勝負はまだついていない――
iOS 8 vs. Android 5.0、管理機能の比較で見えてきた両OSの選択ポイント
iOSは規格が統一されているので、Androidよりも管理が容易だ。だがGoogleも企業向けプログラム「Android for Work」などの新機能で、急速な巻き返しをみせている。
今日、企業IT部門の多くは米GoogleのモバイルOS「Android」よりも米Appleの「iOS」を好む。Androidはオープンなプラットフォームであり、マルウェアなどの攻撃の影響を受けやすいからだ。とはいえ、iOS 8とAndroid 5.0の競争は最初から勝負がついているということではない(関連記事:iOS 8 vs. Android 5.0、セキュリティ機能の差は本当に縮まったか?)。
IT部門はiOS 8を全面的に支持しているわけではない。だが少なくともiOS 8では、サポートすべきモバイル環境は単一で同質的であり、個別対応を要するケースは比較的少ない。一方では、Googleもセキュリティと管理面でのAndroidに対するIT部門の懸念を解消すべく積極的な取り組みを進めており、その結果、Android 5.0はエンタープライズモバイル管理(EMM)の分野で大きな前進を遂げている。今後はAndroidプラットフォームに対するIT部門の認識も変わることが予想される。
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IT部門は統一性を重視
Appleに有利な要素としてはもう1つ、「既にiOS 8にアップグレードしているユーザー数が多く、より統一性のある管理が可能」という側面がある。iOS搭載端末は既に81%がiOS 8にアップグレードされているので、アクティベーションやプロビジョニング、管理、監視を行うべきApple端末は、数は多いながらも均等な性質が維持される。一方、Androidを搭載するスマートフォンとタブレットでのAndroid 5.0の普及率はわずか5.4%であり、Android 5.0を実行できる端末が相対的に少ないことが今後も普及の妨げとなりそうだ。
Android 5.0へのアップグレードはなぜ進まないのだろうか。韓国Samsung Electronics、台湾HTC、米Motorola、韓国LGなどのメーカーは通常、新しいファームウェアを提供する前にGoogleのOSにカスタマイズを施す。OEM(相手先ブランド製造会社)の端末の場合、OSが古いバージョンに固定されてアップデートできないというのは、珍しいことではない。そのため、1つのバージョンだけをサポートすればいいiOSとは異なり、Androidの場合、IT部門は1つのバージョンのさまざまな変種を実行する多様なスマートフォンをサポートする必要がある。
企業によるAndroid端末の管理を支援するプログラム「Android for Work」をGoogleがリリースしたことで、この状況は多少改善されている。Android for Workを使えば、業務アプリ用のコンテナを作成して管理下に置き、Android for Workに対応する全ての端末を一元的に管理できる。ただしAndroid for WorkをネイティブでサポートするのはAndroid 5.0のみで、Android 4.0からAndroid 4.4までのOSを搭載する端末には「Android for Work」アプリをインストールして使用する。だがたとえAndroid 5.0を実行する端末であっても、メーカー固有のハードウェア特性の問題は残る。例えば、ハードウェア暗号化をサポートしていない端末の場合、Android 5.0は動作しても、Android for Workは実行できない。
端末の一元管理と自動設定
一方のAppleはiOS 4でネイティブなモバイル端末管理(MDM)用APIの提供を開始し、「iPhone」や「iPad」などの端末をワイヤレスで管理できるようにして以来、企業の支持を得るための取り組みを進めている。実際、MDM APIは成熟度を増し、より細かい設定や幅広い設定が可能となり、多くのサードパーティー製MDM製品でiOS 8端末とアプリの登録および設定を行えるようになっている。
会社所有のiOS端末については、Appleの「Device Enrollment Program」(DEP)を使っても、MDMへの登録や設定を完全に自動化できる。プレインストールされたMDMコントロールをユーザーが勝手に削除するのを防ぐことも可能だ。私物のApple端末を業務利用する場合は端末を個別に登録する必要があるが、多くのIT部門はiOS 8端末のライフサイクル管理の方法をよく理解している。
