症やインフルエンザの危険性を警告する温湿度計、サンワサプライ
クライアントPCの各種周辺機器を取り扱うサンワサプライが、デジタル温湿度計「CHE-TPHU2W」を発表した。
CHE-TPHU2Wでは上段に温度、中段に湿度、下段に時刻を表示する。温度・湿度については、前日および当日の最低、最高の数値も記録できる。また、室内の温度や湿度の条件から熱中症の注意・警戒度を5段階で表示したり、季節性インフルエンザ流行の注意・警戒度を3段階で表示したりすることも可能だ。
その他、あらかじめ閾値を設定した「暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)」値になるとブザーで通知する警告ブザー設定機能を搭載する。医療施設や学校、工場、家庭などでの利用を想定する。CHE-TPHU2Wは幅100×奥行き17×高さ120ミリで、重量が約143グラム(電池を含む)。オープン価格で提供する(発表:サンワサプライ<2015年3月9日>)。
患者の隠れた運動機能の異常を早期発見する技術を開発、富士通研究所ら
富士通研究所、Fujitsu Ireland、富士通の3社は、居住空間に備え付けたり、患者が身に着けたりする各種センサーの情報から、対象者の隠れた運動機能異常を早期発見する技術を開発した。
今回、研究成果として、これまで医療従事者が気付かなかった隠れた異常を発見する技術を開発したという。この技術では、環境センサーや体の動作センサー、バイタルセンサーなどを用いて、起立や歩行などの日常の動作を継続的に抽出し、さらに個人や症例ごとに異なる特徴を数値化する。また、連続する異なる動作や同時発生する動作などイベント間の隠れた関係性を抽出できる。各患者の症状に関わる生体イベントと発生条件に関わる環境イベントの関係性を繰り返し抽出することで、新たな運動機能不全の事象を発見しやすくする。
例えば、足をひきずるように歩く患者は、ベッドから起きた直後の歩行時にバランスを崩す傾向があるという。富士通研究所では、日常生活に潜んだ個人ごとに異なるリスクを検出できると説明する。
富士通研究所は2013年7月から、アイルランドの研究機関であるCASALA(Centre for Affective Solutions for Ambient Living Awareness)や、INSIGHT@UCD(Insight Centre for Data Analytics at University College Dublin ※)とともに研究プロジェクト「KIDUKUプロジェクト」を実施している。同プロジェクトは、ITを活用した高齢者や患者の健康モニタリングと自立生活支援を目的とする。アイルランドのスマートハウスに居住する高齢者や患者に対して、居住環境に埋め込んだ約110種類のセンサーと患者が身に着けたウェアラブルセンサーから日常生活における大量のデータを収集している。
※ アイルランドの複数大学が共同運営する研究機関における、University College Dublinの拠点
富士通研究所、Fujitsu Ireland、富士通の3社は今後、この技術の2017年度中の実用化を目指し、実証プロジェクトを通じて他の症例での検証、各種センサーをはじめとするIT機器を備え付けた居住空間(スマートハウス)外での適用や検証を進める予定だ(発表:富士通研究所、Fujitsu Ireland、富士通<2015年3月10日>)。
2014年の高齢者見守り・緊急通報サービス市場は142億円、シード・プランニング調査
市場調査会社のシード・プランニングは2015年3月3日、高齢者見守り・緊急通報サービスの市場動向とニーズ調査結果をまとめた「2015年版 高齢者見守り・緊急通報サービスの市場動向とニーズ調査」を発行した。
同社では、2014年の高齢者見守り・緊急通報サービスの市場規模を142億円と見込む。既存の大手参入事業者が実績を挙げる中、新規参入や新サービスの投入などが増えたと分析する。また、今後も自治体の受託サービスを中心に市場は堅調に拡大し、2025年には227億円規模に成長すると予測する。
市場の成長要因として、シード・プランニングは「2025年ごろに団塊世代の多くが後期高齢者となり、認知症高齢者の人口が増大する」ことを挙げる。さらに独居高齢世帯の増加に伴い消費者需要が顕在化するとともに、従業員の介護休暇・離職に対応する企業の福利厚生施策としてのサービス利用が促進すると見込む。また、以下の項目を同市場の技術的進化として挙げる。
- スマートデバイス、ウェアラブル機器、M2M、IoT技術の応用
- 関連システムやサービス、AI(人工知能)のクラウド化
- 見守りロボットの進化、普及
- 新しい生体センシング技術の実用化
- 停電や通信障害に強い通信インフラの運用技術
同調査リポートでは、独り暮らしの親を持つ世代を対象に、高齢者見守り・緊急通報サービスに対する関心や利用意向などを調査した結果も紹介。独居の親に対する不安としては「心身の健康の不安」「外出や日常生活行動の心配」が上位を占め、サービスの利用動向としては「既に利用」「具体的に検討中」「必要性を強く感じる」の合計が全体の23%となった(発表:シード・プランニング<2015年3月9日>)。
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