「vCloud Air」は戦えるか?
VMware本格参入でますます面白くなるハイブリッドクラウド市場、AWSとAzureへの対抗軸を占う
VMwareはハイブリッドクラウドの販売に仮想化の顧客ベースを活用しようとしているが、果たしてAWSとAzureから支配権を奪うことはできるのだろうか。
今日、クラウド市場では激しい競争が繰り広げられている。米Amazon Web Services(Amazon)、米Google、米Microsoftはいずれもパブリッククラウド市場で迅速なスタートを切ったが、企業によるクラウド活用が進展する中、形勢は大きく変わりつつある。米VMwareは目下、追い掛ける立場にあるが、有力候補の1つだ。VMwareは競合他社に追い付こうと、企業向けクラウドの分野でGoogleと提携し、Googleの各種クラウドサービスを補完する役割を担っている。
Linuxディストリビューション「Ubuntu」を開発する英Canonicalが3000人のITスタッフを対象に実施した調査の結果は、クラウド市場の競争の行方を読み解く鍵となる。調査では、60%以上の回答者が「向こう3年間でハイブリッドクラウドに移行するつもりだ」と答えている。つまり、クラウド市場の今後を決定付ける戦いの場はハイブリッドクラウド市場であるということだ。目下、この市場は慌ただしく変化している。
ハイブリッドクラウドの主要プレーヤー
ハイブリッドクラウドを構築するためのソリューションは、オープンソースのクラウド基盤「OpenStack」の他、AWSクラウドと「Microsoft Azure」でも提供されている。AWSとAzureはいずれも、パブリッククラウドにプライベートクラウドを追加する方向へと進んでいる。ハイブリッドクラウドをめぐる戦いにはもう1つ注目すべき存在がある。VMwareのハイブリッドクラウド「VMware vCloud Air」だ。VMwareはプライベートクラウド市場で確立した基盤を活用し、パブリック分野に進出したい考えだ。
Azureは、コロケーションとクラウドサービスを組み合わせて提供する事業者の他、米IBMなどの企業から支持を得て、AWSをはるかに上回る勢いで成長している。Azureの目下の競争相手はOpenStackだ。OpenStackはもともと米Rackspaceが開発したものだが、その後オープンソースに移行し、多くの支持者を獲得している。
VMwareのvCloud Airは比較的後発であり、その点では、かつてのAzureと同様、いくらか不利な立場にある。
米調査会社451 Researchの調査ディレクター、アル・サダウスキー氏は次のように指摘する。「AzureにはMicrosoftユーザーという有利な基盤があるので、ハイブリッドクラウドへの移行を進めやすいはずだ。VMwareも同様のアプローチを取っている。サーバ仮想化製品『VMware vSphere』の顧客基盤をハイブリッドクラウド戦略に活用しようとの思惑だ」
ある意味、VMwareは他のベンダーとは逆方向からハイブリッドクラウド市場に進出している。成熟した仮想化技術によって、既にVMwareはプライベートクラウド市場では圧倒的な地位を築いている。そのプライベートクラウドにパブリッククラウドを追加できるvCloud Airは通信事業者から支持を集めている。一方、IaaS(Infrastructure as a Service)でコロケーションを実現することも可能となっている。この場合、VMwareと同様、ストレージ管理のための強力なツールセットが提供される。
Microsoftの顧客基盤を生かせるという点でAzureは有利だ。だが、果たしてAzureはそれをプライベートクラウド分野での成功につなげられるのだろうか。Azureは通信事業者との提携に重点を置いているようだ。パブリッククラウド事業者の施設内にプライベートクラウドを設置する「ハイブリッドクラウドコロケーションモデル」に照準を合わせているのなら、これは極めて理にかなったことだ。このモデルが推進される背景には、コンプライアンスとデータガバナンスを実現するための最良の策はデータをプライベートな施設内にとどめておくことだという現実がある。
