医療IT最新トピック
日本人の死因上位「がん」「循環器疾患」などの予防、克服を目指すプロジェクトが始動
大崎市民病院や長野市民病院のシステム刷新事例、富士通と国立高度専門医療研究センターらの共同研究、JINSとオムロンソフトウェアが取り組むアイウェア端末の開発など、医療IT関連の最新トピックを紹介します。
「IT化が他分野より10年遅れている」ともいわれる医療業界だが、関連技術や製品、サービスは日々進化している。医療IT関連の動向を紹介する「医療IT最新トピック」。今回は、大崎市民病院や長野市民病院のシステム刷新事例、健康長寿社会の実現に向けた富士通と国立高度専門医療研究センター、東京医科歯科大学の共同研究、メガネブランド「JINS」のジェイアイエヌとオムロンソフトウェアが取り組むアイウェア端末の開発などを取り上げる。
業務日報機能でクリニック経営の改善を支援、メディ・ウェブ
医療向けクラウドサービス開発のメディ・ウェブが、同社のクラウド型診療支援サービス「3Bees」に新機能「Bee業務日報」を追加した。Bee業務日報では、医師が日々入力した患者数や診療報酬額、スタッフの配置などを蓄積し、そのデータを基に現在の経営状況を可視化する。自院の経営状況の現状と予測値とのギャップ、実績値の経時的変化を把握するリポート機能、患者数や平均診療報酬の予測を立ててスタッフと共有できる売り上げ予測・診療計画機能などを備える。
メディ・ウェブによるとBee業務日報は、過去の実績値や予測値との比較機能により日々の診療結果を可視化したり、業務や診療のプロセスが抱える課題を分析することを支援し、経営の改善に役立つという(発表:メディ・ウェブ<2014年12月19日>)。
更新対象の物理サーバ9割を削減し、共通仮想化基盤を構築――大崎市民病院
大崎市民病院本院(宮城県大崎市)が、医療情報システムを稼働させる共通仮想化基盤を構築した。大崎市民病院が現在の場所へ新築・移転した2014年7月から稼働。担当したネットワンシステムズが発表した。
宮城県北地域の基幹病院である同病院では、約30万人を対象とする大崎・栗原医療圏(栗原市、大崎市、加美郡、遠田郡)の中核的医療機関としての役割を担う。従来、大崎市民病院が運用する医療情報システムでは、サーバやストレージ、ネットワークなどのITインフラをシステムごとに個別導入しており、設備投資コストと運用管理負荷が大きな課題となっていた。
病院の新築・移転を機に、同病院では医療情報システム共通の仮想化基盤の構築に着手。更新予定だった電子カルテシステムや13種類の部門システムなどを稼働させる40台以上の既存物理サーバを約9割削減し、5台のブレードサーバへと集約した。共通仮想化基盤には、サーバやストレージなどを組み合わせた統合システムの参照用構成(リファレンスアーキテクチャ)である「EMC VSPEX」をベースにした事前検証済みの仮想化基盤パッケージを採用した。
さらに仮想化基盤、各種仮想サーバを移転作業前に構築しておいたことで、移転に伴うシステム停止時間を3時間まで短縮化。ネットワンシステムズの遠隔モニタリングサービスを利用し、システムの可用性向上と安定的な医療サービスの提供に役立てているという。今後、大崎市民病院では物理サーバで稼働している残り20種類の部門システムサーバの仮想化、約1300台の医療情報システム端末の仮想デスクトップ化でコスト削減と生産性向上を推進する考え(発表:ネットワンシステムズ<2014年12月22日>)。
国立高度専門医療研究センター、東京医科歯科大学らと健康長寿社会の実現に向けたプロジェクトを始動――富士通
富士通が健康長寿社会の実現に向け、国立高度専門医療研究センターの3法人、東京医科歯科大学などと共同研究を行う協定を締結した。ICT活用による疾患予防、克服などのモデル構築と普及を目指すプロジェクトを実施する。
国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立長寿医療研究センターの国立高度専門医療研究センター3法人とは、日本人の死因上位を占める「がん」「循環器疾患」「認知症」などの予防と克服を目的とし、それぞれの機関の特色に沿った研究を行う。また、東京医科歯科大学とは、疾患の重症化予防の鍵となる医療分野のビッグデータ解析手法を共同開発する。
| 連携機関 | 研究内容 | 期間、成果物 | 期待できる効果 |
|---|---|---|---|
| 国立がん研究センター | がんのメディカルゲノムセンター機能(注)に必要なゲノム情報と診療情報の統合 | 2016年度末までにがんのゲノム医療実施体制のプロトタイプを整備予定 | がんの治療、予防・先制医療について、最新のゲノム医科学とICT技術、知識を動員したゲノム医療の実現化 |
| 国立循環器病研究センター | 循環器疾患の克服・制圧に向け、生活習慣(食事、運動、睡眠、口腔ケアなど)のデータを解析し、行動変容を促す新たな介入方法や効果判定法を開発 | 2018年度末までにエビデンス構築とプログラム開発の完了を目標とする | 循環器疾患の発症・重症化の予防や先制医療など、ICTを活用した新規医療サービスや健康関連ビジネスの創出 |
