活用を阻むさまざまな障壁
医療業界“ビッグデータ失敗事例”で判明した、3つの要因(1/2 ページ)
ビッグデータとデータアナリティクスは、投薬の精密化、公衆衛生、バリューベースのヘルスケアへの道を開いた。だが、この分野のITプロフェッショナルの前には、まだ大きな障壁がある。
医療機関を展開している米Granite Healthcare Networkは、レセプトデータの中に明らかな差異と思われる現象を発見した。だが同社の公衆衛生担当ディレクター、ボブ・ケイ氏によれば、その差異は後に誤りだったことが分かった。
この謎を解き、真実を解明することができたのは、臨床ビッグデータのおかげだった。「レセプトの前後関係が非常に重要」だと同氏は指摘する。
ヘルスケア分野におけるデータアナリティクスとビッグデータに関しては、多くの組織がデータの分析や活用はおろか、データを理解することにさえ苦慮している。
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Granite Healthcareの場合、誤って差異と認識されたのは、診療報酬の支払い方法と、病院が診療報酬明細書を処理する方法の違いが原因だった。ケイ氏によると、医療保険システムが誤った分類に基づき診療報酬を請求していたために、「その分類科目の保険料率と経費が人工的に膨らんでいた」という。
最終的には保険システムから臨床データを提示させ、請求方法について説明させて情報をつなぎ合わせた結果、この差異が実際には誤りだったことが判明した。
「これはレセプトデータに関する普遍的な問題かもしれない。レセプトデータは本来は医療費の支払いに使われるものであり、レセプトデータの内容は、実際は差異ではなく、その医療費がどう支払われるかを表しているにすぎない」とケイ氏。
残念ながらGranite Healthcareではまだレセプトデータと臨床データの統合を行っていない。だがビッグデータとデータアナリティクスにおいてこうした苦境に陥っているのは同社に限らない。
医療機関を展開している米Baystate Healthの副社長兼最高情報責任者(CIO)、ジョエル・ベンコ氏は、ケンブリッジで開かれたヘルスケアITカンファレンス「Health IT Summit」のパネルディスカッションの中で、糖尿病患者に関してGranite Healthcareと同じような問題にぶつかったことを明らかにした。レセプトデータのみの分析では、医療保険システムで糖尿病プログラムの対象となるべき全患者の約35%について分析ミスが発生したという。アナリストは臨床データをレセプトデータと統合して初めて、この相違に気付いた。
ヘルスケア分野におけるデータアナリティクスとビッグデータの重要性については、多くのITプロフェッショナルが認識している。しかし相互運用性の欠如や、ヘルスケア業界がビッグデータからどう価値を引き出すかをまだ把握しきれていないことにより、多くはまだ、精密医療(※)、公衆衛生、バリューベース(患者にとっての価値を重視する)ヘルスケアといったメリットを十分に活用できずにいる。
※精密医療(precision medicine):個人個人の遺伝子情報や生活環境に関するデータを活用して病気の予防や治療を行う個別化医療の考え方。
「船は既に桟橋から離れている。この旅は成功させなければならない」。米医療グループCapital Region Healthcareとコンコード病院でCIOを務める薬剤師のディーン・モリソン氏はパネルディスカッションでそう語った。
病院はアナリティクスに飛びつく前に、データそのものが鍵になることを覚えておかなければならないと前出ベンコ氏は聴衆に促した。「データに本腰を入れて取り組み、データの変換、ローカライズ、標準化が行われていることを確認し、知識管理とマスターデータ管理のコンポーネントがそのデータにとって何のためにあるかを理解して、時間の経過とともにそのデータを進化させることができなければならない。その次にアナリティクスだ。正しいデータがなければ正しいアナリティクスはできない」(同氏)
モリソン氏はまた、「データを一通り検討して全てのノイズをチェックし、『このデータから本当にこの結論が導かれるのか、それともデータに惑わされているのか』と自分自身に問い掛ける必要がある。それがわれわれにとっての課題だ」と助言した。
レセプトと臨床データが連係していない問題に対する解決策として、Granite Healthcareは米athenahealthの助けを借りてこの2つのデータを連係させた。athenahealthはクラウドベースの電子カルテ(EHR)を扱う会社で、診療報酬請求サービスも展開している。
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