AWSはパブリッククラウドのリーダーだが、企業データセンターの分野での経験は浅い。そのため、この分野ではさまざまな協業体制が築かれつつあり、VMwareはストレージ製品をめぐる米NetAppや、クラウドエコシステムの構築に向けた米Veeamや米Riverbedなどと、ハイブリッドクラウド分野の鍵となる各種の提携を進めている。Azureも積極的にパートナーを増やしており、OpenStackは幅広い企業からの支持を固めている。
VMwareによれば、AWSとAzureはVMwareよりも低価格だが、コストパフォーマンスではVMwareが大きくリードしている。そして、ユーザーにとって本当に重要なのはコストパフォーマンスだという。米国では1分ごとに課金される従量制のプランも提供され、vCloud Airは魅力的な選択肢となっている。長期的にはAWSと他社との提携は弱そうだ。AWSが難攻不落に思えた1年前であれば、そのような指摘は出なかったであろう。だが、ハイブリッドクラウド重視への動きは、向こう5年間でクラウド市場の形勢を一変させることになりそうだ。
Googleとの提携が後押しに
パブリッククラウドのスケールアウトに関しては、VMwareの能力はあまり高くない。だがその問題は、最近発表されたGoogleとの提携によって解消されそうだ。両社は2015年1月末、幾つかのサービスを統合する計画を発表した。とりわけ、vCloud Airでスケールアウト型ストレージが実現するのは重要なポイントだ。
「Googleはエンタープライズ市場での存在感が薄い。vCloud Airをめぐる提携はGoogleにとって補完的な役割を果たす」と、451 Researchのサダウスキー氏は指摘する。
警戒すべき存在もある。まず米Dockerの「Docker」に代表されるようなコンテナ型仮想化ソフトウェアは、仮想化の常識を変えることになりそうだ。その影響がどの程度のものかは定かでないが、Googleはコンテナモデルを積極的に推進しており、同社がハイブリッドクラウド分野への参戦にコンテナモデルを活用する可能性もある。
VMwareはDocker、Google、米Pivotalと協業し、vCloud Airにコンテナ技術を統合すると発表した。Azureもコンテナ技術を採用している。コンテナ技術に関しては、各社とも比較的同等レベルでの競争となりそうだ。ただし、VMwareが既存の仮想化製品にコンテナ技術をどのように採用するかについての詳細はまだあまり固まっていないように見受けられる。
OpenStackも有力な選択肢に
OpenStackも勢いを伸ばしそうだ。米Hewlett-Packard Companyなど各社がOpenStackを重視したクラウド戦略を展開している。また現在15社がOpenStackディストリビューションを提供しており、それぞれが差別化を図っている。OpenStackのプロジェクトは広範囲にわたってうまく機能しており、現在OpenStackはハイブリッドクラウドの強力な競争相手となっている。VMwareは「敵をそばに置く」という戦略を選択し、vSphere環境でOpenStackを動作させられるようにしている。この方法はハイブリッドクラウド導入への代替経路となり、ユーザーはvSphereとOpenStackの管理ツールを切り替えて使える。
「当社の調査によると、企業はオープンソースへの移行を望んではいるが、ほとんどの企業は全面移行できる状態にはない。企業は大概VMwareにかなりの投資をしているので、少なくとも短期的には、適切にサポートされたVMwareとOpenStackのマッシュアップが魅力的な選択肢となるだろう」と、451 Researchのサダウスキー氏は語る。
クラウドの未来はどうなるのか
長期的に見て最も注意すべきは、クラウドモデル自体の未来である。今のところ魅力的なモデルは、コロケーションとのハイブリッド環境だ。なぜなら、データが全て1つのLAN上に置かれるからだが、これはパブリッククラウドにも当てはまる。問題は、データのセキュリティであり、パブリッククラウドが適正に機能するためには、米HIPAA法(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)などの法規制を順守あるいは上回る必要がある。言い換えると、長期的に見て多くの企業はいずれ完全なパブリッククラウドを選択することになるのかもしれない。そうなると、クラウド市場の最終勝者はプロプライエタリなパブリッククラウドということになる。
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