電子カルテやクレジット決済などに利用
医療現場でのiPad活用、代表的な4つのシーンとは?
米Apple「iPad」の医療現場での利用が進んでいる。その利用方法は医療機関によってさまざまだ。iPadを実際に利用しているクリニックを見てきた。
医療現場で進む「iPad」活用、現場の声を聞いてきた
米Appleの「iPad」が2010年に発売されてから5年――。医療・ヘルスケア関連のiOSアプリも数多くリリースされ、医療現場でiPadを利用する事例も多い。iOS端末のビジネス活用を検討するiOSコンソーシアムがiPadを導入したクリニックや病院を訪問してヒアリングしたところ、iPadの性能を十分に活用しているというよりも「特定アプリ用専用機」「閲覧用モニター」といった比較的単純な用途で利用するケースが多いことが分かった。iPadを実際に利用するクリニックに話を聞いた。
1. 診療予約/受け付け用端末
川崎市高津区にある「そめや内科クリニック」では、5台のiPadを診療現場で利用している。そのうち3台はメディ・ウェブの診察予約システム「Bee診察予約」と待ち時間・順番表示システム「Bee診察順番表示」の端末として利用。待合室に1台、受け付けに1台、診察室前に1台配置する。
iPadに限った話ではないが、タブレットであれば、ケーブルはおろか取り付け工事無しで順番表示用モニターとして、待合室に置くことができる。中でもiPadのデザインはシンプルなことから、余計な存在感を出すことなく待合室にとけ込んでいる印象だ。
またクリニックの受付には多くの場合、電子カルテや会計用のPCモニターが既に設置されている。そのため、順番表示用のモニターを設置するスペースを取るのは難しい。一方、iPadなどのタブレットであれば空いているスペースに置いたり、壁面に掛けたりすることも可能だ。さらに持ち運びしやすく、混み具合やスタッフの状況に合わせて設置位置を変更できる。固定モニターと比べて、そうした使い勝手の良い点もメリットの1つだ。
2. クレジットカード決済用
愛知県豊橋市にある「いむれ内科クリニック」では、クレジットカード決済を可能にするためiPadを購入した。Squareのモバイル決済システム「Square」のサービスを申込み、同社から送付される小型クレジットカードリーダーをiPadに接続して利用している。
SquareはiPod touchでも利用可能だが、iPadの方が画面が大きく、患者が表示内容を見やすい。専用ペンでの入力も簡単だ。画面サイズに比して厚みは薄い点もメリットの1つだ。いむれ内科クリニックでは受け付けのテーブルの下に置き、クレジットカードでの支払いを希望する患者が来たら取り出していた。処理が完了したらすぐ片付けられるなど、順番表示用端末の利用と同様にスペース的なメリットは大きいだろう。
3. インターネットの検索・閲覧用
電子カルテには患者の個人情報や診察情報が含まれており、電子カルテ用クライアントPCをインターネットにつなぐのを禁止する医療機関が多かった。しかし現在では、インターネットで検索して情報を得ることは診療の現場でも必要とされている。
診察室にクライアントPCを2台以上置こうとすれば、ノートPCでもデスクトップPCでも一定のスペースが必要となり手狭になることもある。インターネット閲覧用としてiPadを利用すれば、普段は棚に置いておいて必要なときに取り出せる。場合によっては、その検索結果を患者に見せることも可能だ。
そめや内科クリニックの嶺 英樹事務長は「連携する病院のWebサイトを『お気に入り』に登録しておけば、紹介する医師の診察時間などがすぐ確認でき、患者にも見せられる」と、クライアントPCとは違い機動性があるとメリットを強調する。
4. 電子カルテ情報の閲覧用
医療スタッフがベッドサイドや処置室などで電子カルテを閲覧するためにiPadを利用するケースも多い。多くの電子カルテがiPad向け入力機能を備えており、使い慣れればキーボードより入力しやすい場合もある。ただ、iPadを携帯可能な電子カルテ閲覧用端末として、医師の指示を確認するために利用するケースも多い。
マルチユースでの利用は少ない?
上記のように実質的な専用機として使っていても、ケースや状況にあわせて使用用途を変更できるのがiPadをはじめとするタブレットの利点だといえる。多くの医療機関がそれぞれの用途ごとに必要な台数のiPadを個別に用意していた。ヒアリングをした医療機関の中では、マルチユースで利用するのはそれほど多くはなかった。
数あるタブレットの中で、医療機関がiPadを利用する理由としては、
- iPad、iPhoneに馴染んでいるから、使い慣れているから
- 機器の信頼性、安定性
- アップデートも含めたOSの安全性
などが多く挙げられた。
医師だけでなく看護師などの医療スタッフも含めて、iPadや「iPhone」を使い慣れているケースが多く、また非使用者でも直感的に使いやすい部分も評価されているようだ。iPadを導入している医療機関の多くがIT化に先進的に取り組んでおり、iPadも先進的な利用方法をしていると想定していた。実際には以下のような比較的単純な用途でiPadが利用されていることが分かった。
- スタイリッシュで場所を取らない無線LAN経由でのモニター端末
- 簡単なタッチで入力可能な特定アプリでの活用
- 医療スタッフの医療情報の閲覧、インターネット情報収集に利用
iPad用アプリも含めて、iPadは操作のしやすさや信頼性という面で選ばれているようだ。医師自身がIT担当者で、コメディカルへの研修資料やマニュアルなども準備する余裕の無いクリニックや小規模病院ではiPadが高く評価されて使われている。
一方、「特定用途のためだけにiPadを導入するのもどうか」「使い道が思い付かない」などの理由でiPadなどのタブレットの導入に踏み切れない医療機関も多い。実際には導入した医療機関の評価は高く、単一用途でも十分に導入効果があると感じていた。まずはスモールスタートで導入してみることをお薦めしたい。
iOSコンソーシアムとは
iOS搭載端末の新たな市場ニーズを活性化させ、より多様なサービスやソリューションを創出し、ユーザーと関連ベンダーを結ぶ環境構築を目的に設立。医療WGでは、医療現場におけるスマートデバイス利用で有用なソリューションを持った企業団体が参画。医療現場におけるiPadの有効・有用により医療の改善に役立つためのソリューションを提案する。Webサイトやセミナーなどのイベントを通じて情報を発信している。
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