アイ・ティ・アールが予測
次世代技術で変わる働き方、ユニファイドコミュニケーションの新しい形とは(1/2 ページ)
今後も成長が期待されるユニファイドコミュニケーション市場。同市場の課題や今後登場するであろう技術についてアイ・ティ・アール シニア・アナリストの舘野真人氏に聞いた。
アイ・ティ・アールは、ユニファイドコミュニケーション市場のうち「コラボレーションスイート」「ビジネスソーシャル」「Web会議」の3つの分野に注目している。
コラボレーションスイートは、メールやスケジュール、掲示板など、これまでグループウェアが提供していた機能に加え、ファイル共有やソーシャルなどの機能も備わった製品群だ。グループ内での作業に必要なコミュニケーションインフラとして総合的に利用できるスイート製品のことである。
一方、ビジネスソーシャルは、従業員間や取引先間のコミュニケーション促進などを目的としたソフトウェア。Web会議は、会議資料の共有に重点を置き、データやアプリケーション画面を共有する機能を備えたコラボレーションソフトウェアを指す。またビジネスソーシャルとWeb会議は、「コラボレーションスイート」といった総合製品ではなく、それぞれの分野に特化した専用製品として分類している。
おわびと訂正(2015年7月27日16:10)
掲載当初、「アイ・ティ・アールでは、ユニファイドコミュニケーション市場を3つに分類している」と記載しておりましたが、誤解がある表現だったため、修正いたしました。読者の皆さまにおわびして訂正いたします。
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アイ・ティ・アール シニア・アナリストの舘野真人氏によると、この3分野の中で伸び率が高いのはWeb会議とビジネスソーシャルだという。Web会議については、2012年の実績で2011年比10~15%の伸びを示し、ビジネスソーシャルも同年比で20~30%成長している。中でもWeb会議については、「グローバル化が進んでいることや、在宅勤務を取り入れるなど働き方が多様化していることなどから、リアルタイムでコミュニケーションできるツールのニーズが高まっている」と舘野氏は説明する。また、これまでは社内の拠点を結ぶためにWeb会議を利用するケースが中心だったのが、「顧客や取引先とコミュニケーションするためにWeb会議を導入するケースも増えるなど、用途が広がりつつある」(同氏)という。
Web会議とビジネスソーシャル市場については、「国産ベンダーが健闘している」と舘野氏は語る。アイ・ティ・アールの調べによると、ビジネスソーシャルはBeat Communicationが、Web会議ではブイキューブが売り上げシェアトップだという。その背景について舘野氏は、「外資系ベンダーはスイート化を進めている。それに比べ、国産ベンダーは小回りの良さや、クラウドでも国内に拠点を置くサービスであれば遅延が少ないといった強みを発揮している」と述べる。
ただし、Web会議やビジネスソーシャルの伸び率が高いのは、市場がまだ小さいことも背景にある。そのため、「金額的なインパクトやユーザー企業の投資マインドから見ると、コラボレーションスイートの存在感が大きい」と舘野氏は話す。同市場の中でも、ここ数年は「Microsoft Office 365」が好調な日本マイクロソフトが大きく成長しているという。
コラボレーションスイートではクラウドへの移行が顕著だが、その背景の1つとして舘野氏は、日本マイクロソフトをはじめとする大手ベンダーが開始した「ライセンスポータビリティ」というライセンスの仕組みを挙げる。これは、クラウド版のライセンスを購入すればオンプレミス版でも利用できるライセンス体系のことだ。「ベンダーがこうしたライセンスの仕組みを提供し始めたことで、オンプレミスからクラウドへ完全に移行するタイミングをユーザー企業が自由に選べるようになり、クラウドが使いやすくなってきた」と舘野氏は述べる。
今後の課題は「メール依存」「企業間コラボレーション」
今後も成長が期待されるユニファイドコミュニケーション市場だが、舘野氏はコラボレーションにおける懸念点についても述べる。
「製品に問題があるわけではない」と前置きした上で舘野氏は、多くの企業が製品を選ぶ際、要件を重視していることに問題があると指摘する。
例えばこれまでは、人とコンタクトする際に最も確実な手段はメールだった。だが、1人で複数台のデバイスを利用することが当たり前になりつつある今こそ、「メールが最適かどうかを問い直す時期だ」と舘野氏は話す。
メールはセキュリティ面においても課題が大きい。標的型攻撃も、社内で重要なファイルをメールに添付して送るというプロセスが許されているからこそ起きやすくなる、という見方もできる。「社内コミュニケーションをソーシャルメディアやインスタントメッセージに移行し、従業員のみがアクセスできるシステムでファイル共有すれば標的型攻撃の脅威も低減できる可能性がある。もちろん、顧客やパートナー企業からの問い合わせなどメールでしか対応できないこともある。コミュニケーションの形態を用途によって分散させることで、リスクを減らしつつ効率を上げることにもつながる」(舘野氏)
舘野氏によると、デバイスが多様化する中で、いかにしてコラボレーションの方法を設定するかが今後のIT部門にとって大きな課題になるという。「これまでのようにメールを使ってメッセージを流通させるのではなく、情報を1つの場所に置いてそこにアクセスしてもらう形式を取り、アクセスログを収拾しながら管理するといったことを、IT部門がイニシアチブを取りつつ進めるべきだろう」と舘野氏はアドバイスする。
また、顧客や取引先といった「社外とのコラボレーションを安全に実現する方法も考えていかなくてはならない」と舘野氏は主張。複数の企業が集まって進める共同プロジェクトが増え、パートナー企業のグローバル化も進んでいるためだ。「これまでのコラボレーションスイートは、主に社内に焦点を当てており、社外とどう安全にコラボレーションできるかまで考えられていなかった。企業間のコラボレーションという、情報系システムのすき間をどう埋めるかは今後の大きな課題だ」と舘野氏は言う。
例えば、社外とコラボレーションするインフラが整っていないことから、ファイル共有では「Dropbox」などのコンシューマー向けのオンラインファイル同期サービスを利用するといったシャドーITが黙認されているのが現状だ。こうした状況の対策として、「取引先など社外の人がアクセスできるようなインフラが今後絶対に必要になる」と舘野氏は指摘。情報系システムの守備範囲は今後より幅広くなると説明する。
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