CEOナデラ氏が語るクラウドの秘密兵器「Azure SQL」
違うようで実は似ているMicrosoftとAmazonのクラウド戦略、直接対決はより激化へ
米Microsoftは、コンピューティングのさらなる変革に力を注いでいる。その中心となるのは、同社の「SQL Server」と「Azure SQL」である。だが、同社は米Amazonとのクラウドをめぐる厳しい競争に直面している。
米Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるサトヤ・ナデラ氏は、2015年5月上旬に米シカゴで開催された「Microsoft Ignite 2015」で「SQL Server 2016」を発表した際、やや興奮した様子を見せた。その1週間前に開催された別のカンファレンスで「Azure SQL Data Warehouse」を発表したときにも、同様の熱意が見て取れた。
Ignite 2015の参加者に向けて、Microsoftの永遠のミッションは「地球上の全ての人と組織の助けになることだ」とナデラ氏は語った。米国中西部在住の筆者の友人なら、このような発言を「大げさだ」というだろう。だが、ナデラ氏による大胆な主張は、あながち見当違いではないかもしれない。
永遠のミッションを再確認したナデラ氏の熱意
メインフレームからサーバ/PCという劇的な転換期を経験した人は、Microsoftと他の少数の企業が企業コンピューティングを変えたと口をそろえていうだろう。複雑なテクノロジーを単純にし、手ごろな価格設定にした。その結果、企業コンピューティングは誰でも利用できるようになった。ナデラ氏はCEOに就任してから日が浅い。Microsoftの「永遠のミッション」を再確認した同氏の熱意は当然のものだろう。
リレーショナルデータベースは、Microsoftが単純化および低価格化した技術を利用するテクノロジーの1つだ。クライアント/サーバ方式を利用していた時代に、Microsoftは米Sybase(現米SAP子会社)から「SQL Server」の権利を購入し、米IBMや米Oracleが販売するリレーショナルデータベース製品に代わる低価格な製品としてSQL Serverの開発に乗り出した。
近年のSQL Server追加された機能の大部分は、革新的な最新コンピュータアーキテクチャであるクラウドに関連している。
Microsoft IgniteとBuildが予言したAzureデータの動き
Microsoft Igniteと、その前に米サンフランシスコで開催されたMicrosoftイベント「Build 2015」では、SQL Serverに関する最新情報が発信された。その多くは、同社のAzureクラウド事業に関連したものだ。
Microsoftは同イベントで、これからリリースされるAzure SQL Data Warehouseについて説明した。Azure SQL Data Warehouseは、柔軟なスケールアップ/ダウンが可能で、同社の「Azure Machine Learning」だけでなく、「Azure Data Lake」にも接続する。Azure Data Lakeは、米Clouderaと米HortonworksのHadoopシステムと統合する。その一方で、「Apache HBase」のカラム型「NoSQL」データベースを使用する「Azure HDInsight」といったMicrosoftのHadoopツールもサポートする。
Microsoftにとって、オンプレミスのデータとクラウドベースのシステムを関連付けられることは重要だ。そう語るのは、Microsoftでデータプラットフォーム担当のコーポレートバイスプレジデントを務めるT・K・“ランガ”・レンガラジャン氏だ。同氏によれば、これからリリースされるSQL Server 2016には「Stretch Database」テクノロジーが搭載されるという。このテクノロジーにより、ユーザーはトランザクションデータをデータセンターからAzureクラウドに動的に移動することができる。また、必要に応じてクエリすることも可能だ。
クラウド分野で虎視眈々とAmazonの座を狙っているMicrosoft
クラウドコンピューティングの分野で、MicrosoftがAmazonとの競争を避けることはできない。Amazonはその昔、本来の事業を拡大して、書籍出版事業に混乱をもたらした。その後、コンピュータ業界にも参入して波乱を巻き起こしたりもした。そして、いつの間にかクラウドコンピューティングの分野で絶対的なリーダーとして君臨するようになった。
Amazonの功績は、低価格な大規模な分散コンピューティングを実現したことだけではない。非常に高度なデータテクノロジーも生み出した。同社はリレーショナルサービスの「Amazon RDS」、NoSQLサービスの「Amazon DynamoDB」「Amazon ElastiCache」、大きな影響力を持つ並列データウェアハウス「Amazon Redshift」をクラウドで提供している。
Microsoftは追う側だが、ある程度Amazonの勢いを抑えられつつあるかもしれない。米Synergy Research Groupは、クラウドインフラサービスの大手プロバイダーで2015年第1四半期に最高の収益成長率(96%)を達成したのはMicrosoftだと評価している。Microsoftが、米Salesforce、IBM、米Google、Amazonを押さえる結果となった。とはいうものの、同四半期ではAmazonも成長しており(49%)、上述企業のシェアを合わせても、Amazon単独の市場シェア(29%)には及ばない。
データに関してMicrosoftとAmazonを隔てる重要な要素は、オンプレミスのクラウドサポートだ。そう語るのは、米調査会社Constellation Researchで副社長とプリンシパルアナリストを兼任するダグ・ヘンシェン氏だ。
「従来型のデータベースベンダーがAmazon Redshiftを上回る成功を成し遂げたことはない。だが、Amazonのサービスを利用した場合、サービスをオンプレミスに導入することはできない。これが、IBM、米Hewlett-Packard(HP)、Microsoftのような企業と大きく異なる点だ」(ヘンシェン氏)
当然のことだが、MicrosoftのAzureデータウェアハウスの初期の功績は、「Microsoftユーザー」を自称する企業によるものと考えられる。
「このような企業は、Microsoft Azureクラウドと.NETの開発フレームワーク、アクセス制御、データベースの導入、データ管理ツールに快適さと親しみを感じている」とヘンシェン氏は指摘する。
Microsoftのデータテクノロジーには目を見張るものがある。だが、Amazonの豊富な製品のラインアップも負けてはいない。Amazonは、2012年後半に競合企業よりひと足速くRedshiftを発表した。MicrosoftのSQL Server 2016 Stretch Databaseのような機能は強力だが、導入にはまだ時間がかかる。
Microsoft製品を利用する典型的な企業にとって時間は問題にならないかもしれない。というのも、このような企業はテクノロジーの先導作業をある程度Microsoftに任せるからだ。Community Technology Preview版は2015年の夏に公開される予定だが、SQL Server 2016という名前から、Microsoftが目標とする一般提供時期が読み取れる。
ある意味、Amazonの破壊的なクラウドサービスは、創業間もないころのMicrosoftが世界に与えた破壊的な影響に似ている。開発者は大量のデータを使用する新しいアプリケーションを週末に使用して、クレジットカードで使用料金を支払えるようになった。IT部門から使用許可を得る必要はない。
これは初期のパーソナルコンピューティングのようだ。その後、ユーザー所有のPCによって表計算ソフトウェアが企業に持ち込まれた。Microsoftはこうした同調性を知っている。クラウド、ツール、データのかじ取りをして、もう一度変革を試みるナデラ氏とMicrosoftの挙動には、多くの注目が集まっている。
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