クラウドアーカイブを始める前に考えること【後編】
オンプレミスとの比較も忘れずに、クラウドアーカイブの4大“懸念事項”
クラウドアーカイブはクラウドストレージの中核を担うと考えられている。だが、クラウドアーカイブを使い始める前に考えておきたいことがある。クラウドアーカイブのデメリットや懸念事項はないだろうか。
パブリッククラウドストレージは大容量のデータを手軽に保存できるという大きなメリットがある。パブリッククラウドストレージを使用すれば、ストレージをサポートするインフラの管理に悩まされることはない。ほとんどの企業では、データの量が爆発的に増加し続けている。そのため、ストレージを管理する作業は大仕事になり、データの増加とインフラの更新にも対応しなければならない。クラウドストレージは、単調なインフラ管理をやめて、データに集中しようとするIT部門の救世主となる可能性を秘めている。だが、クラウドアーカイブは本当に唯一無二のサービスだろうか。また、クラウドアーカイブを利用するために必要な労力が、得られるメリットを上回ることはないのだろうか。前編に続き、クラウドアーカイブのデメリットや懸念事項について考えてみよう。
クラウドアーカイブの懸念事項
クラウドアーカイブの最大の懸念事項は、間違いなくセキュリティだ。データがネットワーク経由で伝送されている間とサービスプロバイダーのデータセンターに到着して保管されているときの両方において、データはどのように保護されるのだろうか。送受信時の問題は簡単に解決する。クラウドアーカイブを出入りするデータは、安全性の高いHTTPSプロトコル(SSL)で管理されているからだ。そのため、パブリックネットワーク間で転送されるデータは転送中も安全だ。
今では、ほとんどのプロバイダーが、各社のクラウドに保存するデータの暗号化機能を提供している。顧客は、プロバイダーが顧客の代わりにデータを暗号化するときに使用する独自の暗号化キーを追加のセキュリティとして用意できる。また、データは暗号化してからクラウドに送信することも可能だ。暗号化オプションの選択肢は、顧客のリスクプロファイルによって決まる。プロバイダー主導の暗号化で十分な場合がある一方で、コンプライアンスの規定や過度の不安により、専用の暗号化キーを使用することに決める場合もある。後者の場合、顧客は将来データを取得するために、暗号化キーを保守しなければならない。データを何年も保存する場合、これは大きな労力になる可能性がある。
考慮すべき2つ目の問題は、パフォーマンスだ。つまり、クラウドでデータを保存および取得するスピードである。接続方式によって差はあるが、クラウドにデータを書き込む際のレイテンシやラウンドトリップ時間は20~30ミリ秒程度だろう。このレベルの応答時間はシーケンシャルな転送には十分だが、ランダムなアクセスに適しているとは言いにくい。事実、ほとんどのアーカイブプロセスで大容量のデータを保存および取得する際、レイテンシに関する問題は見られない。しかし、クラウドベースのアーカイブでは、メタデータの更新が問題になることがある。
データアクセスのパフォーマンスに影響する問題はもう2つある。1つはプロバイダー自体がアクセス制限を設けている可能性だ。例えば、Amazonの「Amazon Glacier」ではAmazon S3に代わる低コストなサービスが提供される。だが、データの取得は3~5時間かかるステージング処理を通じて行われ、取得したデータが使用できるのは最大24時間だ。24時間経過すると、データを再取得しなければならない。さらに、Glacierでは1GBの無料制限を超えるデータアクセスには転送コストが加算される(これについては後述する)。全てのベンダーが、データアクセスでのパフォーマンス制限を行っているわけではない。例えば、Googleの「Google Cloud Storage Nearline」では、長期アーカイブデータの応答時間(最初のバイトへのアクセスにかかる時間)は約3秒だ。サービスの適正価格とサービスのパフォーマンスの間には、明らかなトレードオフがある。
クラウドアーカイブを使用するときには、アクセスのしやすさとデータ形式も気になる領域の1つだ。通常、アーカイブプラットフォームは、Webベースプロトコルでアクセスできるオブジェクトストレージである。だが、オンプレミスのデータ形式は、構造化データ(データベースなど)、半構造化データ(メールなど)、非構造化データに近いファイルの場合がある。これらのデータ形式は、コンテンツを表現する際に使われるメタデータとそれぞれ関連付けられる。では、このデータはどのように汎用(はんよう)オブジェクト形式に変換されるのだろうか。1つの答えとして、ゲートウェイまたはアーカイブプラットフォームのいずれかとして機能する製品を使用して、ローカルの形式とアーカイブの形式間で橋渡しをする方法がある。その例として、Amazonの「AWS Storage Gateway」、EMCの「CloudBoost」、Microsoftの「StorSimple」、Nasuniの「Nasuni Cloud NAS」、NetAppの「AltaVault」が挙げられる。このような製品のほとんどはクラウドストレージとのパイプ役を担っているだけで、特定のアプリケーションに直接統合されるものではない。その一方で、アーカイブデータ用のより使いやすいプロトコルを提供している。さらに、一部のコンテンツをローカルにキャッシュして、データへのアクセス時に必ずクラウドストレージに戻る負担を軽減できるようにしている。アプリケーションの統合作業は変わらず必要になるが、それはデータが社内と社外のどちらにあっても必要な作業だ。
最後に、コストについて考えなければならない。ほとんどのオンプレミスのアーカイブシステムは、基本的にインフラ自体のコストによって決まる。一方、クラウドベースのアーカイブは、保存されるデータの容量とアクセスプロファイルによって決まる。より多くのデータが保存されてアーカイブから呼び戻されると、月々のコストは上昇する。IT部門は、必要に応じてエンドユーザーにそのコストを再請求できるよう準備しなければならない。つまり、データの保存と取得についてのポリシーを作成し、アーカイブデータを個別に報告可能な論理リポジトリ(保管庫)に分割する必要がある。特定のプロバイダーの環境に大容量のデータを配置していると、クラウドストレージを使用するコストは深刻な問題になる。アーカイブ(とプロバイダー)の間でデータを移動すると、遅延またはリスク回避には適しているかもしれないが、桁違いの料金が発生するためだ。
コストを抑える機会の1つとして、重複排除や圧縮などのデータ削減テクノロジーの実装を考えるという手がある。クラウドゲートウェイ内にデータをアーカイブまたは展開する前に、これらのテクノロジーをアプリケーションに実装できる。そのような製品の1つに、新興企業のStorReduceが販売している「StorReduce」がある。StorReduceアプライアンスはパブリッククラウドに配置される。このアプライアンスはAmazon S3のデータ形式に対応しており、データの重複排除を行った上でAmazon S3にデータを書き戻す。同社によれば、保存されているデータを最大95%削減できるという。その結果、大きなアーカイブでは大幅なコスト削減が可能になる。
クラウドアーカイブは吉と出るか凶と出るか
本稿で取り上げた、
- セキュリティ
- パフォーマンス
- アクセスのしやすさ
- コスト
といった側面から考えれば、アーカイブはクラウド専用に使用するのが良いだろう。クラウドがアーカイブデータの保管場所として適しているかを判断するときには、「支払いと管理の柔軟性」を「データをオブジェクト互換形式に変換するオンプレミスシステムを実装する必要性」と比較検討しなければならない。
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