米国の医療機関のCIO 90人に実施した調査によると、データ分析ソフトウェアの導入率は7割を超えているものの、その多くが将来予測ではなく、後ろ向きなデータの追跡に費やされていることが分かった。
近年、大半の病院はデータ分析ソフトウェアを使用しているが、その多くはそうしたソフトウェアを単純な用途にしか用いておらず、医療データ分析をもっと有意義に活用したいと考えている――。これは、米国の医療機関のCIO(最高情報責任者)や医療ITベンダーで構成されるCHIME(College of Healthcare Information Management Executives)と医療IT化推進NPOであるeHI(eHealth Initiative)が共同で実施した最新の調査の結果だ。
医療機関のCIO 90人を対象に実施したこの調査では、「現在、データ分析ソフトウェアを使用している」と答えた人が約77%を占めた。ただし、「データ分析の用途」を尋ねたところ、多くの回答者が「財務管理」「業務の効率化」「品質基準に関する政府への報告」などを挙げ、「患者の治療」を挙げた回答者はほとんどいなかった(関連記事:モバイルBIが医療機関に普及し始めているわけ)。
医療データ分析は「未来に期待する前向きな分析」よりも「過去を振り返る後ろ向きな分析」になりがちだ。実際、回答者の58%が「分析リソースの大半は、回顧的な後ろ向きなデータの追跡に費やされている」と答えている。一方、「リアルタイムの意思決定支援にデータ分析を利用している」との回答は17%、「予測分析プログラムを利用している」との回答はわずか3%にとどまった。また、回答者の93%が「データ分析は医療サービスの将来にとって重要だ」と答えた一方で、「データ分析に必要なリソースを持っている」と答えた回答者は28%にとどまっている。
eHIのCEO(最高経営責任者)を務めるジェニファー・コビッチ・ボーダニック氏は2012年8月30日に開催されたWebカンファレンスでこの調査結果の概略を報告し、「調査結果から理想と現実のギャップが読み取れる」と指摘した。これは、十分な分析ツールが提供されていないということを指している。実際、予測分析ツールやリアルタイムの意思決定支援ツールの重要性を多くの専門家が指摘しているが、そうしたシステムは医療の現場ではほとんど使われていない。
「この分野については多くの議論がなされているが、実際に使えるツールは少ない。まだ氷山の一角しか切り開かれていない。調査では、回答者の93%が『予測分析は自分たち組織の将来にとって非常に重要である』と答えている。その一方で、『必要なリソースを持っていると思う』と答えた回答者は3分の1以下にとどまっている」とさらに同氏は続けている。
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