失敗の原因と対策を専門家に聞く
中堅・中小企業のビッグデータ活用、成功の鍵はクラウドにあり
ITコンサルタントのデイル・ニーフ氏によると、中堅・中小企業がアナリティクスの恩恵を享受できずにいるのは、ビッグデータを扱うスキルが不足しているからだという。
ビッグデータアナリティクスはビジネスの手法を根本的に変える可能性があるが、今のところ、主要な受益者は大企業に限られている。中堅・中小企業がそうした恩恵をまだ享受できないでいるのはなぜか、そしてこの問題にどう対処すべきか、ITコンサルタントのデイル・ニーフ氏に話を聞いた。同氏は『Digital Exhaust』の著者であり、講演活動も行っている。
――ビッグデータが大きな話題になった背景には何があるのでしょうか?
ニーフ氏 ビッグデータは対顧客業務で利用されています。宣伝効果を高めることができる他、そのデータを販売することもできると言いはやされています。対顧客業務でビッグデータを利用する場合、非構造データを扱うことになります。これは、パイプライン処理を利用する「NoSQL」や「Apache Hadoop」などの技術を使うことを意味します。ところが実情は、8割の企業は2P(ペタ)バイト以下のデータを扱っており、6割の企業が「既存データの分析方法を改善するだけでよい」と答えているのです。こうしたニーズだけであれば、一般的なアナリティクスで十分対処できます。
――企業のCIO(最高情報責任者)はビッグデータに関してどんな役割を果たしているのでしょうか?
ニーフ氏 マーケティング業務や販売業務のニーズをよく理解している最高マーケティングデータ責任者という役職を導入している企業もあります。これはいい傾向だと思います。必要なデータをどう運用するのかという視点が不可欠だからです。CIOは必ずしもそうしたスキルを持っているわけではありません。それでもHadoopやNoSQLを理解している人は必要です。データアナリストやデータサイエンティストも必要です。彼らはどんなソースからデータを収集すべきかという判断をしなければなりません。こうしたスキルは、CIOが持っているスキルとはやや異なります。より系統的で、仮説を活用するスキルなのです。博士号が必要とされるような分野です。
――あなたは「中堅・中小企業はビッグデータの活用が遅れている」と著書(『Digital Exhaust』)で述べています。これらの中小規模の企業が従来のBI(ビジネスインテリジェンス)やデータウェアハウジングからさらに進んで、ビッグデータのメリットを利用できるようにするには、何をすればいいのでしょうか?
ニーフ氏 ほとんどの中堅・中小企業は独力でビッグデータを利用しようとは思っていません。データサイエンスのスキルを導入するのも大変だと感じているでしょう。そこでクラウドに頼ることになるのです。全ての顧客のあらゆるデータを収集するのであれば、その膨大なデータを自社で保存するのは無理なので、これらのシステムをレンタルしなければなりません。ですが、1種類のシステムで全ての要求を満たすことはできません。このため、クラウドを通じてシステムをレンタルする場合でも、どのデータソースをどのように利用するのかは社内の担当者が判断することになります。つまり、社内のスキルがやはり必要とされるということです。ここが問題だと思います。SaaS(Software as a Service)やアプリケーションなどの形で提供されている製品は出回っていますが、今述べたような理由で今後も数年間、中堅・中小企業がビッグデータを利用するのは難しいと感じるでしょう。必要な人材とスキルがないと難しいのです。
――必要なビッグデータスキルを見つけるにはどうすればいいのでしょうか?
ニーフ氏 IT分野で最も高い報酬を得ている人の10人のうち9人の職種は、何らかの形でビッグデータに関連しています。これらの人材のコストは非常に高く、大企業が彼らを素早く取り込んでいます。難しいのは、いきなり膨大な問題に直面する羽目になるからです。CIOはこうした状況を歓迎しないでしょう。社内で対処する能力がないためにクラウドを利用するとしても、ある程度の専門知識は社内に必要です。これは非常に難しいことであり、中堅・中小企業にとって最大の障害になっていると思います。多くの若い人がこの分野に飛び込んでいますが、豊富な人材があふれ出して、彼らの人件費が落ち着いてくるまでには、しばらく時間がかかるでしょう。
――こうしたスキルのコストが高い現状では、中堅・中小企業が高い報酬のスタッフを雇って投資利益が得られるでしょうか?
ニーフ氏 難しいと思います。6割の企業は既存データの分析方法を改善するだけでよいと考えています。小売り大手の米Targetと米Wal-Martは顧客データの分析に膨大な資金を投じてきましたが、これらの企業と顧客との関係が大きく変化したと言う人はいないでしょう。両社の株価にも売上高にも大きな変化は見られません。全般的に見れば、顧客データを収集し、それを販売拡大に利用するという方向に世界が向かっているといえます。ですが、そのレベルですら大きな変化が見られないのが実情です。これらの企業が以前より6割も売り上げを伸ばしているわけではありません。しかし、こうした取り組みに関連したコストは発生しています。ビッグデータを簡単に売り上げ拡大につなげられるとは思えません。販売やマーケティングの担当者たちは「やればできる」と言うでしょう。それはそうかもしれませんが、この変化は経営資源を印刷物やテレビからWebやモバイルに移動しているという状況に近いのではないでしょうか。それで売り上げが増加するわけではありません。カスタマイゼーション(訳注:個々の顧客のニーズに対応して製品やサービスをアレンジすること)は効率化されるでしょうが、それが生産性に大きな変化をもたらすとは思えません。中堅・中小企業の場合はなおさらそうです。
――つまり、中堅・中小企業はデータウェアハウスや、BIによるリポーティングに専念すべきだということですか?
ニーフ氏 そうです。既存のBIツールや分析ツールは非常に優れています。これらのツールは企業が本当に必要とする情報をデータから引き出してくれるのです。
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