| 国立長寿医療研究センター | 認知症の早期発見システムの構築。対象者の医学的情報と日常生活情報を蓄積し、それらのビッグデータから認知症の予兆を予測するための技術を確立する | 2018年度末までに認知症の予兆を発見するシステムを開発することが目標 | ビッグデータを活用した認知症の早期発見による早期治療や予防システムの構築を図り、関連サービスや新規ビジネスを創出 |
| 東京医科歯科大学 | 網羅的生体分子情報(オミックス)を統合したデータベース、解析技法の確立。オミックスを基盤とした次世代医療システムに関する情報収集方法と情報構築方法の研究を実施 | 2014年度末までのプロトタイプ作成を目標とする | 臨床情報、オミックス、生活習慣情報を効果的に収集する手法、構築形式の確立と臨床現場での個別化医療を実現する分析手法を開発 |
注 メディカルゲノムセンター機能:エビデンスの高い解析結果を基に、医薬品効果予測による治療選択、適切な予測診断の確立、遺伝リスクに応じた予防的医療に関する臨床応用を目指す取り組みのこと。
富士通では2015年3月をめどに各機関との研究内容を具体化し、共同研究を開始する予定(発表:富士通<2014年12月24日>)。
睡眠時間や眠りの深さを計測可能なツールを提供、イサナドットネット
スマートフォンのアプリ開発などを行うイサナドットネットが、アプリ提供事業者向けにヘルスケアアプリ開発ツール群「BiSM」を開発。その第一弾として、スマートフォンアプリに睡眠計機能を追加できる「BiSM for sleep」を提供開始した。
ソフトウェア開発事業者は、開発中のアプリにBiSM for sleepのソフトウェア開発キット(SDK)を組み込むことで睡眠情報を計測する機能を追加できる。睡眠時間や5分ごとの睡眠状態(眠りの深さ)などを取得してグラフ表示する機能も用意。睡眠中のいびきや寝言を録音することも可能だ(発表:イサナドットネット<2014年12月25日>)。
電子版お薬手帳のiPhone版を運用開始、日本調剤
日本調剤が電子版お薬手帳「お薬手帳プラス」のiPhone版を運用開始した。iPhone版の対象は「iOS 8」以降、「iPhone 5」以降の端末で、日本調剤の調剤薬局全店舗で利用できる。Android版、クライアントPC向けのWebブラウザ版は2014年10月から運用している。
お薬手帳プラスは、薬の名称や用法・用量などの服薬情報、ジェネリック医薬品の有無、差額などを表示する。また、マルチユーザー機能により、家族など複数ユーザーの服薬情報の管理が可能。さらに利用者の健康管理をサポートする、カレンダー、アラーム、健康情報管理機能などを備えている。
その他、処方せん送信サービス機能によって、最寄りの日本調剤の薬局へ処方せん情報を送信できる。日本調剤の薬局で紙の「お薬手帳」を使って服薬管理をしている患者が利用対象となる(発表:日本調剤<2015年01月05日>)。
長野市民病院、電子カルテのデータ保全に「Microsoft Azure」を採用
長野市民病院(長野県長野市)が大規模災害に備えた電子カルテのデータの保全に、Microsoftのクラウド基盤「Microsoft Azure」の日本データセンターを採用。提供元の日本マイクロソフトが発表した。
55万人が暮らす長野医療圏の中核をなす医療機関の1つである長野市民病院では、大規模な災害発生時でも確実に診療を継続できる体制を整えるべく、電子カルテなどの院内システムの冗長化を図ってきた。
こうした中、東日本大震災や長野県北部地震などの影響を目の当たりにした同院では、遠隔地へのデータバックアップの重要性を実感。適正なコストで安心、安全な運用が保証できるサービスを3年検討した結果、Microsoft Azureと、Microsoft Azureをバックアップ先として指定できる台湾QNAP SystemsのNAS「QNAP Turbo NAS」を採用した。長野市民病院では、QNAP Turbo NASをデータの入り口として1日1回、電子カルテのフルバックアップデータを圧縮。暗号化してMicrosoft Azureに保存している(発表:日本マイクロソフト<2015年01月06日>)。
JINSとオムロンヘルスケア、次世代メガネ型端末の共同開発プロジェクト
ジェイアイエヌとオムロンヘルスケアが、メガネ型端末「JINS MEME」をベースとした新しいウェアラブル端末製品を共同開発することを発表した。2016年春の商品化を目指す。
ジェイアイエヌが開発中のJINS MEMEは、眼の動きによって生じる微細な電位差(眼電位)を正確に読み取る三点式眼電位センサーと六軸センサーを搭載したアイウェア。同センサーを通じて、眠気や集中度、体のバランスなどの生体データを取得できる。JINS MEMEには、他の機器との接続が可能な拡張インタフェースを用意しており、オムロンヘルスケアが持つ生体計測・解析技術を応用して拡張型デバイスを共同開発する。
オムロンヘルスケアはJINS MEMEについて、「付加価値の高い頭部生体データの取得が可能」「最大16時間の常時センシングを実現」「誰でもかけられるデザインであるメガネ型である」点などを評価しているという(発表:ジェイアイエヌ、オムロンヘルスケア<2015年01月07日>)。
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