Android 5.0では、ネイティブなMDM APIが追加されるなど、MDM機能を中心に巻き返しが図られており、Googleの「Device Policy Client」アプリにより、サードパーティー製MDM製品によるリモート制御が可能となっている。これまでもAndroid端末向けにはサードパーティーのMDMサービスが提供されていたが、Googleが提供する「Device Administration API」は限定的であり、そうしたサービスを有効に活用するには不十分だった。
GoogleはAndroid for Workでサードパーティーと提携し(提携先は増加中だ)、各社のMDM製品を使って仕事用プロファイルの一括登録や設定を行えるようにした。仕事用アプリや文書などの業務データは暗号化されたコンテナに格納され、IT部門は仕事用プロファイルを使ってコンテナを管理する。iOS標準のMDM機能とは異なり、Android for Workコンテナは端末上のその他の要素とは視覚的かつ仮想的に隔離されているので、IT部門が管理できる要素とできない要素の区別は明確だ。
サードパーティーのMDM製品を使いたくない場合には、米Microsoftの「Exchange ActiveSync」(EAS)を使用してiOS 8端末やAndroid 5.0端末を管理するという方法もある。ただしこの場合も、Android端末はOEM固有の特性によってEAS経由の管理が複雑になりかねないので注意が必要だ。さらにAppleは企業や学校で多数のiPhoneやiPadを一括設定するための管理ツール「Apple Configurator」をサポートしており、Googleも「Android Device Manager」と「Google for Work」のサポートを維持している。
なお、Samsungの「Samsung KNOX」のように、独自の管理サービスを提供しているAndroidのOEMは多い。だが、Android for Workを使いたい企業はGoogleと提携するサードパーティーのMDM製品を選択し、オンラインでGoogleの登録プロセスを完了する必要がある。この登録プロセスでは、ドメイン名の所有権を証明するために、会社のWebサイトかドメインネームシステムの設定を更新する必要がある。
アプリの管理
スマートフォンとタブレットがますます主流になる中で、IT部門にはモバイル端末の管理と保護だけでなく、ビジネスプロセスを合理化する役割が求められている。そこで重要となるのが、モバイルアプリケーション管理(MAM)だ。MAMは、業務に必須のアプリや推奨アプリの導入、管理、保守でIT部門を支援する。
AppleはiOS 4でMAMのネイティブサポートを追加し、Googleを大きく引き離した。iOSのAPIとサードパーティーのMAMサービスを組み合わせることで、IT部門はApp Storeのアプリと社内アプリの両方を安全に導入できる。Appleの「Volume Purchase Program」(VPP)も便利なプログラムだ。このプログラムを使えば、管理対象のiOS端末向けに有料アプリのライセンスを一括購入して管理できる。さらにIT部門には、アプリケーションプロファイルを使ってアプリのプロビジョニングを行うという方法もある。またiOS 8はアプリごとのVPN(仮想プライベートネットワーク)接続(Per-App VPN)をサポートするので、社内ネットワークへの接続を許可するか否かをアプリ単位で管理できる。
Android用のサードパーティー製MAM製品はこれまでも提供されてきたが、Android for Workによって、AndroidでもMAMがネイティブでサポートされることになった。Android for Workコンテナに展開されているアプリはIT部門が有効にしなければならず、ユーザーは管理対象外の自分のアプリをこのコンテナにインストールすることはできない。「Google Play for Work」を使って専用アプリストアを構築すれば、自動インストールするアプリやユーザーへの推奨アプリだけを選別して配布できる。さらにAndroid for Workにはセキュアな業務アプリスイートと特権ID管理アプリも含まれるので、スーパーユーザーアカウントの監視や保護に役立つ。社内VPNの使用を義務化したり拒否したりなど、アプリの各種設定も行える。
結論としては、iOS 8とAndroid 5.0の勝負はこれまでほど一方的ではないようだ。Googleが企業IT部門のニーズに応えるべく正しい方向に進化していることは、Android 5.0が証明している。ただし全体的な成熟度では、Android 5.0は依然としてiOS 8に後れを取っている。恐らくIT部門は当面はiOSの方を好むだろうが、そろそろ企業レベルの本格的なモバイル環境としてAndroidを選択肢に加えてもいいころかもしれない。
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